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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第三章 『指切り姫と西方と忘れられた古い唄』
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第五十三話『スイの見た夢。』

本日投稿分の、

2話目になります!


この話から、

新しい章に入りまして、

長めのプロローグの様なモノを最初に書きます!!



そこの景色は、わたしの見憶えの有るものだった。

丁寧に石畳が()かれ、

綺麗に区画分けされた大きな都。

それを、

ちょうど見下ろす事の出来る、

大きな城壁から外に出て、

しばらく歩いて登った所に有る、小高い丘の上。

季節によっては、

とても心地の良い風が、

よく吹いていた気がする。


そして、わたしは、

そこが何処だったかを、

すぐに思い出すことが出来る。


見下ろしている馴染みの有る街並みは、

ウィソの都で、わたしの故郷だ。


上着のポケットに、

両手を突っ込んだ女の子が、

丘の上に登って行き、

彼女が歩いている先の頂上の所で、

脚を伸ばして地面に座り込んでいる、

綺麗な女の人に声をかけていた。


あの女の子は、

幼い頃の、

わたしだ。


座っている女の人は、

わたしのお母さん。


見間違える訳がない。


コトハさんだ。


◆◆


「やあ」


コトハさんが、

わたしを見て、

微笑んでいた。


「何してるの?」


「都を見ていたんだ」


「どうして?」


「どうしてと聞かれると……。

どうしてだろうね?

君こそ、

どうしたんだい?

また門番のおじさんに頼んで、

一人で外に出たのかい?

ヤンマに叱られるぞ?」


「お母さんだって、一人で外に出てるじゃないか」


「それは確かにそうだ。

ところで。

いつも言っているけど、

血の繋がらない僕の事を、

母親と慕ってくれているのは、

とても嬉しいし、

僕も君の事を娘の様に、

とても愛おしく思っているんだけれど、

()()()()()()()()

お母さんではなくて、お姉さん。と呼んで欲しいな」


「だって。

コトハさんの事を、

お母さんって呼ばないのは変だって、

ゼンが言ってたから」


「ゼン…?ああ。

あの横柄(おうへい)そうな男の子か」


「そう」


「仲良くやってるのかな?」


「ううん。

僕は、ゼンの事が苦手だから」


「どうして?」


「弱っちい癖に、いつも僕をからかってくるから」


「男の子とは、

そういうものなのだろうね。

でも、

彼が何て言おうが、

僕は、お母さんと呼ばれるのは嫌だ」


「じゃあコトハさんって呼ぶよ」


「それなら良い」


「ご飯の時間だけど、(うち)に帰らないの?」


「もうそんな時間だったかな?

ついつい、ボーッとしてしまう(くせ)があるからいけないね」


「大人なのに?」


「大人なのに。

たまには何も考えない事もあるさ。

………。図書館のお姉さんに、

たまたま聞いたんだけど、

君は遊びに行くと言って、時々、

家を出て行っているけど、

決まって、

いつも図書館で一人で本を読んでいるそうじゃないか?

君くらいの年頃の子供は、

子供同士で遊びたいものなんじゃないのかな?」


「本を読んでいる方が好きなんだ」


「図書館のお姉さんは、

君が、図書館の本を全部、

読んでしまうんじゃないかって言っていたよ」


「読み終わる頃には、お婆ちゃんになってると思う」


「僕も本は好きだけどね」


「コトハさんが子供の時は、

僕くらいの年齢(とし)の頃には、

どうだったの?

友達と遊んでた?」


「うーん……。

余り、

外で遊ぶような……、

活発な子供では無かったかなぁ……。

一人で家に居たような……。

あれ…?いなかったのかな?友達……」


「ほら。

コトハさんだって一緒じゃないか」


「一人で家に居たって、勝手に大人にはなれるものさ」


「じゃあ。僕が、

一人で居ても心配しないでね?」


「それは、別の話かな。

僕は君の保護者だからね。

君が、健全な大人になれる様に見守る義務がある」


「それなら早く大人になりたい」


「あ。

シャオがいるじゃないか?

