第五十六話『夜更けと寝息。』
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(眠い……。何処か他で、眠れるところを探さないと……)
考えた結果、
夜が明けるまでには、
未だ、時間が有るので、
スイは、ユンタの部屋に行って、
一緒に寝ても良いか頼もうと考えた。
部屋を出る時に、
シャオが気持ち良さそうに眠る姿を見て、
舌打ちをしながら。
どの部屋も灯りは消えて、
誰もが寝静まっている時間に、
気をつけていても、
ギシギシと音を立てる、
宿の廊下を歩くと、
まるで自分が、
この夜の中に紛れ込んでしまった、
侵入者の様な気分になっていた。
ユンタの部屋のドアを静かに開けて、
ベッドの横に立ち、
眠っているユンタに、
小声で声をかけた。
「ユンタ……。ユンタ……」
「がぁーーー……。がぁーーー………」
「ユンタ……。起きて……」
「がッッッ!!!?
は!?
あ……。え……?スイ?……どしたん?」
半分以上、
開いていない眼を擦りながら、
ユンタがスイに言った。
「あ、ああ……。
トイレ?
ちょっと待って、今起きるからーーー……」
「ち……、違うよッッッ……。
子供の時と同じ事を言わないでよ……。
シャオが、
わたしのベッドに入って来て、
眠れなくて困ってるんだ……。
今夜だけ、一緒に寝ても良い?」
「なんだよーーー……。
そうだーー……。
スイは大人になったんだった……。
トイレは、ついてかなくても、
一人で行けるかーーー……。
いいよーーー……。
どぞどぞ……」
ユンタは、
寝ぼけた口調のまま、
掛け布団を捲ると、
スイに向かって手招きをした。
「昔の夢でも見てたの?」
「んーーー?
どーーだったかなーーー……。忘れた」
「ユンタ……。
夜中に、トイレについてきてもらっていた話とかは、
皆の前で、しないでね?」
「にゃはは。
わかったわかった。
まだ、ちっこい時だったもんね?
可愛かったなーーー」
「約束だよ?
わたしにも、一応恥じらいは有るからね」
「りょーーーかい」
「さっき、コトハさんが出てくる夢を見たんだ」
「そーなん?」
「うん。すごく久しぶりに見た」
「そっかーーー。
それでエモくなっちゃって、
ユンタちゃんのところに来たんかーーー?
可愛い奴だなーーー。うりうり」
「ぷっ。
あはは。
ユンタ。くすぐったいよ。
それに、違うよ。
もう一度、寝ようとしたけど、
シャオが居て、眠れなかったんだよ」
「シャオちんも、健気で可愛いよなー」
「相手が自分じゃ無かったら、
とても微笑ましく見ていられるんだけれど……。
シャオは行動が突飛で、
極端なところがあるから……」
「ちゅーされたのまだ怒ってる?」
「………わからない。
とても恥ずかしかった。
わたしは、
恥ずかしくて仕方無かったのに、
シャオはケロッとしてる。
何だか不公平だよね」
「大好きなスイと、ちゅー出来たんだもん。
そりゃーー嬉しいでしょ」
「はぁ……。
シャオとこれから、
どうやって接して良いのか、
わからなくなった」
「あの娘は、多分変わんないからなーー」
「そうなんだよ。
はぁ……。冷たく当たりたい訳じゃ無いんだよ?」
「わかってるってーー。
シャオちんは変わんないだろーから、
元通りになるまで、
ゆっくり時間かけても大丈夫でしょ。
ウチも女と、ちゅーした事無いから、
どうしたら良いのか、わかんないのは想像出来るし、
辛くなったら、
ウチが相談聞くからさーー」
「うん。ありがとう」
「そんで。
どさくさに紛れてさーー、
話飛んじゃったけど、
あのイェンて奴が、
ミナトかも?って話だったよね」
「うん」
「もしもさ、ほんとに、
ミナトだとしたら、
ややこしくねーーー?」
「そうだね。
よくわからない宗教だか、
組織だかに所属していて、
使い走りのようなことをして、
変なマスクを着けている」
「しかも、ウチらに攻撃してきたもんなーー」
「記憶を失くしたって事なのかな」
「わかんねーーー。
何かの事件に巻き込まれたんかなーー?」
「でも、ミナトだからなぁ。
記憶を失くしたって、
思い込んでたりして」
「そーーーなんだよなーー。
あのミナトだからなーーー。
リクっちとは、
また違うタイプのアホだったもんねーーー」
「うん。
えーと……。
なんだっけ?
あ。
『こじらせてる』だ」
「自分は勇者だ。って、
信じて疑わんかったもんなーーー」
「彼は世界を救う為に、
旅に出たんだからね。
それが今では、
紆余曲折が有って、
変なマスクを着ける事になり、
下手な暗躍に精を出しているのかも知れない」
「うわーーー……。
だとしたら痛いなーーー……」
「あり得てしまうところが、
ミナトらしいね」
「しかも、アホだったけど、
強さだけは本物だったよねーー?」
「うん。
チート的な強さだった」
「スイには、頭上がんなかったけどなーー」
「そうだったかな?」
「スイが怒るとさ、タジタジだったじゃん」
「あはは。
わたしの事が苦手だったんだよ」
「苦手な相手と、ちゅーしないでしょーー」
「それは……。
きっと何かの気の迷いだったんだよ。
それに、そんなに色っぽいモノでは無かったんだよ?
口と口が、
たまたまぶつかったって感じで」
「童貞だったしな。笑
今度会ったらさーーー……。
ウチ聞いてみるわ……」
「うん……。
もし、本当にミナトだとしたら……。
何か……。
コトハさんに繋がる手がかりが……。
あるかも知れない……」
「そーーだとしたら、マジ嬉しいな?」
「嬉しい……。
コトハさんに逢いたいなぁ……」
「ウチも…………」
そして会話が途切れ、
スイとユンタの二人は、
身を寄せ合うようにして、
小さなベッドの中で、
お互いの温もりを、
心地良く感じ合いながら、
静かに寝息を立て始めた。
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