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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
175/237

『李綱。』

※不定期に更新しています!


水曜日にも投稿したので、

今週の投稿分は2話あります!


投稿時間が今週は、いつもと違くてごめんなさい!




「挑発には乗らない様子だね」


コトハは独り言を呟いた。


「お前……、

まさか、わざとアメビックスに聞こえる様に……?」


「そうだけど?

どうせ、僕たちの会話は筒抜けだ」


「アイツが怒ったらどうすんだよ!?」


「何だよ?

その時には、やり返してやれば良いさ。

(ナツメくん)が」


「先に俺が死んじまうかもだろ!?」


「はは。そうはならないさ」


「笑うとこじゃなくない!? 根拠は!?」


「そげに慌てんさんな。

契約で縛る類いの魔法じゃろ?

互いに契約で縛りあっとるなら、

どっちが優位云うことも無いけ。

幾ら手を出したかったとしても、

十中八九、

仕掛けてくる事は無いけ。

魔法の契約の強制力と云うもんが在るからの」


ヤエファがリクを安心させる様に、

肩を叩きながら言った。


「ほ……、本当に?」


「ほんとじゃ。

それに先刻、コトハも言うたじゃろ?

魔族と云うのは、狡猾で面倒な生き物じゃ。

奴らが、そういう手段に出るのは、

身の安全を確保する為の策じゃ。

自らに危険が及ぶ様な事は、

やりたくても出来んけ。

心配せんでも大丈夫じゃけ」


ヤエファの言葉を聞いても、

リクは未だ不安そうな表情をしていたが、

それ以上、不服を口にすることは無かった。


「……アメビックスだの、リロクだの、

先程から魔族の名を次々と……。

コトハ、リク、

貴様達は……、本当に何者なんだ……?」


ようやく、

ヤエファに椅子にされていた状態から、

解放されたイズナが口を開いた。


「君はどうやら、

アメビックスやリロクの事を知っているらしい。

そんな素振りは見せなかったけれど、

まさかアメビックスも聖域教会と関係があるのかな?」


「……」


「イズナ。答えちゃりんさい」


ヤエファに促され、

イズナは渋々、コトハの質問に応えた。


「……リロクと云う魔族が、

教会と同盟の様な協定を、

以前から結んでいると聞いた事がある。

アメビックスについては、

今のところ、教会と関係は無い。

だが、

奴は、大昔から南方諸国周辺を根城にしていた魔族で、

教会はアメビックスとの接触を計っていた。

懐柔し、手の内に引き込む為にだ」


「アメビックスの工房を、教会は狙っているんだね」


「……その通りだ。

奴の持つ、様々な魔法技術や、

それに依って製造された装置、

アメビックスの能力は、

教会にとって有益になると考えられていた」


「ところが、アメビックスを中々捕らえられ無いし、

おそらく、君が南方に派遣された頃には、

既にアメビックスの工房は、

もぬけの殻になっていたんじゃないかな?」


「……合っている。

奴の転移魔法の技術の事は、

我々も知ってはいた。

コトハ、お前は奴と日本で会ったと言ったな?」


「そうだよ。あちらで、

新たな工房を作っていた。

この世界に在るモノよりも、

規模は大きいのかも知れない」


「それは本当か?」


「僕たちが見たラロカの工房には、

空間拡張の魔法の形跡が無かった。

夜逃げでもするみたいに、

何かを恐れて、とても慌てながら、

彼処を引き払った様に見えたんだけれど、

その割には、

重要そうなものは何一つとして、

遺されては無かった。

これは僕の推測に過ぎないけれど、

空間拡張の魔法は、

向こうの世界で完成されたんじゃないかな?

アメビックスが律儀に世界線を往き来して、

コツコツと、

工房に遺していったモノを回収していたなら、

話は違ってくるかも知れないけれど」


「空間を拡張する魔法が……!?

やはり、教会が危惧していた通りになっていたか……」


「空間拡張の魔法って、

アメビックスの工房で、

小さいアパートに部屋が幾つも在ったヤツか?

便利そうではあるけど……、

そんなにヤバい魔法なのか?」


あまり、状況を呑み込めていない様な表情のリクが、

コトハに訊ねた。


「使い途に因るだろうだけどね。

仮にだけど、持ち運びが出来る様なものに、

沢山の兵隊を潜ませておいたらどうなるだろう?

それに、

拡張された空間の中に、

収納出来るものが、

人間だけではなくて、魔物や魔獣、

魔法までも収納出来たとしたら?

あの魔法は、

災厄を呼ぶ立派な兵器になり得るだろうね」


「おぞましい技術だ……!!」


イズナは忌々しそうに言った。


「まあ、

聖域教会がアメビックスの魔法を手に入れたとして、

その使い途は想像に容易いと僕は思うけれどね」


「黙れ!! 

貴様には判らんのか!?

その様な魔法、

魔族などに独占させて良い技術だと思うか!?

人間を喰い物にする悪の根源、

奴らには信仰心や慈悲など無い!!

凄惨な悲劇を産み、

大勢の人民が命を落とすだろう!!

世界をみすみす危険に晒すならば、

教会で保管していた方が道理に叶うだろうが!?」


「ヤエファの幻術に囚われても尚、

失われない君の篤い信仰心は、よく判ったよ。

さて、ナツメくん。

そろそろ行こうか?」


「ま……、待て!!」


「何だい?」


「……恥を忍んで、最後に訊きたい事がある」


「何だろう? 僕にわかる事ならば答えるよ」


「アメビックスの口から、

東暁(ひがしあかつき)と云う、

女の子の話は聞かされていないか……?」


「東暁? いや、聞いてないな」


「そうか……」


「変わった名前だけど、

その娘も転移者かな?

イズナの知り合いかい?」


二月二日ことは(お前)が言うなよ……」


「ああ……、彼女は……、聿花(いつか)は、

私と同じ転移者だ……。

私はイツカの事をずっと捜している……、

彼女は私よりも、

ずっと前に、この世界に転移して、

私は、イツカの後を追って、

この世界に来たんだ……」


「後を追って?

それは一体どうやってなのだろう?

君は向こうの世界で、元々魔法を使えたのかい?」


イズナはコトハの視線から眼を逸らさなかった。

その後には、

声と身体を、

周囲の者達に憐憫の情を抱かせる程に、

小刻みに震わせながら、

とても小さな声で語りだした。


「……詳しくは言えない。

図々しい願い事をして、

恥知らずなのは百も承知だ、

ただ、今、

アメビックスの名前を聞いて、

ひどく心を揺さぶられている。

敵である貴様に、

縋って教えを乞う事など、本来あってはならないのに、

私は、

ほんの小さな情報でも良いから、

イツカの事を知りたい……。

私の名前は、

東暁李綱(ひがしあかつきいずな)

イツカは、私の肉親、

妹なんだ」


◆◆



♪Baby shambles  

『Carry up on the morning 』

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