第二十七話『戯言と末路。』
本日投稿の最後になります!!
読んでくださった方、ありがとうございました!!
明日も投稿しますので、よろしくお願いします!!
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「もういい。
こんな相手に時間のかけ過ぎだ。
魔族は大体嘘をつくが、この女は特に酷い。
さっさと殺そう」
痺れを切らしたトナが、苛立しそうに言った。
「やめろ!!!
ツァンイーは嘘なんてついてない!!
ツァンイーを殺したって意味が無い!!!
とツァンイーは思う!!」
「黙れ。もう口を利けない様にしてやる」
「ひぃぃぃぃ!!!」
「トナちゃん待って待って!
殺しちゃったら、痕跡はどうなんのさーー?」
「知らん。
痕跡は世界に一つきりと云う訳でもないだろう。
コイツにくれてやれ」
「ダメだってーーー。
ウチら、それ探す為に旅に出てんだから」
「何も人間の言う事なんぞに、
大人しく従ってやる義理もないだろう?」
「にゃはは。
人間の為じゃねーーよ。
スイの為だから」
「ええ。ええ、ええ。
やっぱりトナカイは気が短くて仕方がありませんなぁ」
「腹立たしい。
俺はお前も含めて、
時間が無限に有ると思っている連中が嫌いだ」
「ええ。ええ、ええ。
そんな事ァ、誰も言ってませんがね。
さてと。
そう云う訳で、トナカイが急かすもんだから、
いい加減にケリをつけなきゃなりませんなぁ」
「く……来るな!!
それ以上近づいたら舌を噛む!!
死んでやる!!
そうしたら痕跡も手に入らないぞ!!
とツァンイーは思う!!」
「なるほどなるほど。
トナカイと違って、何も殺そうって訳じゃあ無いんですがね?
ええ、ええ」
「嫌だ!!
お前に何かされるくらないなら、死んだ方がマシだ!!
とツァンイーは思う」
「ええ。ええ
貴女、動物とかに興味の無いタイプでしょうか?
この愛くるしい外見の、
あたしが何をしたって云うんでしょう?
ええ。ええ」
「ど……どこがだ!!?
お前みたいな、おぞましい魔獣は見た事が無い!!!
ベラベラと口が達者で、気持ちが悪くて仕方がない!!!
おい!!
亜人!! さっさとこのバケモノを引っ込めろ!!
とツァンイーは思う!!」
「はいはいはい。
滅茶苦茶な罵詈雑言ですな。
ええ。ええ、ええ」
「何でオメーが命令すんだよ」
ユンタはこれ以上無い程に呆れた表情だった。
「クソ!! クソ!!
お前なんか召喚する魔獣が強いだけだ!!
魔法さえ使わせなければお前なんて弱い!!
とツァンイーは思う!!」
「そーーかもね。
でも。魔法使いなんてそんなもんだろ?
どーでもいいんだけど?」
「お前の仲間の女もだ!!
今頃はゴアグラインドに殺されているぞ!!
アイツは女を殺すのが好きだ!!
散々いたぶって、泣き喚いているところを殺すんだ!!
ざまあみろ!!
とツァンイーは思う!!」
「きっしょ。スイがあんなのに負ける訳ねーーだろ。
適当な事言って惑わそうとするとことか、
ほんとに救い様のねー女だな。
さて。
フーちゃん。ぼちぼち終わらせまっか?」
「ええ。ええ、ええ。
術式だけ、綺麗にぶち壊してみましょうかね」
「や……やめろ!!
イェンの魔法は強い!!
お前に解ける訳が無い!!
そんなに巧くいく訳が無い!!
とツァンイーは思う!!」
「あたしら魔獣ってのはですな」
フーは口調を少し変えて、
落ちている枯れた木の枝を手に取った。
その枝はみるみる間に芽吹いていき、
枝分かれを繰り返してどんどんと大きくなって、
巨大なハンマーの形状に変化していった。
それをフーが持ち上げて肩に載せると、
相当な重量なのだろうか、
地面が少し揺れたように感じた。
「魔力って云うモノに、
大変深く関わって産まれた存在でしてねぇ。
そもそもが、魔法で創られてるんですから、
そんじょそこらの人間や魔族なんかより余程、
その仕組みも、成り立ちも、よく理解しているもんでしてね」
「ま……待て!!!
