第二十九話『虚実を織り混ぜるという事。』
こんばんわ!!
今朝の投稿の続きになります!!
また後程、投稿しようと思ってますのでよろしくお願いします!!
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“あれ……?スイ、ひょっとして……笑い堪えてないか……!?
嘘だろ!?
さっきから、ハッタリだけでやり過ごしてんのって、
まさかコイツの事おちょくってるだけ!?
ただのドSかよ!!?
この状況でどんなメンタル!!?”
「リク。
そろそろ、君のスキルを御披露目してみるかい?」
“こっちに話振ったーーー!!!?
嘘だろ!?
頭おかしいのか!?”
「んだと!!? てめぇ……!
本当にそんなガキに俺がやれると思ってやがんのか!?」
「勝算も無しにこんな事を言うわけないだろう?
なにせ彼は、ニホンから来たんだよ?
この世界で、ニホンの人間がどれだけ深く歴史に関わってきているかは君も知っているだろう?
女神様の伝承にも出てくるくらいなんだよ?
彼らは何か大いなる意思に選ばれた特別な人種なんだ。
この世界の我々には計り知れないほどに」
「クソが!!
ハッタリだ!!」
「ハッタリかどうかは君自身が確かめるべきだと思うなぁ。
君達は既に間違いをいくつも犯しているんだよ。
先ほどの攻撃で君の仲間の力量は把握させもらった。
魔法封じが解除されるまでの時間はあとどのくらいかな?
わたしたちのスキルを正確に把握出来ていないから、
リクが脅威である可能性を拭いきれず、
君は更に後手に回るしかなくなったね」
「う……嘘吐けこの野郎!!」
「それと、わたしの友達のユンタ。
君の仲間が追跡しただろうけど、
残念ながらユンタの相手にしては役不足だ。
ユンタのことを甘く見ていたね。
君たち二人がかりで戦うべきだった。
何故なら彼女はとても強いから。
彼女が君の仲間を倒して、
わたしたちと合流してしまえば、圧倒的に不利なのは君のほうじゃないかな?」
ゴアグラインドはその言葉に怯み、少しだけ後ずさった。
「更に残念ながら、もうひとつあるんだ」
「な、なんだ!!?」
「君たちに情報を流した人物がどうやって情報を手に入れたかはわからないけど、
おそらく、わたしたちをつけ回していたわけではなさそうだね。
正確な情報を手に入れて君達に与えてやれてなかったみたいだ。わたしがそう思うのは、
なんだか、どれもこれもあちこちが抜け落ちているところが多いと感じてしまうからなんだけれど」
「まだ、何か有るのかよ……!!?」
「わたし達に、もう1人仲間がいたとしたらどうする?」
「そんなのは聞いてな……!!」
ゴアグラインドはそう言いかけて、言葉を呑み込んだ。
その彼の態度から、
スイの言う通り、彼らの情報源がスイたちの情報を、
正確に把握しきれていないという事実を更に確信させてしまうこととなった。
「やっぱりね。最初から変だなと感じていたんだ。
君ともう1人の仲間は格闘戦は得意かな?
もし、そうでなければ魔法使いの二人組で、
わたしたちに挑むのは少し無謀だよ」
ゴアグラインドはそれを聞いて辺りを警戒するように見渡した。
そして遠くの方で魔法による爆発音が聞こえた。
どうやらユンタとツァンイーが戦闘を開始したようだった。
(ツァンイーの野郎、始めやがったか……!
こっちの状況も知らねえで……!
ハッタリかどうか確かめる時間も余裕もねえ!!
早いところツァンイーと合流した方が得策だ!!)
ゴアグラインドは急いでこの場を離脱し、
ツァンイーの元へ向かおうとした。
“に、逃げた!
マ…マジか?
ハッタリの脅しだけでアイツをビビらせたぞ?!!”
リクは驚きと尊敬の眼差しをスイに向けた。
スイは口元を軽く微笑ませ、リクに言った。
「リク。
まだ終わってはいないよ。
ユンタもまだ魔法が使えないだろうから、
彼を仲間のところに合流させないようにしなくちゃならないからね」
「で…でも一体どうすんだよ?」
「あるじゃないか。君のスキルが」
スイはニヤニヤとしながらリクの肩をポンポンと叩いた。
「はぁぁぁぁあ?!お前…本気で言ってんのか…?!」
「わたしは本気で言ってるよ。
ポーションを飲んで魔力も回復しているし、
もう一度なら発動出来るだろう?頼りにしてるよ」
「で…でもさ!」
「いいかい?
怖がらなくていい。
真意はわからないが、
あのロロという子が彼らの仲間だった以上、
今のユンタが不利な状況になっている可能性はものすごく高い。私たちに出来ることと、やらなければならないことは、
彼をうまく足止めすることだよ」
「そ…そりゃそうなんだけど……」
「さっき、拝借したスキルがあるだろう?
あれを早速使ってみたらどうかな?」
「つ、角ウサギの!?」
「角ウサギの」
「でも、弱い魔物なんだろ!?
役に立たなかったらどうするんだよ?」
「落ち着いて。
君はスキルを発動させるのに集中していたらいい。
さっきも言っただろう?
わたしたちは自分のやるべきことをやるんだ。
足止めをする事が目的なのだから、倒す必要はないんだ」
スイは諭すようにリクに言った。
スイの声には不思議と心を落ち着かせる、
惹き付けられるものがあるとリクは思った。
“めっちゃ気が引ける……!!
けど……。コイツが言うと、そんなもんかなって思っちまうなぁ……”
リクはスイの眼を見て、何も言わずに頷いた。
───『技能賃……!!』
リクがスキルを発動しようとした、その瞬間だった。
逃走を図るゴアグラインドの前に、
仮面をつけた白づくめの男が突然現れ、
先程からそこにいたかのようにゴアグラインドに声をかけた。
「ゴアグラインドさん。お疲れさまです」
抑揚の無い、無機質で冷たい声だった。
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