第五十二話『Never seem to end。』
おはようございます!
本日投稿の、
1話目になります!!
◆
「ユンタ!?
元カレ?
と云うのは、昔の恋人という意味だろう?
わたしとミナトは、
そういう関係じゃなかったよ?!」
「え?そーーーなん?
昔、ちゅーされたって言ってなかった?」
「ち!?
違うよ!!
あれは……、ミナトが強引に……。
わたしも、まだ子供だったから……。
何がなんだか……。よくわからなかったんだよ……」
スイが顔を赤くして、困り果てた様子で、
もにょもにょと否定した。
「ちょ……、ちょっと待て!!
お前さっき、
ミナトの顔どんなだったか忘れたって、
言ってなかったか?!
元カレの顔て忘れちゃうもんなの?!
てゆーか、そーゆー存在がいた事あったのかよ?!
そ……それに……。
ち……、ちゅーて!!?」
「しょうがないじゃないか!
最後にミナトを見たのは、もう何年も前なんだよ?
それに元カレじゃない!!
ちゅ……、ちゅーの話は、
もうしなくて良いだろう!?」
「私……。
聞いてないです………」
シャオは顔を俯けたまま、
とても静かな声でそう言った。
“あ……。これ絶対やばいやつだ……”
リクはそう考え、咄嗟に身構えた。
「私……。
ミナトがスイと……。
そんな……、
私より先にスイの唇を奪ってたとか……。
ちゅーしてたとか……。
聞いてないです………」
シャオがゆっくりと、ひとつずつの言葉を、
丁寧に吐くように呟いた。
「シャ……、シャオ?」
「聞いてないです!
聞いてないです聞いてないです聞いてないです!!!
聞きたくもないですーーー!!!
え!?
あの男ってスイの事を狙ってたんですか!?
そりゃ確かにスイは綺麗で可愛くて、
かっこよくて生きてるだけで尊い、
崇められるべき存在で魅力的ですよ!?
気持ちはわかります!!
でも……、私の幼い頃からの理想の王子様なんですよ!?
高嶺の花なんですよ!?
それを……、いけしゃーしゃーと!!!
私はずっとずっとずーーーっとスイの事が大好きだったのに!!
なのに!?
ちゅーーーー!!?
他の男とちゅー!??
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!??」
「ちょ……、ちょっと落ち着いてよ」
「落ち着けません!!!
しかも……。
しかも……、強引にって……?
きっと嫌がるスイに無理矢理迫ったんですね!?
そーなんですね!?
だとしたら、許せません!!」
「ち……、違うよ……。
無理矢理にって……。
そんな力づくで襲われたわけじゃないから……。
安心して?ね?」
「あーーー!!
じゃあ同意の上だったんですかーーー!?
ズルい!
ズルいズルいズルい!!」
「ズ……、ズルくないよ。
それに、
子供だったから、
よくわからなかったんだって言ったじゃないか」
「じゃあ私にもちゅーしてください!!
じゃないと不公平です!!」
「な……!なんでそうなるのさ!?」
「だって!
私の方が絶対スイの事好きですし、
スイの事大切に出来ますし!!
だからちゅーしてください!!
ほら!
ほら!!!!
んんーーーーん……」
「シャ……!シャオ!!
ま……、待って待って待って!!
近い!
近いから!!
ユンタ!
リク!
見てないで止めてくれないかな!?」
「止めに入った瞬間に、
俺死んじゃうんじゃないかと思うんだが?」
リクが少し遠い目をして言った。
「減るもんじゃないじゃんーー?よくね?」
「よくない!!」
スイはシャオを引き剥がそうとするが、
シャオの力が強すぎて、びくともしなかった。
「ちょ……!
シャオ……!
力強……!!」
「皆さんお待たせしたッス!
皆のおかげで村の皆さんも無事でしたし、
仲直りも出来たし!
本当に自分は幸せ者ッス!
