第七十四話『悲しそうに見えたんだが。』
本日投稿分の、
2話目になります!!
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「クアイちゃん。どうかの?
大切な娘さんじゃとは思うが、
わっちの嫁にさせて貰えるかの?」
当の本人で在るシャオは突然の事に、ただただ驚き、
真っ赤にした顔を引き攣らさせて、
口を開いたまま、
すっかり固まってしまった様子だった。
「シャ……、シャオをヤエファさんにですか!?」
クアイも珍しく動揺している。
「そうじゃ」
「ヤエファーー!!
クアイ君、困ってんだろがーー!?」
「ど……、どうなってんスか一体!?
ふ……、風紀が乱れてるッス!!」
「シャオの事も狙ってるって云うのは本当だったんだ」
ヤエファは狼狽えるクアイに声をかけた。
「わっちはシャオちゃんに惚れてしもうての。
こげ、別嬪で、
姉妹の様な美しい妻と娘を抱えとって、
わっちはクアイちゃんが羨ましい限りじゃ」
「そ……、そう言って頂けるのは、とても嬉しいですが……」
「心配せんでも、
何も本当に取って喰おうと云う訳じゃないけ。
中にゃ、生き血を好む様な亜人もおるがの。
わっちはそげ事はせん。
こげ美しい娘は、
花の様に愛でて愛でて、
幸せにしてやるけ」
「ヤ……、ヤエファさん。お心遣いは有難いですが……」
「それでもの。
ガコゼの事を教えて欲しいのも、
丁度、同じくらいに、
わっちにとっちゃ、重要な事での。
どうしたもんか、迷っとるけ」
(娘を寄越すか、
情報を寄越すか選べと云う事か)
「もーーーあっったま来た!!
表出ろ!!こんにゃろーーー!!」
「ユン姉。将軍様の御前じゃけ。
物騒な事は言うたら良くないの」
「このクソ狐ーー!!!
いつまで過去に囚われてんだって話だよ!!」
「過去?
過去と言うたかの?
流石、ユン姉くらいになると言う事も立派じゃの」
「ヤエファ……!!
お前マジでウチをおちょくってんだな!?」
「そう聞こえたかの?
耄碌したの。
昔の事を水に流して、人間様に取り入って、
使い走りの様な事をしとるくらいじゃけの」
「ヤエファ。
そのくらいにしとこうよ。
ユンタは、わたしの事を思って、
この旅に協力してくれてるんだ。
ユンタを侮辱する事は許せない」
「あげ、ようけ、
敵も味方も死んだ大戦を経験しとって、
未だ、気づいとらんのかの?
どの国も躍起になっとるが、
女神の力を手に入れて、一体どうなる?
持て余して、
惨めな思いをする者らが生まれるだけじゃ」
「それとこれとは話が別だよ。
君は、わたしの大切な友人を侮辱した。
訂正して、ユンタに謝ってくれ」
「コトハに、よう似とるの」
「きっと、コトハさんも同じ事を言うと思う」
「“僕は正義の味方じゃない。”ってコトハは言うとったの。
スイちゃんも一緒じゃの」
「どういう意味?」
「わっちはコトハの、
そう云うところも気に入っとったがの。
ほじゃけど、あんまりに強うなり過ぎると、
小まい物は見えんようになるらしいの。
それが例え、命でもの」
「ヤエファ。
今度はコトハさんを馬鹿にするの?」
「なんだヨ! スイー!
ヤエファと戦んのかヨ!?」
「そうだし!
ヤエファ、お前より強いんだし! 知らんけど!」
「おめーーらチョット黙ってろ!!!」
「そげ怒らんでくれ。
コトハの事を気に入っとると言ったじゃろ。
わっちがコトハに惚れとったのは顔も好みじゃったが、
一番の理由は、憧れじゃ。
わっちも、そう在りたかったんじゃ。
コトハの様にの」
「わたしには、
ヤエファが何を言おうとしているのか、
わからない。どういう事なんだろう?」
「ふふ。わからなくて良えよ。
愚かで、賎しい、
醜い亜人が、じらを喚いとるだけじゃけ」
「わたしには、君がとても悲しそうに見えるけど」
「悲しんどる?
わっちがかの?」
「うん」
「ははは。
スイちゃんには、そう見えるんじゃの。
もし、そう見えとるんだとしたら、
わっちは、とんだ道化だった様じゃ、
よいよ、せんないの」
「悲しいんじゃないの?」
「そうじゃの。
年月が経ちすぎて、
悲しかった事を忘れてしもうとったのかも知れん」
「ねぇ、ヤエファ。
それはきっと、君が無理をしてるって事なんじゃない?」
「無理?
ふふ。わっちがかの?」
「そう」
「ふふ。
それなら、どげしようかの?
スイちゃんが、わっちを慰めてくれるかの?」
「出来る事ならね」
「それなら、まず、
肌と肌を合わせて温もりを感じたいかの」
「出来る事ならって言ったよ?」
「なんじゃ、随分意地悪じゃの?
コトハなら、そうしてくれとったがの」
「それは嘘だよ」
「ヤエファさん!?
貴女は一体何がしたいんですか!?
それに、スイにちょっかいかけるのは止めて下さい!!」
「スイちゃん、すまんの。
本妻が妬いてしまうけ、
続きは今度じゃの」
「や……!! 妬いてませんからね!?」
「そうよヤエファ! 浮気はダメよ!?」
「ちょ……、母様は少し静かにしていて下さい!!」
「私、難しい話はよく解らないけど、
スイちゃんの言う通り、ヤエファは苦しいのかしら?
私、折角、ヤエファとお友達になれたのだから、
ヤエファが苦しいのなら助けたいわ」
「参ったの。
そげ事言われたら、
疼いて仕方ないけ」
「疼くの? だったら私が、何とかするから!
どうしたら良いの?
私、解らないから、ヤエファ教えて」
「やれんの。
旦那が其処に居らにゃ、
押し倒してしもうとるの」
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