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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第三章 『指切り姫と西方と忘れられた古い唄』
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第六十九話『温泉の施設は思っていたより広かった。』

本日投稿分の、

最終話になります!!



「シャオ……! シャオ……!」


スイが小声でこっそりと、シャオの事を呼んでいる。


「え? どうしたんですか?」


「どうしたもこうしたも無いよ……。

何で君は、そんなにもいつも通りでいられるんだ、

わたしは屋敷に着いてから、

落ち着かなくて仕方が無い……。

おじさんとおばさんに、変に思われなかったかな!?」


「ふふ。

父様も母様も、

スイが来てくれた事をとても喜んでたじゃないですか?」


「でも……。アレだろう……。

君はもう、

おじさんとおばさんにカミングアウトしてるんでしょ……?」


「はい! それはもうバッチリです!!」


「……。この際、それはもう良い!

でも、おじさんとおばさんは、

一体どんな心境で、

わたしが来た事を喜んでくれてるんだ!?

想像したら怖い!!」


「あはは。そんなに気にしないでください」


「気にするよ!?」


「もしも仮に」


「もしも仮に……?」


「父様と母様が、怒っていたとしたら。

それを心配してるんですよね?

あの二人は、思っている事を伏せて、

何事も無く振る舞うなんて、器用な事は出来ません」


「そ……そうなの?」


「はい。娘の私が断言します」 


「……」


「だから、心配しなくても大丈夫です!」


「いや……、でも、もう言っちゃってるんだよね?

どうしよう……。今からでも、わたしだけ、

他の宿を取った方が良いのかな……?」


「な!? 何を言ってるんですか!?

駄目です!!」


「だって……」


「気にし過ぎですよ!

それに私、

スイが思ってるより、

父様と母様に、

スイの事好き好き言ってますから!」


「やめてよ!?」


「だから多分、我が家では、

もう周知の事実っていうか」


「……。昔からね。

クアイおじさんと、カヤおばさんは、

優しい人だと思っていたけど……、

そんなに心が広いとは知らなかったな……」


「案ずるなかれです」


「……なんか、もういいや……。

わたしだけ、ソワソワしてても、変だもんね……」


「ふふ。だから私は初めから、

そう言ってましたよ?

それに。

私はスイのお嫁さんになるのが将来の夢ですけど、

それを実現させるのは、

コトハさんにも、結婚の承諾を得てからだと思ってますから」


「……。そういうとこは、妙に律儀なんだね……」


「当然です。

だから。スイは気にせずに、

ゆっくり寛いでください。

私はスイと過ごせて、今がとても幸せです」


「……。なんだか嫌な予感がするよ……」


◆◆


夜が明けて。


一向は、当初の目的だった温泉施設へと向かった。

クアイの屋敷のある高級住宅地から、

さほど離れていない区画にある、

大きな庭園とカフェを併設した巨大な建物だった。


ルーファンの街並みの景観を損なわない、

白い建物の施設には、

大浴場とサウナに加えて、温水のプール、

レストラン、エステ、化粧品や衣料品を扱う店など、

数多くの店舗が入っており、

大勢の人が訪れる大型のショッピングモールの様な賑わいをみせていた。


「すごい。

まさか、こんなにも大きな建物だなんて思わなかったよ」


スイがキョロキョロと周りを見ながら驚いた様子でそう言った。


「めっちゃ人がいるッスね!!」


「スゲー数の店だねーーー?さすがイファルは都会だわ」


大浴場は非常に混雑していた。

見上げる程に高い、天井に届くアーチ状の門が二つ有り、

その門がそれぞれ、男湯と女湯に別れている。

門までの通路を、無数の人々が行き交い、

まるでテーマパークの様にも見えた。


門は神殿の様な荘厳なデザインをしており、

入り口あたりに巨鳥の像と、

イファルの王国の紋章が刻まれた、

巨大なレリーフが飾られてあった。


一向は男湯と女湯にそれぞれ別れて、

一人で男湯へと向かうリクを、

スイは横目で眺めていた。


◆◆◆


「リクは一人で寂しく無いかな」


脱衣所で羽織を畳みながら、スイがそう言った。


「パーティーで男性が一人だけですし、

少しはそう思うかも知れませんね」


「ハーレムが過ぎるッスもんねー」


既に服を脱いで、

身体にタオルを巻いているシャオとロロが言った。


「混浴じゃなくて残念がってんじゃね?」


一糸(まと)わない姿を、

隠しもせずに仁王立ちしているユンタが言った。


「そうなのかな?

