第三十二話『女の子に肩を借りるという事。』
おはようございます!!
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「ッッッ!! ガァァァァァ!!? ングァァァァァッッ!?」
リクの叫び声を聞いて、
ゴアグラインドは悦に入った表情を浮かべていた。
そして傷口を踏みつける脚に体重をかけて、
踏みにじる様に、更に強い痛みをリクに与えた。
「リク!!」
───『流線の血飛沫』
スイがリクを助けようと、
ゴアグラインドに立ち向かおうとしたが、
イェンの放った散弾銃の様な攻撃魔法に依って、
それを阻まれてしまった。
「邪魔ばかりを……。
当てるつもりが無いのか、ただ単に下手なのか、
虚仮威しのつもりなら、引っ込んでてくれ」
「魔法が使えないからと云って、体格差の有る男に女性が向かって行くのは、流石に見ていられませんから」
「要らぬ気遣いだね。
お陰で君の豆鉄砲分は、魔力を無駄遣いしてもらえたよ」
「尤も、貴女が普通の女性だとは思っていませんがね」
イェンはそう言うと、魔力で大気中の水蒸気を急激に冷やして
液体化させた水で、スイを囲う様に無数の矢を創り出した。
「申し訳無いですが、次は外しません」
「こんなにも弾幕を張っておいて、外す方が難しいんじゃないかな?」
「……。減らず口で僕を挑発するのは得策ではありませんよ?」
「君の方こそ、こんなところで魔力の無駄な消費は止しておいた方が良いと思うけどね」
「貴女が無力なのは今だけの間だ。
魔力が戻れば、やられてしまうのは僕の方かも知れません」
「やれやれ。
ただの間の抜けた情報収集係では無いみたいだね。
隙のひとつくらい、見せてくれたって良いんじゃないかな?」
「苦手なんですよ。
チマチマとした地味な作業が。僕の本来の役割は戦闘ですから」
◆◆
「オラァッッッ!!!
痛ェか!!? 散々ビビらせやがって!!
どうやら、てめえは本当にただの雑魚だったみてえだな!?」
「いッッッ痛ェェェッッッッッッ!!!!」
「おい!! イェン!!! 女を殺すんじゃねーぞ!!
そいつは俺がやるからよ!!!」
「そんなに悠長にしていられませんよ。
そちらの男は戦力でも何でもありません。
痛めつけるのは、もう良いでしょう」
「リク!!
そんなに大袈裟に痛がるんじゃない!! 相手の思うツボだ!!」
「バカッッッ!!
大袈裟じゃねーんだよ!? マジで痛ェッッッ!!」
「チッッッ!!
だとよ?てめえは、あの女を殺した後だ。
逃げんなよ、っと!!!」
ゴアグラインドは脚を大きく振り上げると、
リクがもう動けなくなる様に、
脚の骨を砕いてやるつもりだった。
その刹那。ゴアグラインドの身体に何かが微かに触れた。
───『雷』
───バチバチバチバチバチッッッ!!!!
ゴアグラインドの身体に触れたのは、
スイが投げつけた簡易発動魔法の魔法石だった。
それが光を放つや否や、落雷の様な音を立てて、
電撃の魔法がゴアグラインドの身体を貫いた。
即座にゴアグラインドは気を失い、
白目を剥いて仰向けに勢い良く倒れていった。
「間に合って良かった」
スイは安堵していたが、
魔法石を投げつけた瞬間に、イェン魔法を放ち、
スイの肩には水の矢が突き刺さってしまっていた。
しかし、スイはそれに怯む様子も無く、
手早くイェンにも魔法石を投げつけると言葉を発した。
───『雷』
魔法が発動して、イェンも雷の餌食になったかと思われたが、
彼の身体は溶け出して、形を成さなくなると、
すっかり液体に変わってしまって地面に撒かれた。
「居なくなったな」
最初から魔法で身代わりを創って、
この場に寄越したのだろう。
魔力の探知は未だ出来ないが、
周囲に気配はまるで感じられなかったのだ。
「リク。大丈夫?
また助けるのが遅くなってしまって、ごめん」
「ゼェーーーッッッ……。ゼェーーーッッッ……。
し……心配すんな……。脚踏まれただけだから……」
「よく頑張ったね。
それに、守ろうとしてくれてありがとう」
「おう……。どういたしまして……。
お前こそ大丈夫か……?」
「わたしは平気さ。
さっきの怪我に比べたら、とても浅くて大した事ない」
───ズドォォォォォンッッッ!!!
攻撃魔法による爆発が、遥か遠くの音の様に聴こえ、
ユンタとツァンイーの戦闘が始まったのだとスイは思った。
(幾らなんでも、遠すぎる。
多分、幻術の魔法で、森の広さを見誤らせる幻を見せられている。
ゴアグラインドが気を失っているのに、解けないと云う事は、
イェンと云う男の仕業だろうな)
「急ごう。
どのくらい時間が要るのかわからないけど、
ユンタも手こずる筈だから、助けに行かないと」
「おう……!でもちょっと肩を貸してくれ……。
痛くて歩けないかも……」
「仕方がないなぁ。よいしょ」
スイはリクに肩を貸して立ち上がらせると、
戦闘が行われているであろう、
音の聴こえて来た方角を方角を頼りに、
ヨチヨチと歩き出した。
「重い……。君ね。少しは鍛えた方が良い。
せめて女の子に肩を借りなくても済むくらいに」
「わ……悪いって思ってるわい!!
それより……。お前、本当に奥の手隠してたのかよ!?
さっさと使った方が、二人ともこんなにボロボロにならなかったんじゃない!!?」
「仕方ないじゃないか。
ギリギリで使うから奥の手って言うんだから」
「嘘だろ。本当は痛過ぎて、ちょっとだけ泣きそうになってたんだからな!!?」
リクは不満そうに、そう言っていたが、
肩を貸してくれているスイが、
何とか引き摺る様に歩いている姿が隣に居ては、
「ま……まぁ、良いけどよ」
と言わざるを得なかった。
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