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第二十話『嘘をつく生き物。』

前日まで特に記載してませんでしたが、


本日は3話程更新いたします。


更新時間が不定期な為、もしも続けて読んでくださってる方がいましたら、すみません!


楽に死なせない。

と宣言した通りにユンタの体力を徐々に削る為、

ツァンイーは致命傷にならない様な攻撃を繰り返した。


ツァンイーの思惑通りに事が運ぶのは(しゃく)に触ったが、魔法も封じられたままでは反撃も(まま)ならず、

蓄積していく疲労によって思考も鈍くなっていった。


ツァンイーとの距離が少し空いた瞬間に、足元を狙って火球が撃ち込まれ、ユンタは爆発と熱風で吹き飛ばされた。


「ゲホッ!ゲホッ!……クッソーー………。こいつ、やっぱり魔力も相当残ってやがんなーーー………」


「亜人。お前もう限界だな?ツァンイーはまだ遊び足りないけどな?もうお前に勝ち目はない。とツァンイーは思う」


ユンタはどうにか立ち上がると、ツァンイーに向かって唾を吐いて言った。


「あっそーーー……。勝手に思ってろ……。クソ使い魔……。バーーーーカ」


「…………。クソ生意気。もういい殺してやる。とツァンイーは思う」


ツァンイーは魔法石を幾つか投げつけ、命じた。


「───『爆ぜろ(バオチャオ)』」


────ズドォォォンッ!ズドォォォンズドォォォンッ!!!


爆炎がユンタの身体を包み、ユンタの身体は煙を上げながら仰向けに倒れこんだ。疲れ果てた身体には流石にダメージが大きく、倒れてしまったユンタはもうピクリとも動かなかった。


「死んだか。もう少し遊んでも楽しかったけど、流石にコイツの悪口にはむかついていたから仕方ない。とツァンイーは思う」


ロロはその様子を少し離れたところでずっと見ていた。

(ユンタちゃん…。本当に本当にゴメンなさい……。ユンタちゃんは優しくしてくれるから本当は助けてあげたいのに。この人たちに逆らえないと自分に言い聞かして…。自分は本当に卑怯な奴だ。ユンタちゃんに勝ち目が無いと思うと身体がどうしても動かなかった。本当にゴメンなさい……)


「持って来てた魔法石が無くなったな。ちょっと遊び過ぎたかな。とツァンイーは思う」


ツァンイーはそう言いながらロロの方を見た。

「ロロ。魔力を回復させる呪歌(バードソング)を歌ってくれ。魔法も少し使い過ぎたから。早くしろ。とツァンイーは思う」


冷たい視線だった。この女はきっと自分の事を仲間だとは思っていないのだろうとロロは思っていた。おそらく、もう1人の男も。


「あ……あの!ツ……ツァンイーさん……」


「どうした?早く魔力を回復したいんだが?とツァンイーは思う」


「ひ…ひとつだけ……お尋ねしても良いッスかね……?」


「なんだ?早く聞け。とツァンイーは思う」



「あ……あの……た、多分……。

ツ、ツァンイーさんと、ゴ、ゴアグラインドさんは…ユ、ユンタちゃんの言う通り……じ、自分の事仲間だと思ってないと思うんス……。

で、でも!そ、それは良いんス……。

じ、自分は鈍臭いんで、そ、そういうことされても仕方ないと思うんス……」


「だったら何だ?聞きたいことってそれか?とツァンイーは思う」


「で……でも、む、村の人たちを……ぶ、無事に…む、村に、か、帰してあげるって言うのは、ほ、ほ、本当なんすかね……?」


ツァンイーは返事をせずに黙った。

ロロを見る目がひどく蔑んでいるものになっていた。


「そ、そ、それも……う、う、う、う、嘘なんスね……?

む、村の人たちは…ぶ、無事なんスかね……?

