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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
171/237

『再会を祝すのだ。』

※大体、金曜日か土曜日に更新してます!





イズナは虚ろな表情をしていたが、

時間が少しずつ経つ度に、

混濁としていた意識は幾らか元に戻り、

自分を見下ろすヤエファの顔も認識は出来ていたが、

身体は絶望的な程に重たく、

起き上がる事がどうしても出来なかった。


ヤエファが自分に向けて、

何かを語りかけて来ている事はわかったが、

言葉の詳細を理解する事は出来ず、

集中して聞き取ろうとする事も儘ならない程に、

自分の身体が酷く疲弊、

或いは重大な損壊を受けているのだと知った。


朦朧とした彼女の意識は、

ようやくそれだけを理解すると、

再び泥の中に沈み込む様に閉ざされようとした。


「ほれ司教様。目を覚ましんさい」


ヤエファがそう言いながら、

イズナの頬を指で軽く突いた。


「……一体……、(イズナ)に、何をした……?」


生気の無い掠れた声だった。


「身体が言う事を聞かんじゃろ?

たまげるくらいに強烈な幻覚を、

一秒の間に脳ミソに何百と刷り込む幻術じゃ。

体感では、わからんかったじゃろが。

お前の脳ミソは今、

多すぎる情報を処理しきれんくなっとる」


「私が幻術如きでやられるものか」


イズナはそう口にしたかったが、

パクパクと口を僅かに動かせただけで、

声にはならなかった。


「ま。勿論、只の幻覚じゃないけ。

お前が眼を背けたくなる程、

心底、恐ろしいと感じとるものを、

抵抗出来んまま、

無理矢理に脳裏に焼き付けられたんじゃ。

発狂したとしても、おかしくは無いけの」


「随分と手荒な事だね」


コトハが茶化す様に言った。


「あのまんま続けとれば殺られとったんは、

わっちの方じゃけ。正当防衛じゃ」


「昔、(ヤエファ)と戦った時にも、

こんなに恐ろしい魔法を使ってきたのかい?

思い返したらゾッとするんだけど」


「何を言うとるんじゃ。お前(コトハ)にゃ、

いっそも(少しも)通用せんかったけの。

それにしても。

この女、油断しとった云う訳じゃ無いんじゃろうがの、

えらい(すごく)

すんなりと術にかかってくれたもんじゃ」


「ナツメくんが、

呪縛魔法やスキル妨害を何度か、

彼女に使用していたからじゃないかな。

簡単に解除はしていたけれど、

魔力(異物)が何度も体内に入って来て、

君の術にかかりやすい下地が、

出来上がっていたのかも知れないね。

彼の魔力は、とても異質なものだから」


「リクちゃんが呪縛魔法?

へえ。そりゃ見んうちに成長したもんじゃの」


「彼は一体何者なんだろう?」


「そりゃ、わっちが訊きたい。

お前と同じ転移者じゃ。

何故、転移者云うものは、

誰も彼もがバケモノじみとるんじゃ?」


「バケモノなんて酷いな」


わっちら(亜人)を、

この世界の者はバケモノと呼んで腫れ物扱いじゃが、

お前達の方がよっぽどじゃと、

わっちは思うがの」


「僕に言われても。

でも、僕やイズナをバケモノと呼ぶのなら、

イズナを倒してしまったヤエファも、

立派なバケモノだよ」


「ふふん。何せコトハの危機(ピンチ)じゃったけ。

それを救おうと云う、わっちの愛の力じゃ」


「何でそうなるの?よく解らない」


「追い詰められりゃ、鼠も猫を噛むっちう事じゃの」


「僕には君が追い詰められた様には思えなかった」


「そりゃ買い被り過ぎじゃ。

わっちはユン姉みたいに一対一(サシ)()るんは向いとらん。

こう見えても幼気(いたいけ)な女じゃ」


「これほど迄に強い君のどこを見て、

僕はそう思えば良いのだろう」


「いけずじゃの」


「ところで」


コトハはそこで一旦、言葉を切った。


「君は此処で何をしていたのだろう?

偶然、通りかかったにしては余りにも、

僕達に都合が良過ぎる」


「そういう事は往々にして在るもんじゃ。

ま。勿論わっちも、

物見遊山で此処に()った訳では無いがの」


「何か目的が有ったんだね」


「久しぶりに()うたのに冷たいの」


「冷たくしてる訳じゃないよ。

それに助けてもらって、君には感謝している」


「わっちの魔力を感知せんかったのを、

不審に思うとるんじゃろ?

コトハくらいに眼も鼻も効くんなら、

当然の疑問じゃ」


「まあ、そうだね」


「この街にゃ便利なもん(転移門)が有ったけ、

丁度、()えくらいに利用させてもらったんじゃ」


「転移門を?

この街は今、厳戒体制に在ると聞いていたけれど、

よそ者に簡単に使わせてくれたのかい?」


「ま。そこはそれ。

わっちにゃ幻術があるけ。

姿を偽るのにゃ苦労はせん」


「それに。

城壁の向こうが妙に静かだ。

責任者らしきイズナが倒されて、

かなり騒がしかった筈なのに、

増援が来る様子がまるで無い。

この街の兵隊では無さそうな人が何人か居るけれど、

君の連れかな?」


「気づいとったか。

街の者は皆、動けん様にしてある。

中に居るんは、わっちの義妹らじゃ」


「やっぱり、

君と此処で出逢ったのは偶然では無さそうだね」


「亜人ちう者は、鼻が効くからの。

訝しむ気持ちも解るが、

惚れとった女に、ようやく出逢えたんじゃ。

運命の再会に感動しよる、

わっちの気持ちも汲んで欲しいの」


「わかったよ。

僕も君の事は大切な友人だと思ってる。

助けてくれてありがとう、ヤエファ。

僕もまた君に逢えて嬉しいよ」


「……。

相変わらず、わっちの調子を簡単に狂わしてくれる。

こげに惚れてしもうたんも、

わっちの気の迷いじゃ無さそうじゃの」


◆◆

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