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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第六章 『巡アラウンド・ザ・クロック』
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『リスポーン地点。』



「そのシージって奴が、

お前(コトハ)が言ってた、

前に一度戦って、苦戦した模写の魔法使い?」


凄まじい風の音に掻き消されない様に、

リクは大声を張り上げて、

コトハにそうやって訊ねた。


飛翔の魔法の速度は加速し続け、

今、見えたばかりの景色が、

あっという間に遥か後方へ消えてゆく。

振り落とされてしまわない様にと思い、

しっかりとコトハの手を握り締めた。


「そんなに大きな声を出さなくても聴こえる。

いい加減に慣れなよ」


コトハはリクの大声に、

ウンザリした様な顔をしながら言った。


「そんで? そのシージって奴がどうかしたのか?」


「シージは聖域教会の人間で、

僕がネイジンに居た時に難癖を付けて来て、

仕方なく戦う羽目になってね。

途中でリロクの襲撃に遭ったから、

勝負は有耶無耶になったんだけれど、

おそらく、

僕はあの時にシージに、

能力を一部分的に模写されている」


「は!? お前の!?

攻撃を全部見切って無効化するやつ!?」


「最後まで聞きなよ。

戦ってる最中に、

相手が模写の魔法を使うのが判ったから、

僕はそれを無効化するつもりだった。

来ると判ってた攻撃に構えて居たのに、

それを避けられなかったのは、

それが()()()()()

僕が何を言いたいか分かるかい?」


「わからん」


「鈍いな。

僕は最近、似たような経験をした」


「え? それってまさか……」


「そう。君の妨害スキルに因ってだ。

これは僕の推測なんだけれど、

君とシージの能力は、

どこか酷似している様な点がある」


「どんなところが?」


()()()()()()()()()()()()()()

と云う点だね。

本当に推測だけれど、

君の妨害スキルと同様に、

シージはスキル発動と同時に、

副次的に発動するスキルを持っている。

でも、それを偶然に喰らった訳じゃない。

シージはそれを意識的に制御している。

君と同じ様にね」


「いや……、俺のは偶々じゃない?」


「偶々なもんか。

謙遜も過ぎると嫌味になるぜ?」


「そんな事言われても。

んで。 何で、わざわざ、それを今話すんだ?」


「スイ達と合流して聖域教会と戦うなら、

遅かれ早かれシージと戦闘になるだろう。

見切りのスキルを使われたら厄介だ。

僕も手の内を全て出した訳じゃ無いけど、

それは向こうも同じだろうしね。

結論から云えば、

かなり苦戦すると思う」


「うん。それで?」


「君の登場だ。

シージのスキルを封じて、その瞬間に叩く。

……と、言いたいところなんだけどね。

少しだけ、懸念が無いと云えば嘘になる」


「え?どこが?」


「君のスキル妨害を、

聖域教会の人間(イズナ)の前で披露しただろう?

何らかの手段で、

君の能力の情報を解析されていないとは断言出来ない。

鬼火のロウウェンが倒れたのも、

君の能力に因るところが大きいのなら尚更だ。

テンプレート気味の作戦だ、

仕掛けが判ってしまえば、君をマークするだろうね」


「俺が狙われたらヤバいよな?

戦闘は苦手だぞ?」


「君は意外と度胸も有るし、

イズナ相手にだって臆したりしなかった。

だけど、決定的な攻撃手段に欠けるから、

相手にスキルを封じられる可能性について、

何か策を講じた方が良いね」


「例えば?」


「自分で考える事も重要だよ?

でも、そうだね。

そろそろスキルレンタルを活かして、

攻撃的なスキルを幾つか揃えるのはどうかな?」


「攻撃的なスキル」


「物理的でも魔法的でも良い」


「俺もレベル上がってんのかな?

試してみる価値はあるかな?」


「勿論あるさ。君は器用だ。

バランスの悪いトリッキーな手札を、

とても巧みに操っていると僕は思う」


「褒めてんの?」


「褒めてる。

それに君は悲観的に物事を捉える様に見えるけど、

それは、

本当は周りをよく見て状況を判断しているからこそだ。

最悪と最善を表も裏無く考えれて、

君はその時に一番最適な方法を選ぶ。

実に魔法使い的思考だと僕は思っている。

それも強い魔法使い特有の」


「俺が? さすがに買い被り過ぎじゃない?」


「僕の主観だ。僕の自由だ」


「それはそうかもだけど。あんまり期待されてもな」


「君の性格ならそう言うだろうね。

でも、異世界に転移するのが、

もしも君の方が先だったら。

人類最強の魔法使いなんて呼ばれるのは、

君の方だったかも知れないよ」


「何……? 俺、何かした……?」


「用心深いな君は。

素直に受け取ったらどうだい?」


「素直にって言われてもな」


「時に。

君はスキルの鑑定を受けた時に貰ったカードは、

未だ肌身離さずに持っているかな?」


「カード?」


「能力値なんかが記載されるカードだよ。

まさか失くしちゃったのかい?」


「え……? そう云えば最初に見て以来、

そんなもんの存在、全然忘れてたわ……」


「今、取り出せるかな?」


コトハに言われて、

リクは衣服のポケットというポケットを全て探したが、

カードを見つける事は出来なかった。


「無い……」


「いいさ。ウクルクに寄るんだ。

もう一度、鑑定所に行って発行して貰おう」


「何で要るんだ?」


「カードを貰ってから随分経っただろう?

今の自分のステータスを知りたくないかい?」


「そりゃまあ」


「それに。

君の能力は対象とのレベルの差に左右される。

自分の今の力量と、

対象を見比べるのに基準が要るだろう?」


「なるほどな。ところでさ、

お前のカードは?」


「僕が失くさずに持っている訳無いじゃないか」


当然の様に言い切るコトハの、

あまりの潔さにリクは何も言葉が浮かばなかった。


「ナツメくん。そろそろ着くよ」


コトハに言われて、顔を上げると、

リクの視界にもウクルクの広大な自然の光景が映った。


自分が転移をして来て、

スイに連れられて歩いた場所がどの辺りなのかは、

全く見当がつかなかったが、

その光景が広がる様は幻想的だと思えるほどに、

リクの中の何かを揺さぶってみせていた。


「結界が張ってある」


コトハがそう言った。


「また降りて歩くか?」


「いや。あとで謝れば良いさ」


「へ?」


そう言うとコトハは急上昇し、

狙いを定めた様にして、

空中の一点を細い脚で蹴り飛ばした。


彼女の眼には、それがハッキリと見えていた。


魔力と魔力がぶつかる、

炸裂した様な音と衝撃が、

空の彼方から国中に轟く。


「ぅおーーーい!!? ちょちょちょ!!?」


音と衝撃から身を守る様に、

リクが頭を抱えながら悲鳴を上げた。


辺りに集落が無いのが幸いだったが、

切り立った岩肌の、

巨大な要塞の様な幾つかの山々さえも、

根元から揺れている様だった。


結界はコトハに主点を破壊され、

構築していた術式を解かれてしまうと、

覆い被さっていた範囲から、

ゆっくりと退いていくと、

あとは音も無く、

散り散りに消え去っていった。


◆◆


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