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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
179/237

『焦燥や翳りや事実云々。』


しまったーーー!!!


昨日の投稿、

一話飛ばして間違えて更新してる!


『情勢は緊張している。』

『焦燥や翳りや事実云々。』

『記載された禁忌。』


の順番の筈でした!


あいやー!


とりあえず今日も一話載せます!



「いやいやいや……、

ちょっと待て待て待て……?」


ラオは血相を変えて、

思わず立ち上がって、

上ずった声をあげる程に取り乱していた。


一人で南方へ行く、

スイによる突然の発言、

それがラオを慌てさせる発端の言葉だった。


「一人? スイが一人で?

え? 何で?

おいおいおい……、

何を言ってんだよ……?

一旦落ち着こ?な?

先刻、

シンヒが丁寧に説明してくれただろ?

あれ?

ユンタのところに行ってたから、

聞こえてなかったか……?」


「大体わかりますよ。

だから、わたしが一人で行く事にしたんです」


「……すまない。言っている真意がよくわからない……」


「真意も何も、言葉の通りです。

大勢で行動するのがマズければ、

数を減らすしか無いし、

少なければ少ないほど良いかも知れません。

わたしは探知や感知の類は、

精霊たちが居るから得意です。

隠密的な行動を取るなら、

ロロの方が向いてるけど、

人材的にちょうど良いのは、

実はわたしなんじゃないかなと思うんです」


「……う、うーん。

そりゃ、スイの言いたい事は、

何となくは分かってやりたいけどさ……」


「それに、

先刻も言ったけど、わたしは多分、

ラオ様が思っているよりも冷静ですよ?

……コトハさんに、

どうしても逢いたいから無茶を言ってるって、

そうやって思われるだろうから、

とても、そうは見えないかも知れないですけど」


「……うん。まぁ……、そうだね」


「実際に、わたしの主観じゃ、

そうなっちゃうかも知れないから、

ユンタに相談したんです」


「ユンタも賛成してた……?」


「とても客観的に判断してもらいました」


「いやいやいや……、駄目だ駄目だ。

とてもじゃないけど、そんな事、

(ラオ)は了承出来ないぞ?」


「大丈夫ですよ」


「駄目だって!? あのな、

聖域教会の連中は莫迦じゃない。

連中のネットワークを潰して回ってる最中と云えど、

彼奴らの眼や耳は、

僕達の想像の範疇を超える程によく利くんだ。

何百年もの間、

連中が世界でデカい顔をし続けられた事を考えれば、

それは判るだろ?」


「一人で行動すれば、

それがバレて襲われるという事ですか?」


「まあ、そうだ。

お前は確かに強い。

司教級の相手が来たとしても、

多分、お前が勝つだろう。

だけど、

多勢に執拗に狙われ続けるとしたら話は別だ。

……それとも、何か策があるのか?」


「なんとなくなんだけど」


「うん?」


「わたしが一人で居たら、

コトハさんが迎えに来てくれそうな気がするんです」


「……え? そ……、それだけ?」


「それだけです。

多勢だろうが何だろうが、

コトハさんなら負ける訳が無い。

ラオ様もそれは解るでしょ?」


「いやいやいや……」


「で……、でもそれじゃ!

コトハさんが来るまで、

スイちゃんが囮みたいになっちゃわないッスか……?

危ないッスよ!?

せめて、自分(ロロ)も一緒に行くッスよ!?」


「いいの? 

本音を言うとさ、

ロロが来てくれたら凄く助かる」


「スイ! 待て!! もう少しだけだ!

もう少しだけで良いから、僕に時間をくれ!!」


「そ……、そうですよ!! スイ!!

行くなら、(シャオ)も一緒ですからね!?」


「シャオ! お前も駄目だ!!

良いから、少し落ち着け!!」


「おかしいな。意外と冷静なんだけどな。

伝わらないもんだな」


スイは本当に不思議そうに首を傾げていた。


「ふん。だから(クジン)は、

初めからそうしろと言っていたんだ。

しかしだ、

スイ。

お前、まさか歩いて行くつもりではないだろうな?」


「え?駄目かな?」


「馬鹿か。飛翔魔法でも使わないと時間の無駄だ。

何日かかると思っているんだ」


「わたしは飛翔魔法は使えないから」


「陛下の様子を見て判らないか?

実際のところ、

そう何日も猶予は無いのだろう。

考えてもみろ。

周りの国への体裁を調えたいだけで、

こんなにも反対すると思うか?

