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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第六章 『巡アラウンド・ザ・クロック』
192/238

『正体。』


──女は語り続けた。


◆◆


 あア、そうか。


随分と年月(としつき)も経ったものだし、

一体、事の顛末の何から何までが、

何処でどうなって、此処まで辿り着いたものなのか、

知らないヤツが居るっていうのも、

それは当然の話ではあるし、

俺もその点については、

少しばかりはお前に教えてやったって、

悪くは無いと思っているんだぜ?


 んン?


何だよ。その表情(かお)は?

まるで疑ってかかってるって様子だな?

心配するなよ。

俺だって慈悲の心を、

全く持ち合わせていないと云う訳じゃない。

だけれど、勘違いはするもんじゃないぜ?

俺は別にお前に、

懇切丁寧に、全てを理解出来る様に、

一から十まで教えてやろうとも思っていない。


こんな事を言えば、

それ見たことか、と思うかも知れないがな。


だけれども、

お前がそれをそう思ったところで、

俺は一向に構わないし、

寧ろ、

お前が自分の愚かさに、

いつ気づくのだろうかと考えてやるくらいしか、

俺にはしてやれないのだからな。


……怒るなよ。


 さア、前置きはこのくらいで良いだろう?

 今から話の続きを聞かせてやる。


◆◆


俺達が、管理者(ミニチュア)なんて、

大仰で、偉そうな名称を名乗っているのにはな、

きちんとした、くだらない理由が有る。


まずは、そこから説明してやらないといけない。


お前達が好きに生きてると思い込んでいる、

この偽りだらけの世界が、

如何に計略と虚構で造り上げられてきたかをだ。


先ず、前提として俺達は、

()()()()()と云うものを知っている。


俺達が、お前が想像し得る、

どんなにも遡った過去よりも、

遥か旧くから存在しているのはその為だ。


俺達は寿命で朽ちる事の無い肉体を持っている。


……信じられないだろう?


だが、事実だ。


……エルフなのかって?


違う。


俺達は不老の魔法で、

生命の理を外れているだけで、

元々は只の人間だ。


それによく考えてもみろ?


そんなに永く生きている者は、

エルフの中にだって、

たったの一人だって、居やしないんだぞ?


……まア、問題はそこじゃ無い。


重要な事は、

()()()()()

()()()()()寿()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()()()


腐った人間が、

暇を見つけるとどうなると思う?


俺達の退屈しのぎは、

世界にとって、さぞかし迷惑なものだっただろうな。


神も、

人間も魔族も亜人も、

俺達の箱庭に並べる為の遊び道具だ。


俺達は、この世界のあらゆる歴史に介入し、

悪戯に人心を煽動して惑わし、

思いつく限りの火種を産み落とし続けた。


お前の拙い想像をする力が一体、

どこの範疇まで届くのだろうな?


俺達の描いた思惑通りに、

神も国も人も狂った様に躍り続けて、

人が国を滅ぼし、

国が神を脅かし、

神が人を裁いた。


お前達が産まれてから死ぬまでの、

喜びも悲しみも、

その全てが俺達には愉快で仕方ない。


逆上せ上がった俺達が、

自分達の事を世界を統べるべき存在だと、

思い上がるのには、

そんなに時間は掛からなかったんだぜ?


考えてもみろ?


俺達の箱庭に置いてある駒は、

全て俺達の思うがままに操れる。


こんなにも快感を覚える事なんて、

随分と永い間生きてきたが、

他には何一つだって在りはしないんだぜ?


やがて俺達は管理者(ミニチュア)と名乗る様になった。


それからの俺達は、

気紛れに駒で遊ぶのを止めにして、

()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()

心血を注ぐ事にした。


狂って(イカれて)るだろう?


だけれど、

それが俺達の正体だ。


◆◆◆


 だがな、


俺達の、この何よりも楽しい狂った遊びを続けるのに、

不都合な事が無い事も無いんだ。


俺達は寿命で朽ちる事は無いが、

万能じゃア無い。


本当にくだらない、

冗談の様な話だが、

不老であっても、不死では無いんだ。


俺達の臓器や血液や筋肉は、

一定のサイクルで、

自動的に新しく活きの良い状態に取り替えられる。


だが、

その再生のサイクルに間に合わずに、

致命傷を受けた場合、

俺達は、きちんと生物的な意味合いで死ぬ。


解るか?


だから俺達は、

その不安要素を取り除く事にも、

抜かりはないようにしている。


だからと云って、

誤解はしてくれるなよ?


お前ほどに長く生きた魔族の魔法でも、

俺を殺すのは容易な事では無い。


お前が生きた時間の何倍、或いは、何十倍も、

俺達は長く生き続け、研鑽を怠ってはいない。


()()()()()()


俺達を殺す事の出来る奴なんて、

この世界の何処を捜したって、

そうそうは居ないんだ。


 あア、例外の事が知りたいか?


ようやく話の本題に入れるな。


愚図のお前でも、

何となく察しはつくだろうが、

例外とは、無論、転移者の事だ。


異界の、それも小さな島国から時折、

呼び寄せられる様に現れる、あの忌々しい連中だ。


 アメビックス。


お前、転移者の事も調べていただろう?


お前がニホンに居たのは、

リロクから逃げる為だけじゃア無い。


 ククク。


安心しろよ?

そこだけは、お前の事を精一杯褒めてやるぞ?


転移者は、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


転移前と転移後で、

奴らに一体、何が起きる?


俺達の天敵の事を、

俺達は知らなければならないのさ。


ズタズタに身体を引き裂いて、

頭も目玉もくり貫いて、

血も肉も、細胞の一つたりとも遺さずに、

調べたって構わないんだぜ。


──女はそう言うと、声を上げて、

本当に可笑しそうに高らかに嗤った。


その様子は、さながら、

狂人の様にしか客観的には見る事が出来なかった。


◆◆◆◆






♪ナユタン星人『エイリアンエイリアン』

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