第七十八話『終宴。』
すみません!
投稿するの忘れてました!
日付変わっちゃいましたけど、
本日分の3話目になります!!
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「でも、そんな事をしたらヤエファさん達は?」
ヤエファの発言の真意を測る様に、
シャオが、そう尋ねた。
「ま、シャオちゃんが想像する通りの結末じゃろの。
そこまで命を張る約束をしておけば、
信用をしてもらえるかの?」
「それは……」
「巻き込まれる他の亜人の人達が、
可哀想じゃないッスかね……?」
「聖域教会に、亜人は恨みを抱いとると言うたじゃろ?
亜人の差別の根源は、聖域教会だからの」
「そうなんスか?」
「女神が造り出して、
世界を破壊し尽くした始祖の魔物と、
人間の混血が亜人じゃ。
教会側からすりゃ、敵対していた相手の子孫じゃけ」
「でも、聖域教会って、女神様は信仰してるんスよね?
魔物だけ敵って、何か変ッスよね?」
「そこじゃ。
云われの無い妄言で、
末代まで苦しめちゃろと思うたんじゃろの、
大元の女神で無しに、
亜人だけを呪い、
長い間、虐げ続けて来た教会に、
亜人達は漏れ無く不満を持っとるし、
憎悪に近い感情を抱いとる。
聖域教会への、根の深い恨みを晴らせると知れば、
喜ぶ連中さえも居る筈じゃ。
無理強いはせんがの」
「ヤエファさん、それは流石に……。
すみません、水を差すようですが……」
「そんな事になれば、
聖域教会の守護をしとる、
イファルの軍隊的には困るじゃろな」
「はい……」
「ま。
さっきも言うたが、
これは最悪の策じゃ」
「ヤエファさんとしては、
そうならないと云う算段が有るんでしょうか?」
「有る。
と云うても、
クアイちゃんからしたら、信用ならん算段じゃがの」
「ガコゼ氏ですね……」
「そうじゃ」
「あのさーー、さっきから盛り上がってっけど、
ウチにゃ、ヤベー話にしか聞こえねーんだけど」
「そりゃ当たり前じゃ。
ヤベー話をしとるんじゃけ」
「わかってて言ってんなら、ウチは絶対のらねーからな、
皆を危険な目に遭わすだけじゃねーか」
「ユン姉、老けたの」
「はーーー!?」
「こりゃ、覚悟の話じゃ」
「何が言いてーーの!?」
「わっちはの。
この話に乗ってもらえんでも、
端から、
ガコゼの事は始末するつもりじゃったけ。
そうなりゃ、
聖域教会と喧嘩になるのも、時間の問題じゃったろな。
そうなる覚悟は疾うに出来とるんじゃ、
わっちも、義妹達もの」
「こんな人数で勝てるわけねーーだろ」
「そりゃそうじゃろの」
「だからーー!」
「ロウ兄も、ユン姉も、
昔、人間相手に、
勝てるかどうかを、考えて戦ったんかの?」
「……」
「わっちは鬼火のロウウェンと、
獣巫女の妹じゃからの。
似るなって方が無理じゃ」
「クセー事言ってんじゃねーーよー……」
「良かろ。
と云う訳での、
皆を巻き込もうと思うとる訳じゃ無いけ」
「お力添え出来ずに申し訳ありません……」
「気にする事ぁ無いけ。
ただの、
こげ悲しい思いを抱えとる孤児の女の子を、
救えん様な世界なんぞ、わっちは要らんと思うとる。
元々、
亜人は世界からドロップアウトしとる存在じゃ在るが、
こんな世界にしがみつく理由も無いからの」
「……」
「ほいじゃの。
色々、要らん事を言うたが、とても楽しかったけ」
ヤエファは義妹達を連れて、
屋敷を後にしようとした。
「待って。ヤエファ」
「スイちゃん、どうかしたかの?」
「わたしは、君を死なせるつもりは無い」
◆◆
コトハも昔、自分に同じ事を言っていた。
この娘とコトハは、
やはり根本的に似ているのだ。
「そりゃ有難いがの。
どうにも、そうはいかんらしくての」
「要は、聖域教会を怒らせない様に、
ガコゼを捕まえれたら良いんだよね?
それから、
ガコゼからコトハさんの情報を引き出せたら良い」
「まあ、そうじゃの」
「だったら、そうしよう」
「どうやってかの?」
「クアイおじさんに迷惑も掛からない様にするよ。
わたしがガコゼを捕まえれば、
問題も無いよね?」
「スイちゃん!?」
「おじさん、ごめんなさい。
心配を掛けてしまうかもだけど、大丈夫だから」
「スイーー! 駄目だってーー!
コトハの事なら、心配いらないから!
ウチが必ず見つけるからー!!」
「ユンタもごめん。
だけど、わたしには精霊魔法が有る。
それも、うってつけの魔法が」
「どんな魔法かの?」
「わたしは、言葉の精霊と契約してる。
言葉に宿った力を発現する事が出来るんだ。
ガコゼと対面さえ出来たら、
わたしに嘘を言えなくする事が出来ると思う」
「言葉の精霊?聞いた事が無いの」
「わたしの言葉に妙に説得力が有ると感じた事が無い?
もし、そう云う事が有ったとしたら、
それは言葉の精霊の力のおかげなんだ。
彼の力はとても強い。
制御出来ないところで、漏れ出してしまうんだ」
「まあ……、言われてみりゃ確かに……」
「ゴアグラインドの腕をぶっ飛ばしたのも、
まさかそれーー!?」
「そう。
魔法と云うものは大体そうだけど、
想像をハッキリと持てば持つほど、
右肩上がりに威力は上昇するんだよね。
わたしが強く『嘘を吐くな』」と言えば、
ガコゼはきっと、洗いざらい話す事になると思う」
「うってつけじゃの。わっちも嘘を見抜けるが、
スイちゃんの力に頼った方が良さそうじゃ」
「でも、ひとつ問題が有る。
言葉の精霊の力は、魔力を物凄く消費するから、
ガコゼの居場所を突き止める方にまでは、
手が回らないと思う。
ラクシェは魔力の感知が得意なんだよね?」
「うん、そうぅ。でもぉ、私の感知にはぁ、警戒してるかもぉ。亜人同士だとぉ、亜人の魔力ってぇ、分かりやすいからぁ」
「そうなると、別の人間で感知をしないといけないね」
「ふっふっふ。
それじゃったらの、わっちは、
うってつけの者を知っとるからの」
ヤエファは不敵な笑みを浮かべ、
皆を見回す様にしながら、そう言った。
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