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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第三章 『指切り姫と西方と忘れられた古い唄』
64/237

第六十四『話の続き。』

本日投稿の、

2話目になります!!


ブックマークしてくれた人ありがとうございます!

めっちゃ嬉しかったです!




ヤエファが、そう言い終わるのを待って、

ユンタは茶を飲み干した。


「ごっそーーさん」


「ユン姉。どうかの?手伝ってくれるかの?」


「ウチは今、この子らのパーティーにいるからーー。

勝手にゃ決めらんねーーよ」


「ユンタ。ちょっと冷たくないか?」


「はーー?何が?」


「だって、ユンタとヤエファは昔から知り合いなんだろ?

なのに、あっさり断ったりしたら可哀想じゃないか?」


「何だよーー、リクっちは、ウチの味方じゃないのかよー」


「あと、ヤエファの扱いが雑だ」


「リクちゃん優しいの。

優しい男は好きじゃけ。

惚れてしもうたら、どうしようかの」


「え!?」


「照れんな童貞ーー!!」


「あと! 俺の扱いも雑だぞ!?」


「ユンタちゃん! リク君!

喧嘩しちゃ駄目ッス!!」


「あのなーー。ヤエファは強い。

リクっちも見ただろ?

心配しなくても、可哀想じゃねーーんだよ」


「でも、ヤエファは、

スイ達を探すのを手伝ってくれるって言ってるぞ」


「だから、それは要らねーーって断ってんじゃん」


「あのな。ユンタ、何か変だぞ?

何をムキになってんだよ?」


「はーーー?! ウチのどこがだよ?

リクっちこそ、(やけ)にヤエファの肩持つじゃん?

色目使われて、デレデレしてんじゃねーー!」


「なんだよその言い方!?」


「ちょちょちょ!? 二人とも、本当に落ち着くッスよー!

他のお客さんの迷惑ッスからー」


◆◆


「ま。

急いどりゃせんけ。

この街にも(しばら)くの間、()るつもりじゃけ」


ヤエファはそう言って、

店員を呼ぶと会計を頼んだ。


「とりあえず、ユン姉の仲間の子達を探すかの。

どんな子らかの?男?女?」


「女の子が二人ーー」


「そりゃ楽しみじゃの。合流出来たら、

今晩の飯を一緒に食べに行こうや。

(おご)るけ」


「えらく羽振りがいーーんだな」


「わっちの仲間も呼ぶけ」


「仲間?」


「ウチの義妹(いもうと)達じゃ。

ユン姉の事教えたら、きっと逢いたがるけ」


「教えなくていーーよ別に」


「ユン姉は有名じゃけね。

西方じゃ知らん子達はおらんよ」


「そーなんスか?」


「何せ、鬼火の仲間じゃけの」


「ヤエファのお兄さんの、ロウウェンってどんな人なんだ?」


「そうじゃねぇ……。

わっちには、とにかく甘くて、優しかったの」


「シスコンーー」


「褒め言葉じゃの。

ロウ兄は優しいんじゃ。

わっちが育った国は、

亜人の差別が酷かったけ。

食う物にも困って苦しんどる亜人が、

ようけ(たくさん)()ったんじゃ。

亜人だったら子供でも、

容赦無く殺す様な人間が当たり前におったけ、

ロウ兄が、皆が平等に暮らせる様にと、

人間相手に戦争を起こしたんじゃ。

ユン姉と一緒にの」


「え!? ユンタと?」


「魔獣の加護を授かって産まれた召喚術師。

獣巫女(クラウドナイン)のユンタ』と云えば、

ロウ兄と並んで、

西方の亜人で知らん(もん)は居らんかったの」


「ユンタちゃん凄いッス!! 有名人だったんスね!!」


「ま。結局、勝てなくて敗けたけどね」


「数で敗けたんじゃ。

ロウ兄とユン姉に敵う奴は、

あん時、誰も居らんかった筈じゃ」


「そりゃどーーも」


「そのお陰で、わっちは大人になれたからの。

二人は、大勢の亜人の子供を助けたんじゃ」


「昔話なんて、若い子らにゃつまんねーーんだぞ?」


「そうかも知れんね」


「サラッと聞ける話じゃないんだが……」


「長生きしてるっつったろーー?」


「戦争が終わってから、ユン姉は国を出てったけ。

コトハを連れて、わっちを退治に来るまで逢わんかったの。

あん時は、ユン姉に裏切られたって思って寂しかったが、

また、こうして一緒に居れて嬉しいの」


「スイ達を見つけるまでの間なーー」


「探しとる仲間の名前かの」


「コトハの娘だぞーー」


「コトハの娘!?

……そうじゃ、あん時。

娘が居るって言うとったの……」


「絡むなよ?」


別嬪(べっぴん)かの?それ次第じゃの」


◆◆◆


ヤエファは、

コトハの事を思い出していた。


───変わった人間じゃった。


亜人が戦争で敗けて、

人間に恨みを抱えたまま、

長年暴れ続けていた自分は、

人間に恐れられ、

死んだ兄と仲間の魂を鎮める為と、

善行(ぜんぎょう)と思って信じて重ねた行為は、

広まる悪名と共に、悪行として語り継がれる様になり、

いつしか、

同胞から向けられる眼差しさえも、

畏怖に()る、暗い物に変わっていた事に、

気づいた時には、

既に人間への恨みなど、

薄れてきてしまっていて、ひどく虚しく感じたものだった。

それでも、

薄れてしまった筈の恨みとは別に、

殺しても殺しても飽き足り無い程の、

渇きだけは、何故か鎮まる事は無かった。


───そんな時じゃったの。


◆◆◆◆


「やあ。

君がヤエファかい?

僕の名前はコトハ。ユンタの友達だ」


まるで近所に挨拶にでも来た様に、

呑気な調子で、

コトハはヤエファに向かって、そう言った。


「……。ユン姉の友達?

友達が、わっちに(なん)の用かね?」


「僕は君と話をしに来た」


「コトハーー。違うだろー?説明したじゃん……」


「話?

ユン姉。こげ(こんな)餓鬼を連れて来て、

なんのつもりかの?

わっちを退治にでも来たんかの?」


「違うよ。僕は君と話をしに来たと言ったのだけれど?」


「わっちは、お前と話す事なんて無いがの。

人間の割にゃ、(きも)が座っとるみたいじゃが、

わっちは、女は殺しとう無いけ。

とっとと失せんさい」


「それは出来ないかな。

僕は、君と話をする為だけに、

わざわざこんな遠いところまで来たんだ」


「そうかの。

そんじゃ、ちょっと(おどか)して泣かしゃ、

帰りたくなるかの?」


「それが出来るものならね。

僕は構わないさ。

でも、僕は、

ちょっとやそっとの事では泣かない事で有名だ」


「コトハ。あんまり油断すんなよーー」


「餓鬼。

わっちは女が好きじゃが、

()るんなら手加減はせんからの」


「わかった。

それなら僕も泣かない様に、

いつもよりも気をつけておこう」


「訳のわからん女じゃの……。

後悔しても知らんで」


「肝に(めい)じておこう。

でも、僕もそう易々とはやられはしない。

指切り姫(ヤエファ)』。

僕らは君を止める為に、

わざわざこんな遠いところへ来たんだ」


◆◆◆◆◆

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