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第二十三話『ナードグリズリーのフー。』

こんばんわ!


本日は2話続けて投稿します!


それからブックマークつけてくれた方ありがとうございました!

めっちゃ嬉しかったですー


明日も投稿しますので宜しくお願いします!!!


召還された魔獣が空に向かって低く唸ると、

辺りに居た鳥や獣は、逃げる様にしてあちこちに飛び出して行った。


手足も短く、寸胴なシルエット。

熊の姿の魔獣は見た目こそ間抜けだったが、

凶暴である事の証の様に魔力を撒き散らし、

威圧的な存在感を放っている。


現れた魔獣の姿にツァンイーは震え上がっていた。

小さな身体をしているが、強靭そうな肉体を持ち、

爪や牙は鋭く、自分の身体など容易に引き裂いて喰い破られてしまいそうに見えるのだ。

何よりも近くにいるだけでも押し潰されそうになる魔力を漂わせているのが恐ろしくて仕方がなかった。



魔獣は高い知性を持った魔物だ。

魔物と違って魔法を操る。

どの魔獣も大体が強い魔力を持っているが、

今までにツァンイーが見た事のある魔獣とは桁違いに強かった。


この怪物は自分がどうにか出来る相手では無い。

どう考えようが手遅れだが、

さっさと逃げ出しておくべきだったのだ。


「よ。久しぶり。フーちゃん」


魔獣はユンタの声に反応すると、

チャガマと同じく人語を使って喋り出した。


「ええ。ええ、ええ、ええ、ええ。

ご無沙汰ですお世話になっております。

呼び出してくれて、感謝ですな。ええ、ええ、ええ」


「うるさ!相変わらずだなーーー」


何故か細かく相槌を入れて、

頷きながらペラペラと饒舌(じょうぜつ)(まく)し立てる魔獣の姿はツァンイーとロロを唖然とさせた。


「か……かわいい?んスかね……?なんか……おじさんみたいッスね……?」


「フーは僕たちの中でも1番長い時間を生きてる古い魔獣。

昔に較べて丸くなったけど、ああ見えてものすごく強い」


「そ、そうなんスね……!

見た目によらないッスね……。すごいお方なんスね!!」


「ええ。ええ、ええ、ええ、ええ、ええ。

ユンタさん。お疲れ様です。ええ、ええ、ええ」


「あーーーーもーーうるさい!」


「ええ。ええ。お久しぶりなもんで。

ついつい喋り過ぎちゃいますなぁ。ええ。ええ」


「いっつもじゃねーか。あのさ!聞いて!

呼び出していきなり悪いんだけど、

あそこに居る奴ブッ飛ばしてーーんだけど、手伝って!」


「あーーー。はい、はい、はい、はい。

なるほどなるほどなるほど。

それで、どちらの方ですかね?

チャガマの後ろにいらっしゃる、あの方でしょうか?」


「なんでだよ!

どーー見ても仲間じゃねーーーか!あっちだよあっち!!」


「ええ。ええ、ええ、ええ、ええ、ええ。これは失念。

大変失礼しました。

チャガマの後ろの方……。

お初にお目にかかりますな。ええ。

幼女にしか見えませんな……。

しかし、良き。

推させていただきます。

ええ。ええ、ええ、ええ」


「あー!もーーーいいからあっち見ろって!!」


ユンタに促されたフーが、

ようやくツァンイーの方を向いて、

仔細を点検するように頭から爪先までジロジロと眺めた。


「はいはいはいはい。

あそこの方?あそこの魔族の?

………ええ。ええ、ええ、ええ、ええ、ええ。

魔女っ子。

ビキニ。

ムチムチ。

はいはいはいはいはい。

良き。推せる。

嫁候補。ええ。ええ、ええ、ええ、ええ」


「推さなくていーーーんだよ!

しかも嫁にゃなんねーーーよ!

もーーー!うっとーしーーからふつーーに喋れよ!!」


ユンタとフーがギャーギャーとやり取りをしているのを眺めながら、ロロがチャガマに尋ねた。


「な、なんだか変わったお方ッスね……?」


「すごく長い時間を生きてて、

人間とも好意的だった。

だけど、いろんな人間と仲良くし過ぎて、少しおかしくなった。

僕たちはボケてきてるんじゃないかと思ってる」


「む、昔はまともだったんスね……?」


「あんなことは無かった。

それにやっぱり段々おかしくなってる。

久しぶりに見たけど、前見た時より変だ」


「だ、大丈夫なんスかね!?」


「ユンタの言う事はちゃんと聞く」


ツァンイーはペラペラとよく喋るフーを見ながら、先ほど感じた凄まじい魔力はなんだったんだと考えていた。

見た目こそ魔獣だが、中身はまるでただの中年の親爺にしか思えなかった。


「もーーー!やんのかやらねーーのかどっちなんだよ!」


痺れを切らして駄々をこねるように地団駄を踏むユンタにフーが言った。


「冗談はこのくらいで置いといてですな。

ええ。

久しぶりに召喚されたもんでスパークしちゃいましたな。ええ。

あそこの方はもう魔力もほとんど残ってないし、

逃がしてやっても害はないでしょう?

ほんとに戦うんですか?このあたしと?

ユンタさんって無慈悲ですなぁ。ええ、ええ。」


「いーーーんだよ!こっちも散々好き放題やられたんだ!

死ぬほどビビらしてやんねーーーと気がすまねーーー!」


「はいはいはい。

なるほどなるほど。

そこでユンタさんの手持ちの中で、

最強の。この私めに白羽の矢が。

ええ、ええ、ええ」


「そうだよーーー!!!だからそう言ってんだろーーー!!!」


「ええ、ええ、ええ。

一度は嫁候補に上がった方を相手にするのには気がひけますな。

ええ、ええ、ええ。そちらの魔族の方。

そういうことでよろしいですか?ええ、ええ、ええ」


まだ唖然としているツァンイーにフーが尋ねた。


「え?え?ダ、ダメだ!!お前なんだかとても怖い!とツァンイーは思う!!」


「怖い?

このあたしが?

はいはいはい。

だそうですが、どうしますかユンタさん?ええ。ええ」


「あーーー!もーーーやっぱり呼ぶんじゃなかった!!」


「た、戦わないからなツァンイーは!!

もう負けで良い!!降伏するからな!!とツァンイーは思う!!」


「はーーー?てめーーー逃げんのかよ?」


「いい!逃げるで良い!!もうツァンイーに勝ち目ない!!とツァンイーは思う!!」


◆◆

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