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第五十一話『仮面の下の事について。』

本日の投稿分、

3話目になります!!




「わーーー……。

もう超エモいんだけどーーー……。泣きそ」


「何事も無くて良かったよ」


「ほんとに……。

皆さん、心優しい方々ですね」


シャオが涙ぐんで、そう言った。


「時にシャオ」


その雰囲気を一変させるように、スイがピシャリと呟いた。


「な……、何ですか?」


「君さ。

イファルに戻ってから、

こっちに着くまでが、

いくら(なん)でも早すぎないかな?」


「…………ぎくり」


シャオは、

あからさまに眼を泳がせながら、

スイから、そっと目線を逸らした。


「ぎくり。じゃないよ……。

もしかして、

イファルに戻らずに、

わたし達を追って来たのかい?」


スイは、

呆れたような顔をしてシャオに聞いた。


「ち……、違いますよ!?

私、ちゃんとイファルには帰りましたから!!」


「それなら、やっぱり早すぎるんじゃないかな?

イファルの都から、この辺りまで、

どう急いだって、こんなに早く着かないでしょ?」


「……あの……。

実は……、父様(とうさま)に……、

お願いしてですね……、

それで……、転移魔法をですね……」


「こんなに夜遅くに?おじさんも寝ていたんじゃないのかい?」


「父様は……、私の言う事を何でも聞いてくれるので……」


「無理矢理起こしちゃったの?

……わたし達はすごく助かったけど、

おじさんには悪い事をしたなぁ」


「わ……、私はもう少し早くが良いと言ってたんですけど!

夕方から、イファル王が屋敷に来られて、

宴会が始まってしまって……、

そしたら、

こんなに遅い時間になってしまって……」


「シャオ。

あまりワガママを言って、

おじさんとおばさんを困らせたら良くないよ?」


「……………………」


シャオは頬を膨らませただけで、返事をしなかった。


「シャオ?聞いてる?」


「聞いてます。

……スイが怒ってます」


「そんなこと無いよ?」


「嘘です。怒ってます」


シャオは頬を膨らましたまま、

スイと視線を合わせないようにして、

そっぽを向いた。


「怒ってなんかないさ。

シャオがイファルから戻るのを待って、

出発すれば良かったかなと思ったんだ」


「…………でも……、それじゃ出発が遅れてしまうから……」


「結果的にシャオを()かしてしまったからなぁ。

わたしは、君の性格をよく知っているんだから、

もっと、予定を擦り合わせるべきだったかな」


「…………それは別に……。

スイは悪くないじゃないですか……。

私がスイに早く逢いたくて、

父様に無理を言ったのは事実ですから………。

私のワガママです………」


「少し意地悪な言い方になってしまったね。

急いで助けに来てくれてありがとう。

おじさんとおばさんにも、

お礼を言わなくちゃ。

イファルに行かないといけないね」


それを聞いたシャオの顔が、

パァッと明るくなった。


「ぜ……、是非是非!!

父様と母様に、スイの話をしたら二人とも、

とてもスイに逢いたがってましたから!!」


「最後に逢ったのはいつだったかなぁ?

わたしも久しぶりに逢いたいな」


「嬉しいです!

それでですね!

私から提案があるんです!!」


「提案?」


「皆さん。

一度イファルに寄りませんか?

イファル王も、

この(たび)の調査隊のパーティーを、

拝見したいと言っていましたし、

それよりも!

私は、最近イファルに出来た、

温泉施設に皆さんを案内したいんです!」


「温泉?

へえ、そういうものが新しく出来ていたんだ?」


「すごくすごく大きな建物なんですよ!

薬草湯や魔法湯もあったりして、効能もすごく良くて!

お店とかレストランも併設してあって、

とても楽しいですし!!

旅の疲れがきっと取れると思います!」


「それは素敵だね。

わたしは行ってみたい。みんなはどうかな?」


「えーーー温泉とか超いいじゃん。行こ行こーーー」


「俺も行ってみたいかな。

イファルって、ウクルクよりも都会なんだっけ?」


「そうだよ。

わたしは、随分前に行ったっきりだけど、

イファルの都は、すごく大きな街だよ」


「私、案内します!!」


「ロロも誘って、了承してくれたら、決まりだね。

次の行き先はイファルにしよう。

旅に出て早速、

痕跡の破片も手に入れたし、

温泉に浸かったって、罰は当たらないよね」


「これなーーー!」


ユンタが得意気に、キラキラと光る破片を取り出して見せた。


「すげー!