あ……あの……む、村の人たち……お、お年寄りばっかりなんスよ……。あ、ぼ、牧師さんは、お、お、お年寄りってほどじゃないスけど……。あ、あの、あんまりひどい目にあってたら…か、か、か、かわいそうじゃないかなって思うんスけど……」


「知るか。やったのはゴアグラインドだろう。それにジジイとババアが死んでいたところでツァンイーの知ったことではない。とツァンイーは思う」


ツァンイーは冷たく言い放った。


「それに、お前の話し方がとても腹立たしい。おどおどとしてて何が言いたいのかわからない。とても鬱陶しくて嫌いだ。とツァンイーは思う」


ツァンイーはもはやロロに対して利用価値があろうとも、消してしまおうかと思っていた。この鈍臭い女が自分の周りをウロウロするのがとてもストレスだと感じていた。


「お前なんて最初から仲間と思っていない。お前のスキルが便利だからだ。お前も気づいてはいただろう?でもお前はツァンイーたちが怖くて逆らえなかった。弱くて惨めで卑怯な奴だ。とツァンイーは思う」


「や、や、や、や、や、やっぱり……。ま、また騙されちゃったスね……。む、む、昔から何にも変わらないスね……。に、人間たちには、だ、だ、騙されてばっかで……に、人間じゃない人たちにも騙されて……だ、騙されてばっかりなのに、う、疑り深くて……じ、自分のことが、ほ、ほ、ほ、本当に嫌になるッスね……。む、村の人たちのことも、ほ、本当に優しくしてもらってた筈なのに……ど、ど、どこかで、し、信じてなかったんスよね……だ、だから、お、お二人に……つ、つけこまれちゃったんスね……」


ツァンイーは舌打ちをして、ロロに詰め寄った。


「今頃気づくお前がバカだ。

あの頭の悪いゴアグラインドの口車に載せられた。

村の連中が優しくしてるのはお前を利用していらるからだと言われただろう。

だから、助けてやろうかと言われた。

お前を利用する連中なら消してやろうかと言われた。

それでお前は一度は消してくれとゴアグラインドに頼んだが臆病者だから怖くなって元に戻してくれと頼んだ。

それから仲間になって協力したら元に戻してやると言われた。

わかるか?全部お前のせいだ。

弱くて頭が悪くて臆病なお前のせいだ。とツァンイーは思う」


ロロはしばらく間を置いて答えた。


「そ、そ、そ、そうッスね……。ツ、ツ、ツァンイーさんの言う通りだと思います……」


「そうだろう。ツァンイーは何も間違ったことは言っていない。それにわかったら早く歌え。殺されたいか。そこの亜人と同じ目にあわせてやろうか。とツァンイーは思う」


「す、す、す、すみませんごめんなさい……。わ、わ、わ、わかったッス……。こ、こ、こ、殺されるのは、こ、怖くて……い、嫌ッス」


「本当に鈍臭い女だ。ツァンイーはお前が嫌いだ。次なにか質問したら容赦なく殺す。だから早くした方がいい。とツァンイーは思う」


「……………」


ロロは何も言わずにリュートを取り出し、弦のチューニングを始めた。


「最初からそうしておくべきだった。ツァンイーを無駄に苛立たせたな。殺さないでおいてやるから、今後はくだらないことは言うな。とツァンイーは思う」


「♪遥か遠い……」

ロロが呪歌(バードソング)を歌い出した瞬間だった。


倒れていた筈のユンタが素早く起き上がって、武器を振りかざしながらツァンイーに攻撃をしかけた。


「コイツ………!?死んでなかった……!??」


───メキィッッッ………!!


咄嗟にユンタの攻撃を腕で受けたツァンイーの骨が砕ける嫌な音がした。


「──ッッッッガァァァァァ………!!」


ツァンイーは突然の攻撃による激痛で完全に怯んでしまった。


「おっかしーーーーなぁーー??頭カチ割ってやろうと思ったのに外れたなぁーー?」


ユンタがニヤリと笑っている。


「お…お前……なんで……?死んだかと思ってたのに……!!」


ユンタは軽快なフットワークをやって見せて、ツァンイーを挑発するように言った。


「おめーーーの話がダラダラダラダラなげぇーーーんだよ。おかげでウチの『狸寝入り』のスキル使わせてもらえたけどなーーー?」


「ク…クソ!クソ!クソ!!!耳と尻尾をやっぱり切り落とせば良かった……!そしたら死んでないのがわかったのに……!」


ユンタはケラケラと笑いながら言った。

「ウチの狸寝入りはさぁーーーちょろっとしか体力回復出来ないし動けなくなるからフツーーはあんまり使わないんだけど、おめーの話が長くてうっとうしかった分、たんまり寝させてもらったんで元気になっちゃったーーー」