この間だか、

いつだったか、

クアイさんたちがウィソに来た時に、

一緒について来て、家に遊びに来ていただろう?」


「シャオは好きだけど……。

時々意地悪な事を言ってくるんだ。

それに……。

変なんだよ。

同い年なのにやたらと、

僕の事を、可愛い可愛いと言って、子供扱いしてくる」


「それはまた、別の何かの様な気がしないでも無いかな。

あの子は何だか、妙に色っぽいところがあるし。

早熟そうだから」


「それから……。すぐ泣くし……」


「イファルの、

将軍様の一人娘だからなぁ。

箱入りなんだよ。

それでも、

僕はあの子の事が好きだよ?君にも懐いているし」


「うん……。

でも、一人の方が気が楽で良いから好き。

それとコトハさんとヤンマと居るのが好き」


「ユンタは?」


「ユンタも好き」


「それを聞いたら喜ぶよ。きっと」


「ユンタは面白くて可愛いし」


「君も、とても可愛いと僕は思う」


「僕なんて、目付きも悪いし変だよ」


「僕の生まれた国では、

君の様な顔立ちの女性を、

クールビューティーなんて呼んだりするんだよ。

君はとても形の良い綺麗な眼をしている。

スイは大人になった時、

きっとものすごく美人になっているだろうね。

羨ましいな。僕は垂れ目だから憧れるね」


「別に美人にならなくたって良いよ」


「とても贅沢な事を言うんだね」


「どっちだって構わないもの」


「時に。

君は好きな男の子はいないのかい?」


「いない」 


「まあ、君の性格からいってそうだろうね。

しかし、未だ君は、たったの十一歳だ。

いつかは、

思わぬ所から、

素敵な男の子が現れて、君に恋をして、

君も、その子と恋をするんだ」


「わからない」


「ふふ。

僕もヤンマと出逢うまではスイと一緒だったよ。

ちなみに僕はヤンマみたいな人は全然タイプじゃなかった」


「そうなの?でも結婚したじゃないか?」


「そういう事は。

誰にも、自分でさえ、わからないものだという事だよ」


「僕には少し難しい話だね」


「そうだろうね。

まぁ、とにかく君は、さぞかし素敵な女性になる事だろうね。

モテモテで、色々な男の子から告白を受けて、

引く手あまたになって、困っている君の姿が眼に浮かぶよ」


「そんな事にはならないよ。きっと今と変わり無いんだよ」


「ふふふ。………楽しみだ。

大人になった君を見てみたいなぁ………」


◆◆


そこで場面が、

プツンと音を立てて、

あっという間に切り替わる様に、

わたしの視界から景色と二人が消えていった。

眼を細めて笑うコトハさんの表情が、

とにかく懐かしくて、嬉しかった。

何度も、何度も、

繰り返し見た笑顔だ。


そして、

わたしは、

木造の部屋の小さなベッドに寝転んでいる、

幼いわたしを見下ろしていた。


一階から、

とても大きな声が聞こえる。


ヤンマの声だ。


ここは、

わたしの暮らしていた家だ。


わたしがそっと起き上がって、

足音を立てないように、

ゆっくりと階段を降りていっている。


台所で、

ヤンマがコトハさんに怒鳴っている。

それを子供のわたしが階段に座って、

コッソリと聞き耳を立てていた。


この時の事を、

まだわたしは憶えていたんだ。


「だから!

なんでコトハが調査隊に参加するんだって話なんだよ!?

それなら俺も行く!

旦那なんだから!」


「うーん…。君に何度も説明はしたんだけどね……。

君は全然僕の話を理解しようとしてくれないじゃないか。

それに。君まで一緒について来てどうする?

スイを置いていくのかい?

君が居てくれるからと、

安心していた僕の気持ちを返してくれ」


「置いて行けるか!!

スイも連れて行くに決まってるだろ!!

