表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第三章 『指切り姫と西方と忘れられた古い唄』
61/237

第六十一話『亜人の女。』

本日投稿の、

2話目です!!


シャオがスイを連れ去る様にして、

忽然(こつぜん)と姿を消してしまった後、

リク達は二人の事を探し続けていた。


「あいつら足速すぎないかな!?

全然追いつけないし、ここ何処だよ!?

完全に見失ったわ!!」


どれも似たような白の建物が綺麗に並んで、

ウィソよりも、

遥かに大勢の人が行き交うルーファンの都は、

土地の地理に明るく無い者にとっては、

巨大な迷路のように感じられた。


リクは辺りを注意して何度も見回したが、

スイとシャオの姿を見つけることは出来なかった。


「だーーーいじょぶだって?

いざとなったらスイが精霊で見つけてくれると思うよーーー?」


「でも……。

アイツいつもと様子が違っただろ?シャオも浮かれてるし……。

なんか心配にならないか?」


「たしかにそーーーだけどさーーー。

ウチらでどーにかできると思う?

幼なじみなんだから、いつかは仲直りするって」


「すっごい余裕!!」


「自分もあまり動かない方が良いかと思うッス!

あんまりウロウロしてると、

スイちゃんも精霊で探すのが大変になっちゃうと思うし」


「そ……、そうかな?」


「そそそ。まーーーリクっち慌てんなって?

お腹空かね?

どっか適当に入って、ご飯食べて待ってよーーーよ?」


「賛成ッス!あそこのお店なんか良さそうじゃないスか?」


「どれどれーーー?」


「あそこッス!

あそこ!

あの人がいっぱい並んでるとこッス!」


「お前ら余裕だよな……。

俺ばっかり焦って少し恥ずかしいわ」


「にゃはは。

ウチら、リクっちより軽く倍以上は、

長く生きてるからねーーー」


「え!?ロロも!?」


「そうっスよー!

グラスランナーも、

人間に比べて老化する速度が遅くて、

寿命が長いんス。

……もしかして年下だと思ってたッスか?」


「いや!

どう見ても年下にしか見えなかったんだが!?」


「にゃははーーー。

忘れんなよーーー?

ウチら普通の人間じゃないんだぜ?」


「お……、おう。

すごい衝撃的だったわ……」


「よーーし。

とりあえず。

あそこの店行ってみよーーー!

腹減ったーーー」


「行きましょ行きましょ!!」


ユンタとロロが並んで歩き出し、

リクは慌ててその後を追って行った。


お目当ての店の看板を見て、

文字の読めないリクが、

ユンタに書いてある内容を聞いてみると、

飲食店で間違い無いと返事があった。

そして三人は行列に並んだ。


昼時なのか、

あまり行列は進まなかったが、

三人で色々と会話をしながら待っていると、

然程(さほど)、苦でも無かった。


「ユンタとロロって一体何歳(いくつ)なんだ?」


「リク君……。

女の子に、そうやって年齢聞くの絶対良くないッスよー!?

世界には色んな種族の人がいるんスから、

見た目と違って、

びっくりするような歳の人もいるんスよ?」


「え?そうなんだ?」


「いくら長生きするって云っても、

異性に教えたくない女性は、

聞かれたくないッスから!」


「そ……そうなんだ……。気をつけようかな……」


「そんなに年齢(とし)って気になるかねーーー?

知ったところで、

別にどーでも良くね?笑」


「それはそうなんだけど……」


「どーーするよ?

ウチらがホントは五百歳でーーーす。

とかって言ったら?

聞いてもどーしていいか、わかんなくない?」


「うん……。たしかに……」


「ま。

リクのいた世界じゃ、

こーーゆーーー種族はいなかっただろーから、

物珍しいのはわかるよ。

ウチら別に気にしてないから、

リクっちも、

ロロ子に叱られたからって、そんな凹むな?笑」


「そうッスよー。

あ。でも自分も別に怒ったんじゃないッスからね?」


「う……、うん!

なんかありがとう二人とも!

俺さ、元々居た世界であんまり友達もいなかったからさ……。

人付き合いとか下手ですまん……」


「今さら笑 見りゃわかるよーーー笑」


「そうッスよーーー!

リク君ってちょっとアレかな?って思って、

おせっかいしたくなっただけッスから!」


「アレって?!」


──ガシャァァァァッッン!!!


何かが倒れて、

派手に食器が割れる様な音がした後、

混んでいる店内からは、

悲鳴がチラホラと聞こえてきた。


人相の悪い大柄な男が、

叩きつけられる様にテーブルに突っ込んで、

白目を剥いたまま動けなくなっている。


その男の仲間と思わしき、

数人の男達が、

一人の女を取り囲んでいる。


「この(アマ)何しやがんだ!?

