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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第六章 『巡アラウンド・ザ・クロック』
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『ふしどのうち。』



リクが意識を取り戻した時には、

既にミズチは倒れ、

途切れた記憶の何処を辿っても、

一体何がどうなっているのか見当はつかなかったが、

彼は自分の中に居る、声の主へ語り掛けた。


「死んでんじゃないだろうな?」


「『心配なら触って脈でもみてやれよ』」


「するか」


「『要らねえ世話だ。

死ぬべき時にゃ誰だって死ぬ』」


「日本人だって言ってた。死なれたら寝覚め悪い」


「『オメーの寝覚めが悪くなったって、

俺にゃ関係無えな』」


「アホか。ざけんな。

つーか、声が二つ聴こえて、

どいつが喋ってんだかわかんねえんだよ」


「『何だと?

手前の中の能力だぞ?

そもそも自分と喋ってるようなもんなのによ』」


「一体何なんだよお前ら?

俺は多重人格者なのか?」


「『知るか。俺達は概念じゃない。お前が決めろ』」


「ミズチの鑑定スキルを見誤らせたのもお前らか?」


「『お前が望んだんだ。

疾うにお前は気づいてたからな。

この女から匂う魔女の気配にな?』」


「んな訳あるか」


「『お前は模写の魔法使いなんだぞ?

鼻が利かねえ筈が無えだろ?』」


「当の本人がまったく理解出来てないんだが」


「『鼻が利く利かねえ以前に、

オメーは頭が悪いな』」


「は!?」


「『第二の声(ナビゲーター)は教えてくんなかったか?』」


「何を?」


「『まあいい。とりあえず、

その女の服脱がせ』」


「何の為に!?」


「『その女の魔力を貰うからに決まってんだろ。

閨中術知らねえのか?』」


「けいちゅうじゅつ?」


「『ザックリ言うとセックスだ』」


「する訳ねえだろ!!」


「『最後まで聞けよ。閨中術は、

二人の術者が術式を用いた性交に依って、

魔力を循環させて供給し合う魔法だ。

循環させた魔力は粘膜を通して互いの体内を巡って、

臓器、筋肉、血液、骨、

それに脳やら神経やら、

とにかく全身に満遍なく行き渡る。

そうなるとどうなるか判るか?』」


「わ、判んねえ」


「『だろうな。魔力が増えんだよ。

閨中術をやる目的は魔力の増幅だ』」


「つまり……、俺がミズチとセッ……」


「『そこまでする必要は無え。

此処を寝屋に見立てて術式を発現させる。

閉じられた空間で、

男と女が対で揃ってる。

条件としちゃ充分だ』」


「待て待て、駆け足で説明すんな」


「『魘魅(えんみ)の一種だ。

方陣を敷いて、

その中で現象を模倣して魔法を発動させる。

古くせえやり方なら、雨乞いの為に、

煙を焚いて雨雲に見立てたりな。

古典魔法ってのはな、

類感と感染に分別出来てだな……』」


「ムズ……。

つーかお前、俺なのに何でそんな事知ってんだよ」


「『ジェームズフレイザー知らねえのか』」


「知るわけねえだろ」


「『お前が知らねえ事を俺が知ってるのは、

お前が知らねえ事を知りてえと思ったからだ』」


「だから俺が知らない魔法も使えるとか?」


「『第三の声(アンサイクロペディア)の役割だからな。

お前の知識欲が産んだ渇きを埋める』」


「……そんで?具体的に何すんだよ?」


「『服を脱がせて、

その女の性器に指か舌突っ込め』」


「出来るわけねーだろ!?」


「『いいからやれ。

外と部屋を隔絶する魔法の装置は解いたが、

此処は仮にも魔女の息がかかった部屋だ。

んなショボい魔力で魔女の気に触れたら、

下手すりゃアッサリくたばんぞ?』」


「つってもなあ……」


「『オメーの意識を奪って、

俺がやってやったって構わねえぞ?

これはな、童貞のお前に対する気遣いだ。

女の身体くらい触り慣れとけ』」


「いらんわ!」


「『いらん事は無えだろ。

散々、エロ動画を観漁(みあさ)ってた癖によ?』」


「ぐ……」


「『魔法っつーのは想像だ。

だけどよ、

想像の範疇を超えるものを補うのは経験だ。

つべこべ言ってねえでさっさとやれ』」


「でもお前……、こんな無抵抗の女に……」


「『ケッ。往生際の悪い野郎だな?

何もスイやコトハに、

同じ事をしろって言ってんじゃねえんたぞ?

そりゃ、

あの二人とヤれば得られるもんは多いだろうけどな』」


「やめろ……」


「『眼を背けんな。

この下衆な発想もお前の中のモンだ』」


「……」


「『死にたくなけりゃやれ。

今だけの話じゃ無え。これから先もだ。

使えるもんは何でも使え』」


「気が進まねえ……」


「『それなら死ね。

スイに逢えなくてもいいんならな』」


「……」


リクの手は震えていた。

初めて異性の服を脱がす行為の緊張に加え、

自分の内なる声に、

己の浅ましくい本質を、

易々と見透かされた恥辱を感じていたからだ。


「『本番の為の予行演習と思えよ?

スイとヤるのを想像しながらやれ』」


「すっごい下世話! いちいち品が無えんだよ!」


「『オメーがしたいって思ったからだろうが。

それに当たり前だが閨中術は、

性的に興奮する事が重要だからな。

どエロい事を考えろ』」


「……」


リクは自分で自分を軽蔑したくなっていた。

しかし、それがとても虚無的な事だとも思っていた。


そして、血液が深い所で、

うねる様にして波打った感覚がした。


「『良いぞ』」


今日ほど、

情けない思いをする事は無いだろうと考えた。


「『突っ込む時に、指を自分のチン○だと思えよ』」


「もう黙ってろ!!」


震える手が、

ややこしい造りの鑑定士の制服のボタンを、

ひとつずつ外していき、

その度に柔らかい感触が、

感電する様にリクの思考を痺れさせ、

ミズチの身体から薫る香油の香りが、

下腹部を激しく脈打つ。


青紫の血の管が滾る様に浮き上がり、

膨張させ、強張らせる。


衣擦れの音が、

手の震えと共に揺れた。


◆◆




♪Baby monster 『sheesh』

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