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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第三章 『指切り姫と西方と忘れられた古い唄』
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第五十七話『都。』

本日投稿の、

2話目になります!



友好条約を提携している、ウクルクの隣国。

中央諸国の中でも随一である、

国土の面積と人口を有し、

世界でも有数の強大な軍事力を保有する、

魔法国家イファル。


その、イファルの首都である、

ルーファンに、スイ達は無事に到着する事が出来た。


シャオの先導で、塔の様な高さの大きな城門を通り、

市街地に入ると、

イファルの建国神話に記載の有る、

神の遣いとしてイファルの地に降臨した、

白い巨鳥の叙事詩に因み、

巨鳥をモチーフとした、

建造物が多く見受けられた。


そして、

白を基調とした、

大きな建物が、

無数に建ち並んでおり、

東西南北の分けられた区画には、

碁盤上に敷かれた道路が、

隅々の至るところまでに、張り巡らされて、

全てが規則的で、

均一に整えられている。


シャオ曰く、

現在、パーティーが居る辺りは、

飲食店や商業施設が多く並ぶ区域だと云う。


「で……、でっけぇ街だな……。

マジで!!」


リクが、

荘厳で清潔な街並みと、

そこを往来する人々の多さと、

その華やかさと、

賑やかさに、

圧倒された様子で、

キョロキョロと辺りを見渡しながらそう言った。


「東京とかより、人が多いんじゃないのか?」


「ウィソよりも、都会だと言ったでしょ?」


スイが隣を歩きながら答えた。


「にゃは。なんだーーリクっち田舎もんなん?」


「自分もルーファンは初めてッス!!

噂には聞いてたけど、本当に大きなとこッスねーーー!!」


「ふふ。皆さん。

迷ったらいけませんから、

私に、ちゃんとついて来てくださいね?」


シャオは、

ルーファンに着いてからというものの、

ずっと機嫌が良かった。

と云うより、

洞窟での一件から、

どこか地に足がつかないような心地でいる様に見えた。


「迷っても、わたしの精霊が教えてくれる」


スイが、

少しだけ棘のある言い方でそう言った。

シャオがスイの顔を覗き込むと、

スイは眼を反らした。


昨夜、

ユンタに話を聞いてもらったものの、

シャオを見ると、

まだ少しだけ、

心に()()()の様なものがある事が、

自分にはよくわかっていた。


「まだ怒ってるんですか?」


「別に。怒ってなんかないよ」


「ふふ。

そんなにふてくされてたら、

隠してもすぐにわかっちゃいますけど?」


「隠し事なんてしてない」


「それに、

昨夜はひどいじゃないですか?

いつの間にか居なくなっちゃって」


「君がベッドを占領するから、眠る場所が無くなったんだ」


「ひゃぁぁぁぁぁ……!!!!

昨日の夜、何があったんスか!!?

別々の部屋だったじゃないスか!!?

一緒に寝てたんスか!!!?」


「違うよ。

シャオが勝手に、

わたしのベッドに潜り込んできただけだよ」


「なんだか、昨夜は冷えましたからねぇ……」


「もういい。

機嫌が悪く見えたなら謝るよ。

でも、

わたしだって機嫌の悪い時だってあるし、

気持ちの整理をつけたくて、

そっとしておいて欲しい時もある」


「そうですか………。わかりました……」


「まーまー。

無事に着いたんだしーーー。

休養しに来たんだからなーーー?

とりあえずパーーーッと遊ぼうよ」


「そうですね!

皆さんは、どういうお店が好きでしょうか?

食べ物屋さんもたくさんありますし、

温泉も、

夜中まで営業していますから、

他にも色々と見てまわりましょう!」


「楽器屋さんとかもあるんスかね!?」


「はい!

大きなお店があります!!

職人さんが常駐している店なので、

そこに行ってみましょう!!」


「やったッス!

リュートの調律(チューニング)が最近ズレやすくて……」


「ウチは、甘いもの食べながらウロウロしたいなーーー」


「あります!!

スイーツ屋さんが密集した通りがあるので、

そこに寄っていきましょう!!」


「うぇーーい。楽しみーーー」


「俺はどうしよう!?」


「リクさんは大きな都が初めてですし、

とにかく色々見てみましょう!!

ニホンには無い物もあるでしょうから、

きっと楽しいと思います!!」


「わかった!!」


「…………………」


「スイはどこか行きたい所はありませんか?」


「私は……、別に……。

皆の行きたい所に着いて行くからいいよ」


───(こんなに、子供みたいな事を言いたくないのに)


とにかく、明るく接して来るシャオを、

羨ましく思い、

少しだけ、恨めしくも思った。


「新しく出来たアクセサリー屋さんとかも、

たくさん有りますよ?」


「うん……」


「あ!

あと!

スイってチョコレートが大好きでしたよね?

スイーツ屋さんの通りに、

チョコレートを取り扱うお店が出来たんですよ?

生チョコ?とかって名前の、

美味しいチョコレートが有るそうですよ!

一緒に行ってみませんか?」


「……うん……。行く……」


「チョコレートって、

確か、ニホンから伝わって来たお菓子ですよね?

そこのお店のパティシエの方が、

転移してきたお菓子作りの職人さんに、

直接、作り方を教えてもらったらしいです!

(かあ)様が一度だけ、

食べた事が有ると言ってましたけど、

本当に(とろ)ける程に、

甘くて美味しかったそうですよ!

食べたくありませよか?」


「……食べてみたい」


スイは渋々に、

と云う感じだったが、

チョコレート、

という言葉に、

惹かれていることは明らかだった。


「良かった」


シャオが、ニコリと微笑んで嬉しそうにそう言った。


「たくさん買って、

あとで私の家に届けてもらいましょう!

確か、たくさん種類があったので、

スイが食べたいものを、

どれでも好きなだけ選んでくださいね!

それに!

母様もお菓子をたくさん作ると思うので、

いっぱい食べてくださいね!!」


シャオはスイの手を握り、

飛び跳ねる様に歩き出した。

嬉しさが頂点に達した様に、

とても浮かれた表情で。


「そんなに引っ張ったら痛いよ」


「スイ!

私嬉しいんです!

スイが、この都に来るのは久しぶりでしょう?

それに……。

スイと一緒に、こうやって手を繋いで歩けるなんて……。

まるでデートみたいで……」


「皆が居るじゃないか」


「ふふ。照れちゃって」


「照れてないよ!

ちょっとシャオ……。いい加減、

手を離してくれるかな?」


「それにですね……。

スイがふてくされてツンツンしているのも……。

私、好きです!」


「ねぇ……。少し話を聞いてくれないかな?」


「聞いてます!

私……。

何だか今日は、

スイと手を繋いで、

街中(まちじゅう)を、駆け回りたい気分です!!」


「全然聞いてないじゃないか!?」


シャオはスイの手を握ったまま、

嬉しそうに駆け出した。


固く握られた手のおかげで、

スイは必死になって、

シャオを追って、

走って行く事しか出来ない様子だった。


スイは、

無理矢理にでも、

振り(ほど)いておかなかった事を後悔した。


シャオの脚は、とても速いのだ。


「スイちゃん元気無かったッスけど、

シャオちゃんに圧倒されてるッスねー」


「ちょっと強引だけど、

仲直り出来そーーで良かったわー」


「追いかけなくていーのかよ?

二人とも行き先の店、知ってんのか?」


「わかんないーーー」「知らないッス!」





「…………追いかけるぞ!?!?」



◆◆

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