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第五十二話『Never seem to end。』

おはようございます!


本日投稿の、

1話目になります!!


「ユンタ!?

元カレ?

と云うのは、昔の恋人という意味だろう?

わたしとミナトは、

そういう関係じゃなかったよ?!」


「え?そーーーなん?

昔、ちゅーされたって言ってなかった?」


「ち!?

違うよ!!

あれは……、ミナトが強引に……。

わたしも、まだ子供だったから……。

何がなんだか……。よくわからなかったんだよ……」


スイが顔を赤くして、困り果てた様子で、

もにょもにょと否定した。


「ちょ……、ちょっと待て!!

お前さっき、

ミナトの顔どんなだったか忘れたって、

言ってなかったか?!

元カレの顔て忘れちゃうもんなの?!

てゆーか、そーゆー存在がいた事あったのかよ?!

そ……それに……。

ち……、ちゅーて!!?」


「しょうがないじゃないか!

最後にミナトを見たのは、もう何年も前なんだよ?

それに元カレじゃない!!

ちゅ……、ちゅーの話は、

もうしなくて良いだろう!?」


「私……。

聞いてないです………」


シャオは顔を(うつむ)けたまま、

とても静かな声でそう言った。


“あ……。これ絶対やばいやつだ……”

リクはそう考え、咄嗟(とっさ)に身構えた。


「私……。

ミナトがスイと……。

そんな……、

私より先にスイの唇を奪ってたとか……。

ちゅーしてたとか……。

聞いてないです………」


シャオがゆっくりと、ひとつずつの言葉を、

丁寧に吐くように呟いた。


「シャ……、シャオ?」


「聞いてないです!

聞いてないです聞いてないです聞いてないです!!!

聞きたくもないですーーー!!!

え!?

あの男ってスイの事を狙ってたんですか!?

そりゃ確かにスイは綺麗で可愛くて、

かっこよくて生きてるだけで尊い、

崇められるべき存在で魅力的ですよ!?

気持ちはわかります!!

でも……、私の幼い頃からの理想の王子様なんですよ!?

高嶺の花なんですよ!?

それを……、いけしゃーしゃーと!!!

私はずっとずっとずーーーっとスイの事が大好きだったのに!!

なのに!?

ちゅーーーー!!?

他の男とちゅー!??

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!??」


「ちょ……、ちょっと落ち着いてよ」


「落ち着けません!!!

しかも……。

しかも……、強引にって……?

きっと嫌がるスイに無理矢理迫ったんですね!?

そーなんですね!?

だとしたら、許せません!!」


「ち……、違うよ……。

無理矢理にって……。

そんな力づくで襲われたわけじゃないから……。

安心して?ね?」


「あーーー!!

じゃあ同意の上だったんですかーーー!?

ズルい!

ズルいズルいズルい!!」


「ズ……、ズルくないよ。

それに、

子供だったから、

よくわからなかったんだって言ったじゃないか」


「じゃあ私にもちゅーしてください!!

じゃないと不公平です!!」


「な……!なんでそうなるのさ!?」


「だって!

私の方が絶対スイの事好きですし、

スイの事大切に出来ますし!!

だからちゅーしてください!!

ほら!

ほら!!!!

んんーーーーん……」


「シャ……!シャオ!!

ま……、待って待って待って!!

近い!

近いから!!

ユンタ!

リク!

見てないで止めてくれないかな!?」


「止めに入った瞬間に、

俺死んじゃうんじゃないかと思うんだが?」


リクが少し遠い目をして言った。


「減るもんじゃないじゃんーー?よくね?」


「よくない!!」


スイはシャオを引き剥がそうとするが、

シャオの力が強すぎて、びくともしなかった。


「ちょ……!

シャオ……!

力強……!!」


「皆さんお待たせしたッス!

皆のおかげで村の皆さんも無事でしたし、

仲直りも出来たし!

本当に自分は幸せ者ッス!