俺の娘だ!!」


「調査隊に家族で参加だなんて。

地域の(もよお)しモノとは違うんだよ?」


「そんなことはわかってらぁ!!

誰がな何と言おうと俺は行く!

スイも連れて!!」


「危険な目に遭うかも知れないじゃないか?

君はスイが危ない目に遭っても良いと言っているのかい?」


「そんなわけあるか!!俺が必ず守る!!お前もだ!!」


「君は僕より強くないのに?」


「うるせえ!!」


「あとね。

君は声が大きい。

スイに聞かせたくないんだがね」


「……わかってるよ……。

んなこたぁ。スイに聞かせるのは俺だって嫌だ……」


「よろしい」


「でもよ……。

ネイジン(北方の国)だなんてよ……。

遠すぎるじゃねえか……」


「国交の無い国からの、

招集の依頼なんて、

初めての事らしいね」


「それに……。

果ての大地(魔物発祥の土地)の、

すぐ傍の国じゃねぇかよ……」


「そうだね。

聖域教会の総本山でもある」


「そんな遠い国に、

嫁さん1人を行かせる馬鹿はこの世にいねぇだろう……?」


「ヤンマ。

それなら君は、

第一人者になれるかも知れないじゃないか」


「茶化すな!

俺は絶対許さねぇからな!

今から城に行って、

国王に、お前の参加を、

取り消す様に直接言ってくる!!」


「やめなよ。

もう遅いよ?せめて明日の朝にしたらどうかな?」


「……クソッッッ!!!」


「国王も、悩み抜いた末の決断だった。

と、僕は思うけどね。

何より、そうであって欲しいかな」


「いつもこうじゃねえか!?

お前の力頼みで、

アレコレと危ねぇ橋を渡らせようとしてきやがる!!」


「今のネイジンの首相は、

聖域教徒内でも相当なタカ派らしいからね。

断れば、

穏便には済まないと思っているんだろう」


「弱腰の外交で、

いつも泥を被らされるのは俺やお前やユンタだ!!

大体お前もユンタもどうかしてるぞ!?

この国のお偉方(えらがた)連中が、

命懸けで戦うお前らに、

一体何をしてくれた!?」


「うーん。

別に僕は、

今の生活に不満がないからなぁ」


「こんな、都の外れに住まわされてか!?」


「どこに住んでいたって僕は僕さ。

それに君もスイもいる。

その暮らしに不満を持つのは、

少し欲が深いんじゃないかな?」


「話にならねえ!」


「それに……。

今の話はユンタには言わない事だね。

彼女は、

人間の僕を、

友人として、

助けてくれている。

その彼女の行いを侮辱する者は、

たとえ、君であろうと僕は決して許さない」


「な、なんだよ!?

脅しかよ!?」


「ユンタは僕の大切な友人だ」


「わ……、わかったよ。

言わねぇから……。

それに、侮辱なんてしてねぇよ……。

俺だって、

ユンタは大切な友達だと思ってるよ…」


「ヤンマ。

僕は、

突然この世界に迷い込んだけど、

不幸せだと思った事は、

たったの一度も無い。

それは、

君やユンタやスイが、

僕の前に現れてくれたからだ。

僕には、

崇高な思想も哲学も何も無い。

だけれど、

大切な人たちを、守りたいという気持ちだけは持ってる。

そして、

少し傲慢じゃないかと自分でも思うけど、

僕には君たちを、守れる力が有るのをわかっている」


「………でも、

俺は明日王宮に行くからな……。

一言文句を言わなきゃ(おさ)まらねえ……」


「ふふ。

君の性格はよくわかっているよ。

それから、

僕は君の事を本当に心から信頼している。

君の気が済む様にしたらいい。

そして願わくば国王の気が変わる事を、

僕も望んでいないわけじゃない」


「………………」


「スイの事をよろしく頼むよ。ヤンマ」


◆◆◆




読んでくれた皆さんありがとうございます!


今夜、

もう1話更新しますので、

引き続き読んでもらえたら嬉しいです!

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