ツァンイーが忌々しそうにユンタを睨みつけた。


「消費無しで発動出来るスキルだから魔法封じも干渉出来なかったよなーー?それにもう魔法石切らしたんだってなーーー?もうテメーのだっせーーー魔法なんか喰らってやんねーーぞ?」


「忌まわしき民!忌まわしき王よ…!!」


ツァンイーが詠唱を始めた瞬間にユンタはツァンイーの鎖骨に武器を思い切り叩きつけた。


「ッッッッギャッッッッッッッッ………!」


「させねーって言ってんだろバーーーカ」

ユンタはツァンイーに向かって舌を出した。


「それからロロ子!!」


ロロはビクッとしてユンタの方を見た。


「は……はいっ?!」


ユンタはきっと自分にも激しく怒っているだろうと思った。

優しい言葉をたくさんくれたが、そんなユンタを裏切ってしまう自分の性分を本当に呪いたくなった。

どんな仕打ちでも受けよう、とロロは思った。


「ウチがまだ生きてんのわかってて、話引き延ばしてくれたっしょー?コイツがペラペラ喋ってコッチに意識が向かないようにしてくれてたよねーーー?マジナイスなんだけど」


ユンタが何事もなかったようにそう言って笑った。


あっけらかんとした、ユンタの姿を見て、ロロは芯から身体の力がスッと抜けていくのを感じた。


「い、いや……。そ、そ、それは多分たまたま!!!じ、自分が鈍臭いから……ツ、ツァンイーさんが勝手にイライラして……そ、それから……」


ユンタはきょとんとした顔をして聞き返した。

「え?そーなん?なんだーーー違うんかい!でも、結果超助かったからサンキューねーーー?」


ロロは一瞬呆けたような顔をして、次の瞬間、なにかの堰が切れたように激しく笑いだした。

「あはははははははははははは!!ユ、ユンタちゃん!!!な、なんでそんなに前向きなんすか!?あはははは!!ほ、本当にすごいッス!!!あはは!ひー!ひー!で、でも……あははは!めっちゃ格好いいッス!!あははは!お、お腹痛い……く、苦し……」


ユンタもガハハと笑いながら答えた。

「えーーー?そーかなーーー?まーどっちでもいーじゃん。格好いいって言ってくれてありがとーーー」


「あははははは!こ、こ、こちらこそッス!ひー!ひー!」


「さーて、どーーする?魔女っ子?

ウチはおめーと違っていたぶる趣味は無いから安心しろよ。

でも。さっきの胸糞悪い話聞いてたらーーー………。一発ぶん殴るくらいじゃ許してやる気にはなんねーーんだけどーーー?」


ツァンイーは怒りと痛みに震えながら、どうやったらこの場を切り抜けられるかを必死に考えた。


あの頭の悪いグラスランナーにまだ自分の脅しは効くだろうか?


今攻撃を仕掛けるのは危険だ。その瞬間この亜人は自分に何をしてくるかわからない。この痛みでは攻撃をかわせないだろう。



「ロ……ロロ!!」

ツァンイーは悲痛な声でさけんだ。


「あーーー?まだなんか言うかこのやろーーー」


「ま、待て!!待った方がいい!!!

村の人間たちはまだ死んでない!!

ツァンイーが頼んでやるからゴアグラインドに解放してもらえばいい!!

でもツァンイーが死ねばゴアグラインドは怒ってきっと解放しない!!

だからロロ、ツァンイーに回復の呪歌(バードソング)を歌え!!

そうしたら人間たちは帰してやる!!

亜人!!お前も動くな!!

お前のせいで関係のない人間が死ぬのは嫌だろう!?とツァンイーは思う!!」


ツァンイーは必死に要求を突き付けた。


「だってさーーー?どーするロロ子?」


◆◆

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