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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
178/237

『記載された禁忌。』


順番を間違えて投稿してます!


次話が前話の続きになりますので、

そちらを先にどうぞ!



「イェン。

お前は一体どこでそれを?

何を聞かされて何を知っている?」


ラオは慎重に言葉を選んでいる様子だった。


「六割くらいは僕の推測と云うか、

妄想に近いものではありますが。

陛下の反応からするに、

あながち外れと云う事も無さそうですね」


「……あとの四割は?」


「現代の技術が確立する以前の旧い時代の、

『原初の魔法』を記録されたと云われる、

最古の魔法書を以前に見る機会がありまして。

その中に異世界からの転移、

或いは転生に関する魔法についての記述がありました」


「おいおい嘘でしょ……。

僕が知ってるそれは、

読む事はおろか頁を開く事も、

その存在に考えを及ぼす事さえ、

禁忌とされる門外不出の魔法書だぞ?

()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ええ。

しかし、禁忌とされたのは、

現代に至るまでの過程によってです。

二千年以上生きているとされる貴方ならば、

古の昔に、

その内容に目を通した事があるのでは?」


「……魔法の蒐集に随分と熱を上げている様だけどね。

君に答える義理は無いな」


「ですが貴方には国王としての義務があります。

戦力不足を補う為に僕が進言するのは、

異世界(ニホン)から、

転移者を召喚する魔法を使う事です。

転移者たちには例外や差違は在りますが、

概ね高い能力をその身に宿して、

この世界にやって来ます。

或いはこの世界で、

その能力を目覚めさせる事に長けている。

一体、

どういう理屈で何が作用するのかは、

解りませんが、

偶然では無いと僕は考えています」


「……転移者を召喚しまくって、

軍隊でも作れっていうことか」


「そうです。

副次的な恩恵として、

女神の痕跡も発生するかも知れません」


「良い事を教えてやるけどね、

物事はそんなに単純じゃないんだぜ?」


「禁忌とされるには、

何かしらの危険が伴うからでしょうか?」


「その通りだよ。

僕達(魔法使い)は全知全能じゃない。

願い事の全てを、

叶えてしまおうと思わない方が良いんだ」


「それならば何故、

この世界は女神の力を崇めて、

その全てを欲しているのでしょうか?

伝承に遺される女神の魔法は、

明らかに、

貴方の言う禁忌の領域ではないですか?」


「……だから、

物事はそんなに単純に出来てないんだよ。

もしもお前が、

原初の魔法に何か浪漫の様なものでも、

抱いているのだとしたら、

それを知ろうとする事は辞めておいた方が良い。

仮に僕が、

その転移魔法を使って、

転移者を召喚出来るのだとしたら、

何故やらないと思う?

……もうこの話は終わりだ。

もっと現実的に物事を捉えようか。

出来る事を可能な限り実現出来るように」 


「魔法使いらしからぬ発言ですね」


「魔法使いだからだ」


「……まあ、良いです。

僕としては、あの魔法書の内容に、

嘘が無いと云う事も知れたので、

今のところ満足です」


「は?お前、あの魔法書を読んだんだろ?」


「見ましたよ。

ですけど、

あまりにとんでもない内容だったので。

出鱈目の書かれた偽りの魔法書なんて、

掃いて捨てる程有りますから」


「お前……。

魔法書の真贋を確かめる為に、

僕を試す様なことをしやがったな?」


「はい。

陛下は一度も、

魔法書の内容を否定されませんでしたので」


「呆れた餓鬼だ……」


「失礼があったなら申し訳ないです。

以前も言いましたけど、

僕は魔法の根源たる何かに、

いつしか触れてみたいと、

常々考えているので。

少々、強引で頭でっかちな事は自覚しております」


「……お前は長生きしないだろうな」


◆◆


「話がズレたね。

興味を持っ(スイと)ちゃったヤツ(クジン)も、

いるかもだけど魔法書の件は忘れてくれ」


「興味深い」


「ダメだっつってんの」


「それに、イェンの言っている事もあながち、

おかしな事でも無いだろう?

禁忌だろうが何だろうが、

使えるなら使うべきではないのか?

躊躇しながら勝てる相手(聖域教会)か?」


「アホか。

煽ってるつもり?

戦力を補う策を僕も何も考えてない訳じゃない。

……それに、

スイの独り行動を許可する為に、

ヤバめの手を使うつもりは無いからな」


「えー」


我慢してくれよ?(スイ)


「策とは何だ?具体的に教えてくれ」


「お前ら……。

一応だけどさ、国王だからな?

……まあ、良いか。

まだ使者を送る段取りをしてる段階で、

何一つ確定してないんだけどさ、

魔族に同盟の協定を持ち掛けるつもりだ」


「魔族だと?」


「どうだ?満足か?」


「陛下……! 一応、国の機密事項ですので……」


何だよ?(クアイ)この国のトップは僕だろ?

機密も何も、僕の好きにさせろよ」


「しかしですね……」


慌てるクアイの姿を見て、

ようやくラオは調子を取り戻した様に、

いつも通りの軽妙な口調になっていた。


「それで、段取りの進捗は?」


「イファルの領内、

或いは近郊の諸国に根城を構えてる、

コンタクトの取れそうな連中を、

リストアップしてる最中だ」


「……(クジン)の記憶が確かなら、

中央諸国の国々と魔族は過去の歴史上では、

敵対する事が多かったと思うがな」


「その通り。

実際に侵略や支配なんてのは、

僕らと魔族の間で長年繰り返されてきた事だ」


「ならば魔族が、

イファルに手を貸す事など有り得るのか?

ソーサリースフィアで使い走りにしていた、

金で動く様な雑魚では役に立たんし、

そもそもの話、

連中には負けるであろう此方に付くメリットが無い。

放っておいた方が敵対している人間を、

駆逐されて助かるかも知れないではないか」


「ま。そういう見方もある。

知ってるだろうけど、

それに奴らは冷酷で狡猾だ。

土壇場で裏切る可能性も、

多い方から数えた方が早いかも知れない。

人間の道理の同盟なんて、

結んだところで大した意味を為さないだろうね」


「ならば時間の無駄だろう」


「そうかもしれない。

だけど、そうは思わないから、

僕は今、魔族も味方につけようとして動いている」


「そう考える根拠は?」


「魔族ってのはさ、

似たような事を言うけど、

大体がクソだ。

人間に寄り添おうとしてくる奴も居るけど、

それも結局のところ、

裏が有るし、自分の利益にならなきゃ、

幾らでも嘘を吐いて切り捨ててくる。

同じ言語で会話は出来るけど、

こっちの話なんて、

本当はまるで聞いちゃいない。

だけど、

長年生きて、

お目にかかった事なんて、

本当に数える程も無いけど、

稀に話が通じる奴らが、

居ない訳でも無いんだよね。

それでも、

人格的に褒められる様なもんじゃないけど、

状況さえ整えてやれば、

耳を全く貸さないって事は無いだろうね。

今、

リストアップしてる時点で、

此方からのコンタクトが取れそうな奴らは、

その、稀に居る話が通じそうな連中って訳だよ」


◆◆◆

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