第三十一話『卑劣な要求。』
今日最後の投稿ですー
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「ゴラァァァァ!! てんめぇぇぇ!!!
嘘ばっかりつきやがってぶち殺すぞゴラァァァァ!!」
───『歪曲した衝撃波!!』
ゴアグラインドの狂った咆哮と共に、
魔法で圧縮された強烈な音の塊が衝撃波の様に放たれた。
鼓膜を裂いてしまいそうな酷い音量と、
衝撃波の圧力に、スイとリクは堪えきる事が出来ずに、
数メートル程度後方に吹き飛ばされていた。
スイは脚を負傷したリクを庇う様な体勢のまま、
勢い良く地面に叩きつけられた。
「……痛い。
これが彼の魔法か。
やれやれ。上手く口先で誤魔化せたと思っていたのに。
あのイェンとか云う男に、余計な水を差されたよ」
「すみませんね。
一応、ゴアグラインドさん達のフォローをするのが役割でして」
「ふざけた仮面をつけている癖に、職務には忠実と云う訳か」
「ふざけた仮面……。価値観は人それぞれですから」
「それはそうだね。
しかし、この下品な男のフォローをしなければならないと云う、君の職場の倫理観は一体どうなってるんだ」
「それは僕に言われても」
「マジで嘘だったみたいだなぁ……?!!
てめぇ……よくも俺のことを虚仮にしやがったな……?!!」
ゴアグラインドがスイに掴みかかろうとしたその腕を、
飛び出す様に間に割り込んだリクが掴んで遮った。
「……ああん?!!
てめぇコラ……!!
ガキが調子乗ってんじゃねーぞ?!!」
「う……うるせーーー!!
お……お前、魔法使えなくなってる女を痛めつけて、
なにが面白いんだよ!?
や……やるなら正々堂々戦えよ!!」
「正々堂々だぁ……?!!」
ゴアグラインドの殺意を孕んだ目に、リクは盛大にたじろいだ。
「ひぃッッッ!!」
「俺は殺すのが好きなんだよ!!
弱ぇ相手をいたぶっていたぶって、
泣き喚いてるところをぶち殺すのが最高になぁ!!
端から、てめぇらと勝負なんてしてねぇんだよ!!」
「う…うう……」
ゴアグラインドの気迫に、
リクは掴んでいる腕を思わず離しそうになった。
そうして弱気になったリクを見て、
ゴアグラインドは少し冷静さを取り戻し、
彼の人間性を構成する、残忍な嗜虐心に依って、
気分が高揚してくるのを感じていた。
「許して欲しいか?
てめぇがどうしても許してくれって頼むんなら、
考えてやらねぇこともねぇぞ?」
ゴアグラインドはスイを見て、ニヤニヤとした下卑た笑みを浮かべた。
「女。てめぇなかなかツラは良いよなぁ?中身はクソだけどよ。
そうだなぁ……。
おい、ガキ。てめぇに選ばせてやる。
てめぇと女、助けてぇ方を選べよ。
どっちか一人だけは殺さねぇでおいてやる。
ただし、てめぇが女を助ける為に死んだら、
その後はこの女は俺のオモチャにしてやるけどなぁ?!!
ギャハハハハハ!!」
「気持ちの悪い男だ……。リク。もう無理しなくて良いよ。
わたしは大丈夫だから」
「ふ…ふざけんなよ……」
「ああん?!!
聞こえねぇなぁ?さぁ、選べよ?
てめぇと女どっちを助けてぇんだ?」
「クソ……。コイツマジで腐ってやがる……!!」
───ドゴッッッ!!!
ゴアグラインドがリクの腹を勢いよく蹴り上げ、
痛みで呼吸が一瞬止まった。
「おェェッッッ!!?
ゲホッ! ゲホッ!」
「褒めてくれてありがとうよ」
ゴアグラインドはそう言って、
屈み込んだリクの髪を乱暴に掴むと、
無理矢理に立ち上がらせた。
「さぁ?どうするよ?
時間もねぇから早く選べよ?
てめぇが選べねぇんなら俺が選んでやるからよ」
「ゴアグラインド。
リクから手を離せ」
「お前は黙ってろよ。
俺はこのガキに訊いてんだからよ」
「悪趣味だ」
スイは心の底からゴアグラインドに嫌悪感を感じていた。
顔を見るだけで胸がムカムカとするほどに。
「ガキ。早く決めろよ?」
「……選べねぇよ……。選べるわけねぇだろ……!」
「ククク……!
そりゃそうだよなぁ?」
「……お……俺を殺すだけじゃダメなのかよ……?」
「ダメだなぁ。俺の気が済まねぇだろうがよ」
「……た、頼むよ。……スイにだけは、何もせずに助けてやってくれよ……」
「なんだぁ?俺の提案が呑めねぇってのか?」
「呑めるわけねぇだろ……。
頼むから俺を殺すだけで、さっさと帰ってくれよ……」
「てめぇ……。
ガキが、女の前でいい格好しやがって……。
人に頼み事をする態度でもねぇよなぁ?」
「……わ……わかったよ……。
お……お願いします。お願いしますから、
アイツは殺さないでください……。お願いします」
「ダメだな。許さねぇ。安心しろよ?
女はオモチャにした後、きっちり殺してやるからよ?」
「なんなんだよ!?
どうしたらいいんだよ!?」
「情けねぇ野郎だな……。
てめぇが俺と戦うっつー選択肢もあんだぞ?」
リクは拳を固く握り締め、ゴアグラインドを睨み付けた。
この傲慢で不愉快な男を、本当に殺したくて仕方が無かった。
「弱ぇってのは罪だよなぁ」
ゴアグラインドはそう言うと、
まだ血の流れるリクの脚の傷口を容赦無く踏みつけた。
「ッッ!!? ギャァァァァァァァァッッッ!!!?」
リクは気を失いそうな痛みに、
産まれてから今までに出した事の無い様な声で悲鳴をあげた。
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