第七十九話『もう一人の義妹。』
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「本当に?
そんな人が居るなら、とても助かるよ」
「わっちも、感知をどうするかと思っていたからの。
最初からソイツを頼りにしとったんじゃ」
「でも、他の皆でも無いんだよね?
此処には来てないのかな?」
「恥ずかしがり屋での。
声は掛けたんじゃが、行かんと言うての。
でも、わっちらの様子は何処かで見とる筈じゃ。
おーい、ハツ。
見とるんじゃろ?出てきんさい」
「……」
既に夜も更けて、辺りは暗闇になっていたので、
誰も気づけなかったのだろうか。
背の高い、
前髪で視界を覆う様にして
眼を隠した女が、
何処からとも無く、ソッと姿を現した。
「蟲女来てたのかヨ!」
「相変わらず存在感薄いし! 知らんけど!」
「ハツちゃーーん♪ お疲れ様ですー」
「出てくるまでぇ、わかんなかったぁ、
いつも思うけどぉ、どうやってるのぉ?」
ヤエファの義妹達が次々に、
ハツと呼ばれた女に声を掛け、
居心地悪そうにしながら、
女はヤエファに言った。
「……ヤエファ。
私、こういう場所が、とても苦手なんだけど……」
「知っとる。
ほじゃけど、
あげ近くに居ったんなら、
一緒に来れば良かったと思うがの」
「……だって恥ずかしいから。
知らない人ばっかりだし……」
「照れ屋じゃの」
「ヤエファ。
その娘が、ヤエファの頼りにしてる人?」
「そうじゃ。
ハツと云うての、人間じゃが、
わっちの義妹じゃ。
イファルに着いてから直ぐに、
監視されとったのに気づいたんで、
取っ捕まえてみたのが、この娘だった訳じゃ」
「監視?ヤエファ達を?」
「元々は、この都に潜り込んどったらしくての。
都に来た、わっちらに警戒して監視をしとったらしい」
「もしかして、
ハツは具現派魔術師なのかな?」
「……え?
何で知ってるの……?」
「此処に来る前に、
君の仲間と出会したから。
各国に、
諜報員を送り込んでいると云うのは本当だったんだ」
「スイちゃん!?
ウクルクから伝達が来ていた、
怪しい組織って云うのが、まさかソレかい!?」
「クアイおじさん、そうだよ」
「参ったな……、どうやって国王に報告するかな……」
「ハツ、わたし達が会ったのは、
イェンと云う男だったよ。
知ってる?」
「……変なマスクを着けてる人」
「その通り。
やはり、彼は組織内でも浮いてるんだ」
「……面識は無いよ。向こうが私の事を知らないと思う」
「そうなんだ」
「……私は貴女の事を知ってるよ。
ウクルクに強い精霊術師が居るって聞いた……。
まさか、こんな子供だとは思って無かったけど……」
「わたしは十九だよ? もう子供じゃない」
「……歳上だったんだね」
突然現れた、ハツとスイの会話に、
誰もが呆気にとられていた。
「どうかの? この娘は見ての通り、
恥ずかしがり屋じゃけ、
少々コミュニケーションには問題が有るが、
魔力の量は、凄まじいものがあるからの」
「……ヤエファ。
その言い方だと、私が誤解されちゃう……。
私は戦闘要員じゃないから……」
「誤解されても別に良かろ?
事実と違うんじゃけ」
「……そういう問題じゃ無く」
「スイちゃん、
ハツがガコゼを見つける事が出来たら、
さっきの話、本当にやってくれるかの?」
「……もう何日か探してるけど、見つから無いじゃない……」
「こげ広い都じゃ。
それにガコゼが此処に居るんは、
もう確定しとるけ」
ヤエファはニンマリと笑って、
クアイの方を見た。
そのヤエファを見て、
クアイは困った様子で、
苦笑いを浮かべていた。
「やろう。
わたしも、ガコゼと云う男が何だか許せなくなってきた」
「スイ!? 落ち着いて下さい!」
「そうだぞ!? 何か危険な香りしかしないんだが!?」
「わたしは自棄になって、言ってるんじゃないよ。
それに、わたしも無策じゃない」
「どんな策があるんでしょうか?」
シャオが不安そうに尋ねた。
「クアイおじさん、イファル王に会いたいんだけど、
おじさんと一緒に会いに行けるかな?」
「国王にかい?それは勿論出来るけど、
会ってどうするんだい?」
「イファル王にも、
ガコゼを捕まえる協力をしてもらう」
皆が驚く中、
スイは堂々とそう言った。
ユンタは何か言いたそうにし、
スイを心配そうに見ている。
スイはユンタに笑いかけ、
こう言った。
「コトハさんなら、きっと、
こうするだろうなって事を思いついたんだ」
先程の、
悲しみで自棄になっていたスイとは違うのはわかる。
いつも通りの様子で、
振る舞う彼女の、
気持ちを汲んでやれたら良いのだが、
と、ユンタは思っていた。
どうしても、
スイをまだ幼い頃の様に、
扱ってしまう。
──この娘が危険な目に遭うなら、自分が必ず守る。
ユンタは、そう考えていた。
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