第三十六話『ロロは吠える。』
今日最後の投稿です!!
読んでくださった皆さんありがとうございます!!
少しでも楽しんで貰えてたら、
とっても嬉しいです!!
おやすみなさい!!
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イェンは高い実力を持ちながら、
決して自分の能力を過信しないタイプだった。
直接の戦闘を避け、
不意打ちを狙ったのはその為だった。
格下だとは考えていないが、
魔力の量では圧倒的に自分が上だ。
単純な魔法の撃ち合いを行えば、
物量で勝てる。
イェンはそこまで考えて、ひとつだけ付け加えた。
(単純な魔法の撃ち合いならば勝てる。けど。
亜人とグラスランナーが居ては、
精霊使いにだけ構ってはいられない)
ユンタがツァンイーとの戦闘で、消耗しているとは云え、
上位魔獣など召喚され、ロロの呪歌も加わってしまえば、
魔力量で上回っていると云うだけでは、
流石に自分の勝ち目は薄い。
こちらにも、痕跡を喰わせて、
能力を底上げさせたゴアグラインドが居るのだが。
他人を信頼しきる事の出来ないイェンには、
ゴアグラインドを頭数に加える事に抵抗があった。
(本来の目的を忘れない様に。
僕の目的は観測だ。こんなところで、
間違っても、命を落とす様な事にならない様にしなければ)
そして、イェンの登場から少し遅れて、
ゴアグラインドも、その場に現れた。
「おるァァァァァァア!!?
女ァァァァァァ!!!
くっちゃべんてんじゃねぇ!!!」
スイは深く溜め息をついて、
耳を塞ぐポーズを取り、顔をわざとらしくしかめた。
「声でけーーよ。
コイツ。さっきまでと雰囲気違わね?
頭悪そうなのは一緒だけど」
「何だと亜人!!!!?」
「あ、あの!!
ゴアグラインドさん!!」
ロロがゴアグラインドにそう言った。
「ああん?!
裏切りもんがぁ!
ノコノコとよくツラを出せたな?ああ?!」
「う、裏切ったのはどっちスか!!?
もう、あなたの言うことは聞かないッスからね!!」
「チッ……!!
ちょっと強えー奴を味方につけたと思ったら、
調子に乗りやがって……!!
二枚舌の嘘つき野郎が……!!
そんなこと事だから、てめえは誰にも必要とされねえんだよ!!」
ロロは一瞬怯んで、下を向いて俯いた。
その様子を見た、ユンタが舌打ちをして、
恐ろしい程に凶悪な冷たい目で、
ゴアグラインドを睨みつけた。
「てめぇ、今なんつったコラ?
おめーらみてーーなゴミが、
ロロ子の視界に居るだけで不愉快なのにさーーー……。
これ以上、ロロ子にちょっかいかけて、
ウチをむかつかせんなよ?
ダークエルフのガキ。殺すぞ?」
「ああ!? このクソ亜人が!!
やってみろよ!!」」
ゴアグラインドに凄む、ユンタの迫力に、
リクは怯えた。
“怖ッッッ!!?
何この人ッッッ……?怖いッッッ!”
「ユ、ユンタちゃん!
ありがとう……。でも大丈夫ッス!!
もーーー! こんな奴になんか!
自分!! ビビッてやらないッスから!!!」
ロロがニッと笑って、
自分にそう言うのを聞いて、
ユンタは堪らずに、ロロを抱きしめていた。
「ウチ………この子連れて帰るから!!!!」
「動物じゃないんだから。それに。
ロロはもう私たちのパーティーの仲間でしょ?」
スイがニッコリ笑ってそう言った。
ロロはスイの言葉を聞いて、
大声を上げて飛び上がってしまいそうだった。
身体の内側から押し寄せる、感動に、
打ちのめされてしまいそうだった。
(ユンタちゃんには、絶対返しきれないくれないくらいの、
恩があるんス!!! スイちゃんも、リク君も、
仲間だって言ってくれたッス……!!
この人達の為に、頑張んなきゃ……!!)
圧倒的な多幸感で、ロロは胸が締め付けられそうで、
半ばハイになった状態で、
ゴアグラインドをキッ、と睨みつけ、
人差し指を突きつけて言い放った。
「村の人たちを返してッス!!
皆の事。疑ってごめんなさいって、
ちゃんと謝らなきゃいけないんス!!」
ロロの眼の奥には、
産まれてからというもの、一度も感じたことの無い、
強靭な意志が燃え盛るように、満ち溢れていた。
「誰が返すかバカが!!!
人間なんざ、糞ほど沸いて、あちこちに居るだろうが!!!
あんな年寄り連中に、いつまでも執着してんじゃねえ!!
それに!!
人間共にゃ、嫌な思い出しかねぇっつってたろーが!!」
「そーゆー問題じゃないッス!!」
──人間達は怖い。
優しい言葉で近づいて来る人間達は、
いつも自分を裏切って、傷つける事しかしない。
酷い言葉で、口汚く罵られ、
住む所も追われ、
今まで、
自分は虐げられるばかりで、
いつも泣いて逃げ回ってばかりだった。
しかし、
別に、やり返して、
復讐してやりたいとも思っていない。
自分には逃げ癖がついてるのかも知れないが、
戦ったり、傷つけたりは、苦手だ。
──でも。
「そーゆー問題じゃないんッス!!
ゴアグラインドさん!!!
泣いて謝るんなら!! 今のうちッス!!!
今日は絶対……! 絶対に絶対に逃げないッスから!!」
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