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第二十五話『魔術師殺し。』

おはようございます!


昨日の投稿(23話、24話)

の続きになります!!


本日は3話投稿します!


また夜に更新しようと思ってますが、

時間帯がバラバラですみません!


評価つけてくれた方、本当に嬉しかったです!!

ありがとうございました!!




「死ね!

死ね死ね死ね死ね死ね死ね!

ツァンイーが嫌いな奴はみんな死ねば良い!

とツァンイーは思う!!」


ツァンイーは唾を吐き散らしながら、悪態を()いて喚き続けた。

炎に巻き込まれないように、逃げようと思っているのだが、

魔力を使い果たしてしまって思う様に身体が動かないのだ。


「凄まじい威力ですねぇ。冥府の炎を放つ、

下位古代語魔法(ローエンシェント)ですね。

これ程強力な魔法を使えたとは。

畏れ入りました。

このまま燃え広がっていけば森を殆ど焼き払ってしまいそうだ」


イェンがツァンイーに歩み寄りながらそう言った。


「ゼェ……ゼェ……。

ツァンイーの魔法で1番強い魔法だ。

森ごと、あいつらも全部消してやる。

とツァンイーは思う」


ツァンイーはニヤリと笑って得意げにイェンに返事した。


「そうですか。でも、それは少し難しいかもしれませんね」


「?」


轟音を立てながら燃え広がっていく炎の勢いが、

ほんの少しだけ弱まったかと思うと、

その後に割れるようにして炎がどんどんと分断されていき、

何かを中心にして吸い込まれるようにその勢いを縮めていった。


「バカな?!

燃やし尽くしても消えない冥府の炎だぞ?!!

絶対に変だ!! とツァンイーは思う!!」


ツァンイーが驚き、

吸い込まれて消えていく炎の中心に見たのは、

先ほどの奇妙な熊の魔獣だった。


「なるほどなるほど。ええ。ええ。ワロタ」


毛先の一本すらも燃えた様子が無いフーの姿を見て、

ツァンイーは途方も無い絶望を感じていた。


「う、嘘だ!!?

魔力全部使ったんだぞ!!?

なんでだ!!? なんで死んでない!!?」


「『魔術師殺し(ウィザードスレイヤー)』とも呼ばれていましてね。

古代魔獣の中でも特に古くから存在し、

始祖の魔物に等しい力を持つと云われるのが、

あのナードグリズリーです。

女神の産み出した魔物と同等の力を持っている魔獣ですから、

生半可な魔法などは効かないでしょうね。

そしてご覧の通り彼は魔法を吸収して喰らう性質を持っている。これは僕たちには分が悪いですね。

僕が戦う事にならなくて本当に良かった」


「お前知ってたのか!!?

知ってて何故ツァンイーを戦わせた!!?

とツァンイーは思う!!!」


「貴女が勝算が有ると言っていたからですよ」


「ふざけるな!!!

魔法が効かない相手に魔法使いがどうやって勝つんだ!!?」


「そんな事、僕は知りませんよ」


「う……裏切ったな!!?

クソ人間!!! 

最初から胡散(うさん)臭い奴だと思っていたんだ!!!

とツァンイーは思う!!」


「僕も最初から、頭の悪い魔族だな、と思っていましたよ」


「クソ……!! クソ……!!

殺してやる!! 必ず殺してやるからな!!!」


「やれやれ。

八つ当たりにしても酷いですね。

追い詰められていたところで回復までさせてあげたのに」


「お前、自分が戦うのが怖くてツァンイーに戦わせたな!?

とツァンイーは思う!!!」


「そうですよ。

あ。立て替えたハイポーションの代金は、

ツァンイーさんの給与から天引きしてもらいますから。

もう助からないでしょうから、お金は必要ないでしょうけど」


イェンはそう言って、

ツァンイーを置いてアッサリと踵を返すと、

森の奥へ歩いていった。


「イ、イェン!!

待て!! 待ってくれ!! 

ツァンイーも連れてってくれ!! とツァンイーは思う!!」


ツァンイーは泣き叫びながら懇願したが、

そのまま何処かへ消えてしまったように、

イェンからの返事はもう無かった。


「ええ。ええ、ええ、ええ。

魔族のお嬢さん、絶体絶命ですな。ワロタ」


周囲を燃やす炎をあらかた吸収し尽くしてしまったフーは、

満足気に語り出した。


「ええ、ええ、ええ。

これは私の推測ですが、貴女なにやら懐かしい匂いがしますな。ええ、ええ。

あたしなんか古いバケモンですから、

女神なんてハイカラな呼び方、

なかなかしっくり来ないもんですが。

女神の加護にあたるものを持ち歩いてはいませんか?

ええ、ええ、ええ。

そうだとすると、

下級の魔族にしては妙に強い魔力を持っているのが証明出来るんですがね」


フーは早口でまくしたてながら、

ジリジリとツァンイーとの距離を詰めていった。


「や、やめろ!来るな!!とツァンイーは思う!!」


「はい、はい、はい。

なるほどなるほど。

貴女、さっきの男から何か妙な物を飲まされたような憶えはありませんか?

女神の力の残滓を身体に入れられてますなぁ。

それで魔力が著しく底上げされておるんですな。

ええ、ええ、ええ」


「し、知らない!!

ツァンイーは知らない!! とツァンイーは思う!!」


「ええ、ええ、ええ。

巧妙な術式で巧く隠されておりますからなぁ。

あたしくらい鼻が効かないとわからないでしょうな。

ええ、ええ。

ユンタさん、どうしますか? ええ、ええ」


フーは後ろを振り返って、ユンタにそう言った。


辺りを焼き払おうとしていた炎が消え去り、

燻った煙が晴れていくと、

大きな角をいくつも生やした巨大なトナカイの魔獣がいて、

見下(みお)ろす様にしながらツァンイーを睨みつけていた。


「ま、また新しい魔獣を召還した!!?

三体目だぞ!!? 絶対に嘘だ!!?」


ツァンイーが悲鳴のような声でそう叫んだ。


◆◆

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