ところで、さっきから何を盛り上がってたんスかー?

………ってあんたら何やってんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


スイを力づくで抑えつけながら、

甘い吐息を荒くさせて唇を突き出すシャオの姿を見て、

ロロはとんでもない大声で叫んだ。


「スイ……。

私はいつでもいいですよ?心の準備はいつも出来てます」


シャオが眼を閉じて、

そう言った。


「わ……、わたしの方は準備どころじゃないんだけど!?

シャオの方がよっぽど無理矢理じゃないか!?」


「大人しくしなさい!!」


「無理だよ!?

もう……、許してくれないかな?

それに………。

こんな人前で出来る訳ないだろう……?

恥ずかしいよ……」


スイが弱々しく、

泣きそうな声で(ささや)く様に静かに言った。


「ふふ。今更そんなに(しお)らしくしたって、

許しませんよ?」


「………きぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

人前じゃなかったらしちゃうんスかぁぁぁぁぁぁ!!?

は……、破廉恥(ハレンチ)ッス!!!!

(てぇて)ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」


「にゃは。ロロ子、声でけーーー笑 」


「アイツも、あんなに動揺したりするんだな?

普段ドSなのに」


「可愛いよね」


「可愛いな」


ユンタに釣られてなのか

本心でそう言ったのか、

リクがポツリと呟いたの事を、

ユンタは聞き逃しておらず、

必死で笑いを堪えていた。


ロロの叫んだ声が、

洞窟を越えて、

森中に届きそうな勢いで響き渡り、

その声を聞いた村人たちは、

ロロが楽しそうに過ごしている事を、

自分の事のように喜んでいた。


「良かったなぁ……。

ロロちゃん。あんなにも、

楽しく笑い合える人たちに出逢えたんだなぁ……」


一人の老人が涙を流しながら震える様な声で言った。


「彼の者たちの行く末に、女神の天恵に依る、

すべての(さいわ)いと祝福があらんことを」


神父が眼を閉じて唱え、

そして祈った。


◆◆



「違う!!

人前だからとか、そういう問題じゃなくて……」


「ロロさんの言う通りです」


シャオがスイの言葉を切るようにピシャリと言い放った。


「さっきのはスイの問題発言です。

人前じゃなくて二人きりだったらしちゃうんですか?

と云う風に解釈しちゃいますけど?

私、期待しちゃいましたけど?」


「ち……、違うんだよシャオ……。

あの……。そういうことが言いたかったんじゃなくて……。

もう、おふざけは終わりにしよう?ね?」


「さあ!スイ!観念なさい!!」


シャオの唇がもうほとんどスイの唇に触れそうな距離にあった。


「ま……!?待って!!

本当に待って!?

もう謝る!謝るから……!

ちょ、ちょ!ちょっとシャオーーー!?!?!?

わ……わ……!舌…?

ちょっ!

んっ…んんっ……?!

……ぷはっ……!

……うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!?!

あっ……。

待っ……!!

んっ……ん!?

んんーーーーーーーーーーーーっ!?!?」



「ひぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?

て……、天使と天使が!!

濃厚なのブチかましてるじゃないスかぁぁぁぁぁぁ!?

え!?

そんな!!?

お年寄りも居るんスよぉぉぉぉ!?!?!?」


◆◆◆


そして、長い長い夜が明けて、

洞窟の外には、

既に明るい陽の光が差し始めていた。

何事も起こらなかったかの様に、

夜は閉じていた幕を開けて、

世界は、

とても静かに、

音を立てずに動き出していくのだった。


そうして、世界は常に周り続けている。

我々が、望むと望まないには一切の関わりも無く、


終わりを迎える事になる日など、

まるで、いつまで経っても来ないかの様に。


◆◆◆◆

読んでくれた皆さんありがとうございます!


第二章が、

ここで終わりとなりまして、

次話の投稿から、

第三章に移ります!!


引き続き読んでもらえたら、

とっても嬉しいです!

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