亜人!! 頼む!!
頼むから助けてくれ!!
とツァンイーは思う!!」
「無理だってーーー。
そんじゃな。ロロ子の事、傷つけた分、
これでチャラにしてやっからなーーー」
「や、やめろ!!やめた方が良いとツァンイーは思う!!」
「多少、魔法に明るい人間の、
小賢しい手品のタネなんざ、
ちゃんちゃら可笑しくて、笑っちまいますなぁ!!!」
「ぎィやァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
ツァンイーの絶叫が虚しく響き渡り、
巨大なハンマーは凄まじい速度で勢いをつけながら、
大気を裂くような音と共に振り抜かれ、
ツァンイーの身体を真正面から打ち抜いた。
───『大樹の聖鎚!!!!』
────スコォーーーーンッッッ!!!
と、小気味よい音がして、
ツァンイーの身体は、木々を薙ぎ倒しながら吹き飛んで行った。
「ええ。ええ、ええ。
おあとがよろしいようで」
「いや、意味わかんねーーから。
痕跡無事なのかな?
探しに行かなきゃなんないねーーー」
「やっぱりフーに任せたのが間違いだ。
面倒事ばかり起こす」
忌々しげにトナは呟いた。
◆◆
「ツ、ツァンイーさん死んじゃったんスか?」
薙ぎ倒された木々を辿って行くと、
森の奥深く、一際大きな木に引っ掛かるようにして、
ツァンイーが白目を向いて倒れていた。
「さっきのは、体力をギリッッッギリまで削る攻撃だから、
死にはしてないと思うよーーー。もう動けないだろーけど」
ユンタがロロにそう答えた。
既に術を解除して、
召喚した魔獣たちは還していたが、
魔力を消費し過ぎた為、身体に力が入らず、
後先考えずに召喚術を使った事を反省していた。
(でも、ロロ子に、良いとこ見せたかったんだよなーーー)
ツァンイーは口から泡を吹いており、
その口元にはダラリと垂れ下がる舌の他に、
とても小さく、綺麗に光る鉱石の様な物が飛び出していた。
「あーーー!
これじゃね!? ちっっっっちゃ!!!
こんなんであんだけ魔力が上がんのかよーーー」
「術式が解けたんスね!」
「うえーーー。唾ついてらバッチぃ」
「それにしてもユンタちゃんすごいッス!!
あんなに強い魔獣さんたちとたくさん契約してるなんて!!
マジかっこいいッス!!」
「えーーー照れるーーー」
「しかも魔獣さんたちみんな優しくて可愛かったスねー!
チャガマくんのモコモコした手触りが正直たまんなかったッス」
「ウチはロロ子とみんなが仲良くなれて嬉しいよ」
ロロはそれを聞いて、
嬉しさがこみ上げてきて、
口元が緩むのをどうしても抑えきれなかった。
「あ、あのユンタちゃん!」
「なにーーー?」
「本当にありがとうッス!!」
「良いってーーー。
ロロ子に良いとこ見せたくなっちゃって、
勝手に張り切っただけだからーーー」
「ううん、それだけじゃないッス!
あの……とにかく本当にありがとうなんス!
ユンタちゃんの全部の全部にありがとうを言いたいんス!」
「あはは。
ロロ子がまじクソ可愛いんだが?
こっちこそ助けてくれてありがとーーー。
これからもよろしくねーーー」
「……はいッス!!!!」
ロロは本当に幸せそうな笑顔を見せた。
それを見たユンタも自然と顔が綻び、
顔がニヤけてしまうのを我慢出来ず、
二人とも、しばらくの間、
そのまま声を出して笑い合ったままでいた。
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