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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第六章 『巡アラウンド・ザ・クロック』
193/237

『転移者と管理者の話。』



 女は時折、足を停めてクルッと振り返り、

話の続きをアメビックスにしてやろうとでも云うのか、

どことなく、話したくて仕方が無いと云った様子で、

とても嬉しそうに話し続けるのであった。


◆◆


 ──まア、

転移者と一口に云ってもピンからキリだ。

大概の転移者は、

俺達にとっては問題にはならないんだけどな。

時折、頭のネジが外れた様な連中が、

何も知らずに迷い込んで来る事もある。

そういう連中に限って、何故だか、

怪物じみた能力を手にする事が多い。


お前も、それは知ってるだろう?


中央の魔女や聖域教会の始教皇、

それと、

()()()()()()()()()()()()()()


大陸で知らない奴は居ないだろうな。


()()()()()()()()()()()()()

管理者以外の存在から、

あんなにも恐怖を感じた事なんて無かったぜ?


転移者と云うのは厄介だ。


何処の国も、挙って転移者を取り合うし、

保有したがる。まるで兵器だと俺は思う。


この世界の事情を何も知らない転移者達は、

各々が都合の良い事を吹き込まれて、

妙な使命感を持って世界と対峙し始める。


それはとても迷惑な事で、不愉快でしか無い。


お前も身に覚えがあるんじゃないのか?


南の田舎を、お前が我が物顔で荒らし回っている時に、

お前を討伐に来たのは転移者だっただろう?


 ──()()()()()()()()()()()()()()


妹を捜す姉を、此方の世界に送ったんだったかな?


その姉が、今や聖域教会の司教だ。


不公平だとは思わないか?


ニホンに居た時には、普通の子供だっただろうに、

転移しただけで、常人離れした能力が手に入ったんだ。


長い時間を掛けて研鑽を続けた者への、

冒涜だとすら感じられる。


それに、お前が此方に送った娘には、

あの女(女神)の加護が施されている。


 ……んン? 何だよ……、その顔は?

まさか知らなかったとでも言うんじゃないだろうな?


あの娘の様子も、

中央の魔女と、あの餓鬼の様子も見ていただろうに。


 ……あア、まさか俺が来たから、

観察を中断せざるを得なかったのか?


悪い悪い。


祝音者(ギフト)とか云ったか、

あの女の加護は厄介だぞ?


 さア、ここで俺には疑問が一つ浮かぶ。


勿論、それは転移者に付与される能力についてだ。


あの娘を転送したのは、お前だ。

()()()()()()()()()()()()()()

能力の付与について、

お前は干渉していないだろう。

と云うか、

お前にそれを選択する事は、

思い浮かびもしなかったんじゃないか?


それに、


彼方から、此方に転移して来た、俺とお前には、

何故、能力の付与は無いんだろうな?


……()()()()()()()()


幾ら、不老の魔法で朽ちない身体だとは云え、

無敵にはなれないからこそ、

俺は多分、こんな事を思ってしまうのだろうな。


だから、俺は考えたよ。


無いなら、奪えば良い。


そう思い付いた頃には、

目障りだった転移者達の存在が、

少しだけ待ち遠しくなる様な感覚になっていたよ。


何せ、俺の能力は模写だ。

当然、只の模写では無いけどな。


おかげで、

俺は自分の本当の名前が思い出せない羽目になった。


俺の()()名前はシージ。

聖域教会の大司教だ。


──女はそう言うと、

その身体は溶けていく様に、

アメビックスの知る悠の姿から変貌していった。


「さア。魔法の世界へ戻ろうぜ。

中央の魔女、その娘の精霊使い。

転移者の姉妹、それに、あの妙な能力の男の餓鬼(リク)

間違い無く、あの世界は動こうとしている。

こんなにも楽しい局面を、

見逃す手は無いからな」


◆◆◆

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