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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第三章 『指切り姫と西方と忘れられた古い唄』
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第七十六話『痕跡なんてものが。』

本日投稿分の、

1話目になります!



「いやいやいや……。流石に無理あんだろーー?」


「それが、正真正銘ロウ兄だったんじゃって」


「ロウウェンが死んで、

どんくらい経ったと思ってんだよーー?

肉体(からだ)は勿論、

霊魂だって残ってるワケねーーだろ?」


「そりゃ、わっちに言われても知らん。

ガコゼの話じゃ、

現物の有る、

死者の肉体やら霊魂やらを操る能力じゃったが、

そもそもが嘘なんかも知れんしの」


「だとしたら、クソろくでもねーーけどさ」


「じゃろ? ()りたかろ?」


「今、目の前に居るんならなーー」


「物騒な話だね」


「本当には、やんねーーからね?

正直、腹は立つけど、喧嘩売る相手じゃないから。

皆にも、クアイ君にも迷惑かかっちゃうしーー」


「聖域教会を敵に回してしまう事になるかな?」


「そーーだね。ほとんど世界と戦う様なもんだよ」


「だったらさ」


「ん?」


「女神様の痕跡を集めて、

全部わたし達で使っちゃおうか」


「へ?」


「あんな小さな破片ひとつで、

ゴアグラインド達も魔力が上昇してたでしょ?

たくさん集めたら、すごく強くなれるよね」


「いやいやいやーー!?

そんなんしたら、

それこそ世界中の国に嫌われちゃうよ!?」


「世界中の国に嫌われちゃマズいの?

ユンタは好かれたい?」


「いや……、そういう事じゃ無くてーー……、

わかった! この話終わりにしよ!?

おりこうだから! ね!?」


「子供みたいな扱いしないでよ。

そもそも、わたしは女神様の痕跡なんて、

有っても無くても、どっちだって良かったんだ。

争いの種になるくらいなら、

無くなってしまえば良いとさえ思ってる。

それなら、ヤエファが困ってるんだし、

きちんと正しい使い方をしてあげた方が、

女神様も喜ぶんじゃないかな?」


「あーーもーー……、始まっちゃった……。

いい?スイ?よく聞いてよ?

でも、そんな事しちゃったら、スイは良くても、

ウクルクが世界中から嫌われちゃうだろ?

それで戦争でも起こされたら、どうする?

ウクルクの皆が困るぞーー?」


「そんなの、わたしだって困る」


「だろ? だから、止めとこ?」


「なんだか腑に落ちない」


「ワガママ言わないでーー」


「ヤエファはどっちが良い?」


「わっちかの?

そりゃ、わっちはスイちゃんが言う方が()えの。

実に痛快な考えじゃ」


「ほら。ヤエファが、ああ言ってるよ?」


「ヤエファの言う事聞いちゃ駄目だってーー」


「ス……、スイちゃん、

チョット落ち着いて下さいッス!

何だか、いつもと雰囲気違うッス!」


「わたしはいつもと同じだよ?

ロロはどっちが良い?」


「え!? い……、いや……、

自分にはチョット、決めらんないッス……」


「ロロは、世界中に嫌われたら困る?」


「そ……、そりゃ、出来たら嫌われたくは無いッスけど」


「嫌われる事は怖い?」


「う……、うーーん。チョット自分には……」


「なんで怖いのかな?教えて欲しい」


「スイ!!!!」


ユンタが激しく、叱責する様にスイの名前を呼んだ。


「ロロ子、困ってるから。もう止めな」


「ユンタ、怒ってる?」


「怒ってる」


「どうして?」 


「スイが皆を困らせるから」


「わたし、何か良くない事をしてた?」


「してた」


「わからない」


「スイ」


「わからない」


「こら!!」


「ユンタが怒った!!」


「怒るよ!? 

友達は大事にしなさいって、

コトハもウチも、スイがちっちゃい頃から言ってたろ!」


「憶えてるよ」


「なのに、何でロロ子の事を責める様に言うんだ!?

駄目だろ! ロロ子は仲間だろ!?」


「お……おい、ユンタ。お前も落ち着けよ」


「リクっちは黙ってろ!!

ウチは今、スイと話してんだ!!」


「ユ……、ユンタちゃん?自分は大丈夫ッスから……」


「ゴメン。ロロ子もチョット待って」


「憶えてるよ」


「だから! 何で憶えてるのにひどい事した!?

ロロ子にちゃんと謝りなさい!」


「わたしは、全部憶えてる。

夢を見た。昔の夢。

コトハさんと、ユンタと、初めて出逢った時の事も、

全部憶えてる。

すごくハッキリと、

昔の記憶が、そのまま再生されるみたいに」


スイは、そこで言葉を切った。


「コトハさんは帰って来てくれないのに、

夢の中で、いつも、わたしの前に現れるんだ。

突然出かけて行って、

家の中も都中も探しても見つからないんだ、

わたしは待ってるのに。

聖域教会の在る、ネイジン。

其処にコトハさんは行ってしまったんだ」


「スイ……。あんた何で知って……、

どっかで聞いてたの……?」


「返して欲しい。

わたしにコトハさんを。

この世界が、コトハさんを、

わたしから奪ったのなら、

わたしは、この世界に嫌われたって困らない。

ユンタ、わたしは、良くない事を言ってる?」


「スイ……。わかった……。ウチも怒って悪かったから、

チョット落ち着こう」


「わたしは……。ぐすッ……、ひっく……、

コトハさんに逢いたい……。

痕跡なんかが有るから……、コトハさんは、

わたしの前から居なくなっちゃったんだ……、

ぐすッ……、でも……、

皆を困らせて……、

ユンタ……、ロロ……、

ごべんなざい(ごめんなさい)……、ぐすッ……、ごべんなざい……」


掛ける言葉が見つからないユンタは、

それをどうにかしてやる事が出来ないかと、

困った表情を浮かべていた。


◆◆

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