リクはやっぱり、皆の裸を見たいとか思ってるのかな?」


「男なんだからそりゃそーでしょーー?」


「そうなんだ。彼はやっぱりエッチだな」


「スケベじゃない要素が少なくない?笑」


「健全な男子だなーって自分は思うッスけどねー」


「スケベじゃない方が不健全なの?」


「まーー俗に言うムッツリってやつだね」


「ゼンもリクさんと同じ年齢の頃は、

あんな感じでしたっけ?」


「うーん。どうだったかなぁ。

彼は基本的に、何かに怒っている印象しかないからなぁ」


「私も似たような印象ですね…。

というよりも、そもそもゼンに興味が無いと云うか……」


「かわいそーー笑」


「男の子は、大体あんな感じだと思うんスけどねー?」


「まー。心配しなくても……、

つーか!

二人とも乳デカすぎじゃね!?

何食ってんの!?」


ユンタが、おもむろにロロの胸を鷲掴みにして叫んだ。


「わわわ……! ユ……、ユンタちゃん!?!!」


「いやーー……。

デカイな、デカイなー、とは思ってたけど……。

まさかこんなデカイとは……」


「ちょ……!?

ユンタちゃん!!

そ……、そんなに揉んじゃダメッスよ!!?」


「確かに……。何か特別な事をしてるの?」


スイが、まじまじと顔を近づけて、

シャオの胸を観察しながらそう聞いた。


「な……、なにもしてないです!」


「子供の時には、一緒にお風呂に入った事もあったけど、

こんなに大きくなかったものね?

カヤおばさんも凄く大きいから遺伝なのかな?」


「いいなーーー」


「そんなに良いものでも無いですよ……?

肩も凝るし……、服も似合わないのが有るし……、

太って見えちゃうし……」


「下着も困るッスよねー」


「そうですよね!?

可愛くてもサイズが無かったりして……」


「あと、おじさんとかに、

じろじろ見られるのも結構キツいッスよね」


「わかります。

私も胸当てを着けたりして、隠してはいるんですけど……」


「巨乳トーク」


「わたしたちには、縁がない話だね……」


◆◆◆◆


中に入ると、

高い天井が吹き抜けになっている、

とんでもなく巨大な空間の中に、

石で出来た長方形の湯船に張られた八つの温泉があった。

それぞれに効能の書いてある看板が据えられており、

どの温泉にも、人が溢れるように浸かっている。


四人は先に身体を丁寧に洗って、

様々な効能毎に別れた温泉を順番に堪能していき、

最後に白濁としたミルクの様な湯に並んで浸かった。


「わーー……、気持ちいいッスねーー……」


「すごくトロッとしたお湯だね。不思議」


「お肌にとっても良い効果があるみたいですよ」


「いやーーー温泉最高じゃんーーー……」


四人がしばらく湯船に浸かっていると、

他の賑やかな団体客の声か聞こえてきた。


「昨夜は楽しかったかの?」


「げ」


「げ。

とは、ご挨拶じゃの」


「何でヤエファが来るんだよーー。

せっかくまったりしてんのにーー」


「此処は大衆浴場じゃけ」


「ヤエファの知り合い?誰ヨ?」


団体客は、ヤエファが連れた亜人の女達だった。


「レイフォン。餓鬼の頃からの、わっちの姉貴分じゃ」


「妹って言わんくなったーー」


「ユン姉が、いちいち訂正するからの」


「ヤエファが子供の時って、まだ西方に居た頃?

知らんけど」


別の女がそう聞いた。


「そうじゃの。あんた達が産まれる前じゃの。

メイは知らんかの?」


「有名な人なのかヨ?」


「昨日言うたじゃろ。

獣巫女(クラウドナイン)()うたって」


「え!? この人が!? マジ!? 知らんけど!」


「何か思ってたより小さいんだヨ!?」


「はーー!? めっちゃ失礼じゃんーー!!」


「どんなんを想像しとったんかの」


ヤエファは、そう言って可笑しそうにクスクスと笑っていた。


「きゃわわわわわわーーー!!」


「やっぱりの。

ミンシュは絶対に気に入ると思っとったけ」


「ヤ……ヤエちゃん!! か……可愛すぎるです!!

ミンシュ、この子連れて帰っても良いです!?」


「へ……? じ……、自分ッスか?」


◆◆◆◆◆

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