タダじゃ済まさねえぞ!?」


ドスの効いた声で威嚇された女は、

つまらなさそうに鼻で(わら)い、

腰が抜けた様に座り込んで、狼狽(うろたえ)ている、

女給(ウェイトレス)に声をかけた。


「店員さん。すまんの。

きちんと弁償するけ」


「笑ってんじゃねえ!!」


五月蝿(うるさ)いの。

お前らみたいな、

しょんべん臭い餓鬼に絡まられたけ、

ちゃんちゃら可笑しくて笑ったんじゃ」


光を放って輝く様な、

ツヤの有る金色の長い髪をした、

美しい女だった。

上がった目尻に、

丁寧に(べに)を引いて、

美術品の細工の様に、

(あで)やかな化粧がされている。


妖しく濡れた様に光る赤い瞳は、

色気の有る女の顔立ちを、

殊更(ことさら)に引き立てていた。


そして、女の頭には、

獣の耳が生えている。

女は亜人だった。


黄金(こがね)色の、太い(しっぽ)を、

ゆらゆらとさせながら、

女は退屈そうに、

男達に向けて笑みを浮かべた。


その気(だる)げな、美しい表情は、

店内に居た老若男女を問わず、

人々の心を(とりこ)にして奪い去ってしまう様な、

蠱惑(こわく)的な妖艶さが有った。


それを見て、

男達は身体の裏側を撫でられる様な、

ゾクリとした疼痛(とうつう)を感じて、

下品な欲望が頭の中を(よぎ)り、

いやらしそうな顔をして、女に言った。


「今なら許してやらねえ事も()え。

お前が今晩、俺達の相手をするならな」


肌蹴(はだけ)た上着から覗く、

白粉(おしろい)の塗られた胸元を凝視して、

男がニヤニヤと嬉しそうにしていたが、

女は襟元を直す様子も無く、

何も言わずに黙っていた。


「へへへ。

亜人の女ってのは、具合が良いって聞いた事があるぜ?

お前で試させてもらうとするか」


「こんな人数相手じゃ、どうしようも無えだろ?」


「大人しくしてりゃ、悪い様にゃしねえからよ」


男達は、そう言いながら、

ジリジリと女に近寄って行った。


「けっ。

店に入った時から、

餓鬼が騒いどると思うとったけど、

よいよ(本当に)、つまらん連中じゃの。

お前らの粗末なモンで、

わっち()が満足すると思うたかの?」


「な!?もう一遍(いっぺん)言ってみやがれ!?」


「アホじゃの。

難しくて聞き取れんかったか?

顔も悪いが、耳と頭まで悪いんじゃの」


「てめえ!?」


一人の男が、女に掴みかかろうとしたが、

女は、その男の手を逆に掴み返すと、

目にも止まらない速さで、

親指を勢い良く折った。


「ッッッッがァァァァァアッッ?!」


「どうしたんじゃ?

指折られたんは初めてかの?」


「痛ぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


「あはは。

そげ(そんなに)可愛い声出すなや」


「女!!!そいつから離れろ!!」


男達がそう言って、

武器を抜こうとした瞬間に、

女は掴んでいた男の指を離して、

解放してやった。


「先に手を出したんは確かに、わっちじゃがの。

こげ(こんな)所でそんなモン振り回したら、

危なかろう?

続きは表に出てからじゃ」


緊迫した状況にも関わらず、

あっけらかんとした口調で、女はそう言うと、

手のひらを蝶の様に、ひらひらとさせながら、

鼻唄でも歌い出しそうな雰囲気で、

軽やかに歩いて、店を出て行った。


「騒ぎを起こして、

すまんかったの。

怪我は無かったかいの?」


女は店を出る途中で、

先程の女給に声をかけた。


「い……、いえ!大丈夫です、

あの……、お客様、私のせいで……」


女給にそう言われて、

女は返事をしなかったが、

口元は柔らかく微笑んでおり、

女給はその笑顔に、見惚れる様子で、

店から出て行く女の後ろ姿を見送った。


◆◆


その様子を窓の外から、

リク達は食い入る様に覗き込んでいた。


「加勢しようぜ!

あんなゴツい連中がよってたかって、

胸糞悪いわ!」


「そッスね!!

多勢に無勢とか、卑怯ッス!!

どー見ても、あっちが悪人面ッス!!」


リクとロロがそう言って、

店の中へ入ろうとしていたのを、

ユンタが止めた。


「ダメダメ。そっとしとこーー」


「は!?

何でだよ!?」


「いいからいいから。

心配せんでも、あんな連中じゃ、

相手になんねーーから」


「え?」


男の一人が、

不意打ちを仕掛けようと、

女の背後から斬りかかった。


その刹那、

女は素早く身体を(ひるがえ)して、

男が手にしていた大振りの剣を

指先でそっと摘まんだ。


まるで飴細工の様に、

鉄で出来た剣はぐにゃぐにゃと曲がり、

不意打ちを仕掛けた男は、

声を上げて驚き、

剣の(つか)を咄嗟に手離した。


ほいじゃけ(だから)

此処で物騒な(もん)を出すなって言うたのに」


「クソッタレ!! もういい!!

殺せ!!」


男達は狂った様な雄叫びを上げながら、

次々に女に斬りかかっていった。


「喧嘩売る相手を間違えたの。後で泣いても知らんで」


◆◆◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