第六十四『話の続き。』
本日投稿の、
2話目になります!!
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◆
ヤエファが、そう言い終わるのを待って、
ユンタは茶を飲み干した。
「ごっそーーさん」
「ユン姉。どうかの?手伝ってくれるかの?」
「ウチは今、この子らのパーティーにいるからーー。
勝手にゃ決めらんねーーよ」
「ユンタ。ちょっと冷たくないか?」
「はーー?何が?」
「だって、ユンタとヤエファは昔から知り合いなんだろ?
なのに、あっさり断ったりしたら可哀想じゃないか?」
「何だよーー、リクっちは、ウチの味方じゃないのかよー」
「あと、ヤエファの扱いが雑だ」
「リクちゃん優しいの。
優しい男は好きじゃけ。
惚れてしもうたら、どうしようかの」
「え!?」
「照れんな童貞ーー!!」
「あと! 俺の扱いも雑だぞ!?」
「ユンタちゃん! リク君!
喧嘩しちゃ駄目ッス!!」
「あのなーー。ヤエファは強い。
リクっちも見ただろ?
心配しなくても、可哀想じゃねーーんだよ」
「でも、ヤエファは、
スイ達を探すのを手伝ってくれるって言ってるぞ」
「だから、それは要らねーーって断ってんじゃん」
「あのな。ユンタ、何か変だぞ?
何をムキになってんだよ?」
「はーーー?! ウチのどこがだよ?
リクっちこそ、妙にヤエファの肩持つじゃん?
色目使われて、デレデレしてんじゃねーー!」
「なんだよその言い方!?」
「ちょちょちょ!? 二人とも、本当に落ち着くッスよー!
他のお客さんの迷惑ッスからー」
◆◆
「ま。
急いどりゃせんけ。
この街にも暫くの間、居るつもりじゃけ」
ヤエファはそう言って、
店員を呼ぶと会計を頼んだ。
「とりあえず、ユン姉の仲間の子達を探すかの。
どんな子らかの?男?女?」
「女の子が二人ーー」
「そりゃ楽しみじゃの。合流出来たら、
今晩の飯を一緒に食べに行こうや。
奢るけ」
「えらく羽振りがいーーんだな」
「わっちの仲間も呼ぶけ」
「仲間?」
「ウチの義妹達じゃ。
ユン姉の事教えたら、きっと逢いたがるけ」
「教えなくていーーよ別に」
「ユン姉は有名じゃけね。
西方じゃ知らん子達はおらんよ」
「そーなんスか?」
「何せ、鬼火の仲間じゃけの」
「ヤエファのお兄さんの、ロウウェンってどんな人なんだ?」
「そうじゃねぇ……。
わっちには、とにかく甘くて、優しかったの」
「シスコンーー」
「褒め言葉じゃの。
ロウ兄は優しいんじゃ。
わっちが育った国は、
亜人の差別が酷かったけ。
食う物にも困って苦しんどる亜人が、
ようけ、居ったんじゃ。
亜人だったら子供でも、
容赦無く殺す様な人間が当たり前におったけ、
ロウ兄が、皆が平等に暮らせる様にと、
人間相手に戦争を起こしたんじゃ。
ユン姉と一緒にの」
「え!? ユンタと?」
「魔獣の加護を授かって産まれた召喚術師。
『獣巫女のユンタ』と云えば、
ロウ兄と並んで、
西方の亜人で知らん者は居らんかったの」
「ユンタちゃん凄いッス!! 有名人だったんスね!!」
「ま。結局、勝てなくて敗けたけどね」
「数で敗けたんじゃ。
ロウ兄とユン姉に敵う奴は、
あん時、誰も居らんかった筈じゃ」
「そりゃどーーも」
「そのお陰で、わっちは大人になれたからの。
二人は、大勢の亜人の子供を助けたんじゃ」
「昔話なんて、若い子らにゃつまんねーーんだぞ?」
「そうかも知れんね」
「サラッと聞ける話じゃないんだが……」
「長生きしてるっつったろーー?」
「戦争が終わってから、ユン姉は国を出てったけ。
コトハを連れて、わっちを退治に来るまで逢わんかったの。
あん時は、ユン姉に裏切られたって思って寂しかったが、
また、こうして一緒に居れて嬉しいの」
「スイ達を見つけるまでの間なーー」
「探しとる仲間の名前かの」
「コトハの娘だぞーー」
「コトハの娘!?
……そうじゃ、あん時。
娘が居るって言うとったの……」
「絡むなよ?」
「別嬪かの?それ次第じゃの」
◆◆◆
ヤエファは、
コトハの事を思い出していた。
───変わった人間じゃった。
亜人が戦争で敗けて、
人間に恨みを抱えたまま、
長年暴れ続けていた自分は、
人間に恐れられ、
死んだ兄と仲間の魂を鎮める為と、
善行と思って信じて重ねた行為は、
広まる悪名と共に、悪行として語り継がれる様になり、
いつしか、
同胞から向けられる眼差しさえも、
畏怖に因る、暗い物に変わっていた事に、
気づいた時には、
既に人間への恨みなど、
薄れてきてしまっていて、ひどく虚しく感じたものだった。
それでも、
薄れてしまった筈の恨みとは別に、
殺しても殺しても飽き足り無い程の、
渇きだけは、何故か鎮まる事は無かった。
───そんな時じゃったの。
◆◆◆◆
「やあ。
君がヤエファかい?
僕の名前はコトハ。ユンタの友達だ」
まるで近所に挨拶にでも来た様に、
呑気な調子で、
コトハはヤエファに向かって、そう言った。
「……。ユン姉の友達?
友達が、わっちに何の用かね?」
「僕は君と話をしに来た」
「コトハーー。違うだろー?説明したじゃん……」
「話?
ユン姉。こげ餓鬼を連れて来て、
なんのつもりかの?
わっちを退治にでも来たんかの?」
「違うよ。僕は君と話をしに来たと言ったのだけれど?」
「わっちは、お前と話す事なんて無いがの。
人間の割にゃ、肝が座っとるみたいじゃが、
わっちは、女は殺しとう無いけ。
とっとと失せんさい」
「それは出来ないかな。
僕は、君と話をする為だけに、
わざわざこんな遠いところまで来たんだ」
「そうかの。
そんじゃ、ちょっと脅して泣かしゃ、
帰りたくなるかの?」
「それが出来るものならね。
僕は構わないさ。
でも、僕は、
ちょっとやそっとの事では泣かない事で有名だ」
「コトハ。あんまり油断すんなよーー」
「餓鬼。
わっちは女が好きじゃが、
戦るんなら手加減はせんからの」
「わかった。
それなら僕も泣かない様に、
いつもよりも気をつけておこう」
「訳のわからん女じゃの……。
後悔しても知らんで」
「肝に銘じておこう。
でも、僕もそう易々とはやられはしない。
『指切り姫』。
僕らは君を止める為に、
わざわざこんな遠いところへ来たんだ」
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