ところで、さっきから何を盛り上がってたんスかー?
………ってあんたら何やってんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
スイを力づくで抑えつけながら、
甘い吐息を荒くさせて唇を突き出すシャオの姿を見て、
ロロはとんでもない大声で叫んだ。
「スイ……。
私はいつでもいいですよ?心の準備はいつも出来てます」
シャオが眼を閉じて、
そう言った。
「わ……、わたしの方は準備どころじゃないんだけど!?
シャオの方がよっぽど無理矢理じゃないか!?」
「大人しくしなさい!!」
「無理だよ!?
もう……、許してくれないかな?
それに………。
こんな人前で出来る訳ないだろう……?
恥ずかしいよ……」
スイが弱々しく、
泣きそうな声で囁く様に静かに言った。
「ふふ。今更そんなに悄らしくしたって、
許しませんよ?」
「………きぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
人前じゃなかったらしちゃうんスかぁぁぁぁぁぁ!!?
は……、破廉恥ッス!!!!
尊ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」
「にゃは。ロロ子、声でけーーー笑 」
「アイツも、あんなに動揺したりするんだな?
普段ドSなのに」
「可愛いよね」
「可愛いな」
ユンタに釣られてなのか
本心でそう言ったのか、
リクがポツリと呟いたの事を、
ユンタは聞き逃しておらず、
必死で笑いを堪えていた。
ロロの叫んだ声が、
洞窟を越えて、
森中に届きそうな勢いで響き渡り、
その声を聞いた村人たちは、
ロロが楽しそうに過ごしている事を、
自分の事のように喜んでいた。
「良かったなぁ……。
ロロちゃん。あんなにも、
楽しく笑い合える人たちに出逢えたんだなぁ……」
一人の老人が涙を流しながら震える様な声で言った。
「彼の者たちの行く末に、女神の天恵に依る、
すべての幸いと祝福があらんことを」
神父が眼を閉じて唱え、
そして祈った。
◆◆
「違う!!
人前だからとか、そういう問題じゃなくて……」
「ロロさんの言う通りです」
シャオがスイの言葉を切るようにピシャリと言い放った。
「さっきのはスイの問題発言です。
人前じゃなくて二人きりだったらしちゃうんですか?
と云う風に解釈しちゃいますけど?
私、期待しちゃいましたけど?」
「ち……、違うんだよシャオ……。
あの……。そういうことが言いたかったんじゃなくて……。
もう、おふざけは終わりにしよう?ね?」
「さあ!スイ!観念なさい!!」
シャオの唇がもうほとんどスイの唇に触れそうな距離にあった。
「ま……!?待って!!
本当に待って!?
もう謝る!謝るから……!
ちょ、ちょ!ちょっとシャオーーー!?!?!?
わ……わ……!舌…?
ちょっ!
んっ…んんっ……?!
……ぷはっ……!
……うわぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!?!
あっ……。
待っ……!!
んっ……ん!?
んんーーーーーーーーーーーーっ!?!?」
「ひぃぃぃぃやあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?
て……、天使と天使が!!
濃厚なのブチかましてるじゃないスかぁぁぁぁぁぁ!?
え!?
そんな!!?
お年寄りも居るんスよぉぉぉぉ!?!?!?」
◆◆◆
そして、長い長い夜が明けて、
洞窟の外には、
既に明るい陽の光が差し始めていた。
何事も起こらなかったかの様に、
夜は閉じていた幕を開けて、
世界は、
とても静かに、
音を立てずに動き出していくのだった。
そうして、世界は常に周り続けている。
我々が、望むと望まないには一切の関わりも無く、
終わりを迎える事になる日など、
まるで、いつまで経っても来ないかの様に。
◆◆◆◆
読んでくれた皆さんありがとうございます!
第二章が、
ここで終わりとなりまして、
次話の投稿から、
第三章に移ります!!
引き続き読んでもらえたら、
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