超綺麗だな!

これが痕跡かぁ……!」


一向が楽しげな会話を(はず)ませる中、

一人、蚊帳(かや)の外に居たイェンが、

居心地の悪そうな様子て、スイに声をかけた。


「あのーーー……、

スイさん?僕はそろそろ退散しても……?」


「ん?

ああ、イェン。

まだいたのかい?

何かまだ用?」


「……不思議と貴女の、

その感じにも慣れてきました……」


「あ。

この痕跡は、わたし達が貰ってしまっても良かったのかな?

君が持って来たものだろう?」


「………それは、

ツァンイーさんに、一度食わせたものですし、

貴女達が思っている程、魔力も残って無いと思いますよ……。

それで良ければ、差し上げます」


「それなら遠慮無く。

それに手伝ってくれてありがとう。またね」


「いえ……。

それじゃ失礼します……。

もう会わないと思いますけどね……」


イェンは暗がりの中、

岩壁に向かって、

とぼとぼと歩いて行くと、

そのまま溶ける様に消えて行った。


「あいつの事、逃がしても大丈夫だったのか?」


「仕方が無いさ。

村人達も無事だったから、良しとしよう」


「つーーーかさーーー。

ウチさ。

スイって、本当にコトハに似てきたなーーー。

って思ってんの」


ユンタが唐突にそう言った。


「そうかな?もし、本当だとしたら嬉しいな」


「めっちゃ似てるから笑 

そんでさーーー。

あのマスクヤローも誰かに似てんなーーー?

ってさっきから思ってんのーーー」


「やっぱり……。

ユンタさんもですか?

私もです。

どことなく既視感があって……」


シャオも思い当たる(ふし)が有るのか、

深く頷きながら、そう言った。


「え?

そうなのかい?

二人の知り合いに似てたの?」


スイは不思議そうな顔をして、

二人にそう聞いた。


「スイは、わかんなかったかなーーー?

スイと話してる時の、

あいつの、あの感じってさーーー……」


一瞬、

間を置いて、ユンタとシャオが声を合わせて言った。


「あいつミナトじゃね?」「ミナトに似てませんでしたか?」


“ミナト……?

ミナトって……?

誰だっけ……?”


リクは、

ミナトと云う名前に聞き覚えが有った。


「え?

ミナト?

そうだったかな?

私は全然気づかなかったけど……」


スイは本当に驚いており、

とても信じられないと云った様子だった。


「なんとなくな。雰囲気がなーーー」


「私も。なんとなくですけど」


ユンタとシャオは、

そう言って、頷きながら顔を見合せた。


「えぇー……?

でも……マスクしてたから……。

顔もわからなかったし……。

ん?あれ……?

でも、ミナトってどんな顔だったっけ……?」


考えを巡らせながら、スイはブツブツと呟いていた。


「ぽいかな?て思っただけなんだけどねーーー」


「いや……。

言われてみれば、確かに、

あの奇妙なマスクとか、

話していて、

少しむず(かゆ)くなる様な痛々しい感じとか……。

うん……。

ミナトの様な気がしてきたよ……」


「でも、

ミナトだとしたら、

私達の事を知らないふりをしてたんでしょうか?

そうだとしたら、変じゃないですか?」

シャオが首を傾げた。


「そういうところも……、

どことなくミナトらしいよね……。

記憶喪失にでもなっているつもりなのかな?

……彼は芝居じみた言動がたまにあったものね……。

懐かしいな。

この感じ……」


スイは、

うんうんと頷きながら、

次第に、納得し始めていった。


「あのさ。

ミナトって……、誰だっけ?

ごめん。思い出せん」


「あれ?

リクっちに言ってなかったん?

スイの元カレだよーーー」




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?!!!」


綺麗に揃えられた、

リクとシャオの驚愕した声が、

洞窟の中の隅々にまで届きそうな程に、

(やかま)しく、響き渡った。



◆◆

読んでくれた皆さん、

ありがとうございました!!


お話を書いている事も、

投稿している事も、

誰にも言っていないので、

何処かの誰かが、

見ず知らずの自分の書いたモノを、

読んでくれるのって素敵ですね!


自己満ですが、

嬉しい!!


明日も更新します!


おやすみなさいー

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