第七十三話『クアイの職務。』
本日投稿分の、
1話目になります!
◆
「シャオ。素敵なドレスだね」
「ありがとうございます。
誕生日のお祝いに、父様から贈って戴いたものです」
「シャオちゃん綺麗ッスーー! お姫さまみたいッスね!」
「今日は敗けられない戦いですから……!!」
「戦いに行く格好には見えないけど」
「女の戦いですから!」
「そうなんだ。本当に素敵なドレスだね。とても似合ってるし」
「そんなに褒めてくれると……。照れますから」
シャオに向かって、
ヤエファが蝶の様にヒラヒラと手を振り、声をかけた。
「よく似合っとるの。不覚にもグッと来てしまったの」
「ありがとうございます。ヤエファさんも素敵です」
「今夜は招待してもらって、すまんの。
義妹達も、
すっかり楽しんどるみたいで、喜んどるけ。
それに素敵な親御さんじゃ」
「楽しんでもらえて、何よりです。
あの……。母様と何を話してたんですか……?」
「心配せんで良。
正直、カヤちゃんの色気に理性を保つので精一杯じゃが。
この都は、まったく別嬪揃いで参るの」
「カヤちゃんって!? さっき来たばかりですよね!?」
「エルフは、わっちらと同じで長命の種族じゃが、
年月を重ねても、こうも美しさを損なわんとはの」
「もうヤエファったら……。
そんなに褒めても何も出ませんからね?」
「おまけに母娘揃って、乳がデカい」
「きゃー!」
「母様!」
「あらシャオ。やっぱりそのドレス良く似合うわねぇ!
クアイったら、シャオに似合う最高のドレスをって、
仕立ての職人さんの工房に通ってたのよ?
迷惑よねぇ」
「ははは。僕もまだまだ子煩悩が終わってないみたいだよ」
「大国イファルの将軍様じゃけ、
どんな恐ろしい男かと思いよったが、
器の大きな優しい御仁じゃの」
「そんな事はありませんよ!
僕はどうも、仕事と家庭は切り離して成立させたい、
我が儘な男らしいので」
「屈託無いの。おまけに男前じゃ」
「ははは。お恥ずかしい」
「少年の様じゃ。流石、
某ハーフエルフの国の王女じゃったカヤちゃんを、
娶るだけは有るの」
「あの!?
ヤエファさん、さっき来ましたよね!?
何でもう知ってるんですか!?」
「わっちは何でも知っとるけ」
ヤエファは舌を出して悪戯そうな笑みを浮かべた。
「それでの。クアイちゃんに相談があるんじゃが」
「何でしょうか?」
「イファルは大きくて強い国じゃけ、
他国間との牽制もさぞかし、緊張感溢れるもんじゃろ。
それだけに情報と云う物がようけ、
溢れとる筈じゃ。
わっちら、下々の耳にゃ、
全部が入りきらんくらいにの」
「国の事ですので大きな声では言えませんが、
そうですね」
「そげ警戒せんでも良え。
わっちら、亜人じゃが、悪人では無いつもりじゃ」
「それは承知しています」
「その懐の深いクアイちゃんを見込んで、
ひとつだけ教えて欲しい事を頼みたいんじゃがの?」
「僕が答えられる範囲ならば」
クアイは笑みを絶やさずにそう言った。
そのクアイを見て満足した様に、
続けてヤエファが問い掛けた。
「ガコゼと云う亜人の名を聞いた事があるかの?」
「ガコゼ?」
ヤエファは、ほんの少しだけ眉を潜めた。
「クアイちゃん。
わっちは他人の嘘を嗅ぎ分けるスキルがあるけ。
あんたが今まで、
本心で喋ってくれとったんは分かっとるからの」
「それは失礼しました。
ですが、僕も立場上、色々とありますのでご容赦下さい」
「無理を言うてすまんの」
「ちょっとヤエファーーー!!
おめーーいい加減にしろよーー!?」
「ユン姉、こげ広い都、
チマチマ探したところで、どうにもならんけ」
「てんめーー!! それが目的で来たのかよーー!?」
「まさか将軍様のお宅とは知らんかったからの。
初めは純粋に可愛え娘らと、
飲み食いしちゃろと思ったんじゃがの」
「ヤエファさん。もし仮に僕が、
今貴女に有益な情報を与えれなかったとしたら、
貴女は僕達に危害を加えるのでしょうか?」
「悪人じゃ無いと言うたろ?
そげ事はしゃあせん」
「良かった。でしたら、
僕としては、これ以上お話出来る事は無いのですが?」
クアイとヤエファの姿を、
ハラハラとした様子でカヤが見守っている中、
ヤエファが言葉を続けた。
「わっちは可愛え娘の味方じゃけ。
教えてもらえんでも危害は加えんが、
別の物が欲しゅうなったの」
「別の物ですか?」
クアイは緊張を解いてはいなかった。
解く事がどうしても出来なかった。
ヤエファの存在感が圧倒的だったからだ。
思えば、屋敷にヤエファが来た瞬間から、
普通に振る舞っているにも拘わらず、
場の空気を明らかに一変させていた。
彼女の内から零れ出す様な、凄まじい強大な力は、
潜めていた片鱗を現し、
大国の軍のトップで在る、
クアイに張り付く様な焦りを与え、
ヤエファは、そのクアイの様子を、
手玉に取る様にして戦かせていた。
「それは一体何なのでしょうか?
僕に出来る事でしたら、お応え出来ますが」
「クアイちゃん。
シャオちゃんを、わっちの嫁に貰えんかの?」
「…………はい?」
その場に居る者達、全員の視線が、
音も無くシャオに集まっていった。
◆◆