そうではなくて、

戦力を分散させる事への危惧があるからだろう?」


「……そうだね。クジンの言う通りだ」


クジンに鋭い声で訊ねられ、

ラオは短く答えた。


「やはりな。

……まあ誰がどう考えても、

そうだろうがな。

今や、

この国は聖域教会と真っ向から対立している。

同盟国として名乗りを挙げた他の国と比べれば、

圧倒的に大国として名高いイファルだ。

ウクルクが最初に襲撃を受けたのも、

イファル侵略への手始めの布石のつもりだろう。

ウクルクとイファルの交流は根深い。

転移門が幾つも在る筈だ。

だが、

敵の狙いは間違無くイファルだ」


「わたしにもそれくらいは分かるよ」


「だからラロカへ向かうなら、

手短に済ませろ。

使者の件でもよく解っただろう?

奴らは間違いなく、

近いうちに、

形振り構わず攻め込んで来るぞ。

魍魎(ガコゼ)を失ったとは云え、

未だ奴らの戦力は遥かに此方を上回っている」


「ほら。

やっぱり転移門を使わせてもらった方が、

話が早く済みますよ?」


「クジン……。

頼むからスイをこれ以上煽らないでくれ……」


「煽ってなどいない。事実だけを言っている」


ラオは頭を抱えたまま、

そのまま口を開く事無く黙ってしまった。


「陛下、少し休まれた方が……」


クアイが心配そうにラオに声をかけたが、

ラオは返事をせずに、

そのまま何事か考え続けている様子だった。


◆◆


「正直、クジンさんの意見は極論過ぎて、

(イェン)は賛成しかねますけどね」


「極論だと?(クジン)は事実を述べただけだ」


「でも実際のところ、

この同盟の利害が一致しないと、

僕達のやってる事も無駄足どころか、

割に合わなくなっちゃいません?」


「どういう意味だ?

仮にそうだとしたら、どうだと云うんだ?」


「報酬で貰える筈だった、

教会が保有している痕跡や、

女神に関する情報が手に入らないばかりか、

僕達(ソーサリースフィア)の内部情報は、

一部漏洩してしまってますよ?」


「ま。そりゃ問題だね。

特にクジンは手の内を見せ過ぎちゃったからね」


シンヒが、からかうような口調で茶化した。


「黙れシンヒ」


「クジンさんの様なタイプの、

能力の開示は致命的ですからね」


「五月蝿い。

能力を知られたとしても、

対応させなければ良いだけだ」


「イツカさんに手も足も出なかったじゃないですか」


「……イェン。お前何が言いたい?

俺に喧嘩を売っているつもりか?」


「そういう訳ではないですけど。

僕達がマズい状況に陥っているって話のつもりです」


◆◆◆


「イェンの言う通りだとあたし(シンヒ)も思うね。

今、同盟を解消したって良いことなんて、

なんにも有りゃしないさ。

一応、

()()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()

巧いこと立ち回んなきゃ、

干されて、狙い撃ちにされちゃうだろうねえ」


「そういえばさ、

ソーサリースフィアのトップって誰なの?

わたし(スイ)でも分かる様な、

有名な魔法使いだったりするのかな?

それに、

聖域教会の始教皇と知り合いって言っていたけど、

この争いに関して、本当にノータッチなのかな?」


「まあ、ぶっちゃけて言うと、

連絡役のイェンは別として、

メンバー同士でも顔と名前が一致しないなんて事、

()()にあるからねえ。

……イファルと同盟を組む件に関しちゃ、

報告して、特に反対もされなかったけどねえ、

風向き次第じゃ、

どっちに転ぶかなんてわからないね」


「つまり、トップの人が、

君たちを切り捨てる可能性もあると?」


「シビアな組織だからねえ。

利益にならなきゃ充分有り得る話だね。

そう云う訳だから、

今、同盟を解消したんじゃ、

あたしら本当に根無し草になる気がするんだよねえ。

もしも、

切り捨てられた日にゃ、

イファルの後ろ楯無しじゃ、

流石にマズいと思わないかねえ?」


シンヒの言葉に、

クジンは何も返答しなかったが、

シンヒの意見に賛同出来るところが有るのか、

反論をする事は無かった。


「スイの言う通り、

中央の魔女が、

もし此方に向かって来てんなら、

それを待つ方が得策だと、

あたしは思うけどねえ」


「えー……、待つのかぁ……」


スイが残念そうに言った。


「……。まあ、()()()()()()()()()()()()()()()

(イェン)は思いますけどね」


「どういう意味?」


「今、問題視されているのは、

戦力不足についての懸念です。

今や世界のあちこちから、

名乗りを挙げる実力者は、

チラホラ居るとは思いますけど、

数で云えば聖域教会には及ばないでしょう。

もっと効率的に、

戦力を集める事が出来たら良いんではないかと」


「具体的ては?」


「イファル王。

僕は期待と個人的な興味を持って、

お訊ねしますけど、

貴方なら知っている事が有るのではないかと、

思っています」


「……イェン。……まさかとは思うんだけどな」


「その、まさかです。

異世界(ニホン)から転移者を召喚する魔法。

魔法大国イファルの王である、

貴方なら、その術を知らない訳が無いと、

僕は考えています」


◆◆◆◆

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