第六十二話『ヤエファとユンタ。』
本日投稿の、
3話目になります!!
ギリギリになってしまいました!
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凶悪そうな人相の男達は、
数人がかりで、一人の女に襲いかかった筈だったが、
誰一人として女に触れる事すら叶わず、
全員があっという間に叩きのめされ、
口から、だらしなく泡を垂らして、
失神する羽目になった。
「店員さん。
食事時に喧しくして、
悪かったけ、
今居る、お客さん達の支払いを、
わっちに請求して欲しいんじゃが」
「え。わ……、わかりました……。
けど、宜しいんですか?」
「ええよ。
壊した店の物の弁償も、一緒にしてくれの」
「な……、なんだよ。滅茶苦茶強いじゃねーか」
リクは唖然としていた。
男達はあっさりと倒されてしまったが、
決して連中は弱い訳では無く、
寧、屈強な体格や、身の熟し、
使い古された武器を持っているところを見るに、
相当に戦闘慣れしている事は明らかだった。
「ほらなーー。
だから言ったじゃん」
「ユンタちゃん、あの女の人の事、知ってるんスか?」
「知ってるも何も……」
「ユン姉?」
ユンタを見て、女がそう言った。
「げ。バレた」
「ユン姉じゃ!!
久しぶりじゃの!!」
「ヤエファーー……。
やっほーーー……」
「居ったなら、声かけてくれたら良えのに!
何しとるん? イファルで暮らしとるん?」
「うんにゃ。たまたま来ただけ」
「そうなんじゃ。この子らは、連れなん?」
「そ」
「ユンタちゃんの、お知り合いの方だったんスね」
「まーーー……。一応」
「一応て何かの?
お嬢ちゃん。可愛えの。
わっちは、ヤエファ。
ユン姉の妹じゃ」
「え!? 妹さんッスか!?」
「違う違う。昔の仲間の妹でさーー。
ヤエファが子供の時から面倒見てたから」
「ユンタの妹にしては、発育が良いなと思ってたんだよな……」
「てめーーー、ぶっ殺すぞ?笑」
「この助平そうな子も連れかの?
良え男じゃね?」
「どこがだよーー」
「コトハは一緒じゃないん?」
「今、いねーーんだよ」
「そうなんか。逢いたかったの」
「ヤエファこそ、何してんだよ?
てか、どーー考えても、やり過ぎだろ?
こいつら誰だよ?」
「わっちは食事しとっただけじゃけ。
こいつらが勝手に絡んで来たけ、
火の粉を払って当然じゃろ」
「お前なーー」
「あの!」
ユンタとヤエファの間に割って入る様にして、
店の女給が、二人に声をかけた。
「違うんです!
このお客さんは、
この人達に絡まれていた私を助けてくれたんです!
だから、怒らないであげて下さい!!」
「え?そーーなん?」
「無理矢理、お酒を飲まされそうになって……」
「ありゃ。黙っといたのに」
「マジかよーー。クソじゃんコイツら。
衛兵に突き出しとくか?」
「あの……! ヤエファさん!
危ないところを助けていただいて、
本当にありがとうございました!!」
「あはは。
あんたが可愛え子じゃったけ、助けただけじゃ。
それより、支払いの方、これで足りるかの?」
ヤエファはずっしりと重たそうな財布から、
金貨を何枚か女給に渡すと、
金額が多すぎると言う女給を、
手で制すと、ユンタに言った。
「それじゃユン姉。
店を変えて、どこかでお茶でもどうかね?」
「えーー」
「何で嫌がるん」
ユンタはリクとロロを連れて、
ヤエファに見つかる前にさっさと退散するべきだったと、
後悔していた。
(めんどーーな奴に出会しちまったなーー……)
「ユン姉。
イファルは初めてなん?
わっちが良え店知っとるから、
そこに行こうや」
ヤエファは嬉しそうにし、
ユンタの肩に、垂れかかる様にして、
甘えた声で、そう言った。
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