『互いに脅威だった件。』
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「ハァハァハァハァハァハァ……!」
───こんな筈では無かった。
イズナは呼吸を整える為に深く息を吸いながら、
そう思っていた。
「おや?どうしたん?息荒くなっとらん?」
「黙れ!」
「攻撃が当たらんと云うのは、
さぞかしストレスに感じるもんじゃろ?」
「うるさい!!」
「むう。黙っちゃらん事も無いが、
それで解決すりゃ世話無いと思うがの」
まるで歯が立たない。
「馬鹿にしているのか!?」
ヤエファの悪意に満ちた殺気や、
異常なまでに跳ね上がった魔力は、
確かにイズナに身の恐怖を感じさせるに値するものではあったが、それでも、
基本的なステータスはイズナの方が上だった筈なのだ。
ヤエファの挑発にペースを崩されたのは事実だったが、
格下である筈の相手に、
翻弄され、軽くあしらわれている。
イズナには、その事象が全く呑み込めず、
理解が出来なかった。
(何だ……! 何なんだ一体……!?
この女、何か妙な能力を使っているのか?
私の攻撃が当たらないだと!?
祝音で私の能力は最大限に引き出されているんだぞ!?)
イズナは自分の身体中を巡る強い魔力を、
頭の中で意識し、抽象的なイメージで形に捉え、
確かにそこに在ることを確認していた。
それは、
制御を誤ってしまえば、
今にも弾け飛んでしまいそうな程に荒々しい代物で、
感知出来得る限り、
この場に居る誰よりも強いものの筈だ。
「貴様……!
何をした!? 私に何か幻覚でも見せているのか!?」
「はん。そげなチャチな事する訳無かろ。
わっちの見立てじゃ、お前の能力は力の増強じゃ。
それも半端なもんじゃないけ。
感知やらの類いも桁外れに鋭く行使できる筈じゃ。
そんな相手に幻術なんぞ使ったところで、
魔力の無駄遣いじゃろ。
それとも、
自分の能力に自信が無いんかの?」
「貴様……!」
「ま。何で攻撃が当たらんかは教えちゃらんがの?
わっちに一発でも当てれりゃ、
そん時にネタを明かしちゃる」
「私相手に随分と余裕なものだ……!
遊んでいるつもりか!?」
「まさか」
ヤエファは鼻で嗤う様にして言った。
「お前は強い。
油断すりゃ、やられるんは此方じゃ。
どうやって倒すか、算段しよる最中じゃけ」
ヤエファが言った事は半分だか事実だった。
確かにイズナの攻撃を喰らう事は無いが、
紙一重で躱している感覚を拭いきる事は出来なかった。
当たれば、即死に近いダメージを与えられてしまうかも知れない。
そう考えれば、
生身で攻撃を避ける事はリスクが高過ぎる。
ヤエファはきっちりと、幻術を発動させていた。
イズナの鋭い感知能力を前にブラフで通せる筈も無いと考えていた為、巧みに魔力の痕跡を隠しながら、
攻撃を受ければ虚像が消える様な単調な術式では無く、
何重にも複雑に幻術を張ると云う離れ業をやってのけていた。
だが、このままバレない可能性は限り無く低い。
魔力の消費も半端では無い。
少しでも感づかれたら、あっという間に魔力を辿られて本体へ直接攻撃を喰らってしまうだろう。
危機的な状況で在るにも関わらずに、
ヤエファは自分でも可笑しくなると感じる程に、
ひどく冷静に分析を重ねれる程度に落ち着き払っていた。
(この女、ノーコン。ちう訳でも無さそうじゃ。
力の使い方はしっかり把握しとる。
ちと、頭に血が昇り易いんじゃの。
尾っぽは見え隠れしとる筈じゃが、
わっちの言葉に真剣に腹を立ててしまっとるけ、
気づきよらん。
……アホじゃの)
盲滅法に攻撃を撃ちまくり出したイズナの攻撃を躱しながら、
ヤエファは隙を付け狙い続けた。
しかし、中々攻撃は仕掛けられない。
自棄になっての行動かと思いきや、イズナの攻撃には隙は不思議と産まれていなかった。
間違い無く、
ヤエファの術中に嵌まり、困惑し、
苛立ち続けているのは間違い無い。
優位に立っているのはヤエファの様に思えるが、
イズナを劣勢に陥れた感覚は全く無かった。
息切れも起こし、疲労が溜まっている筈だが、
イズナの魔力は底無しかと思える程に、
攻撃の手を一矢も乱れさせる事が無く、
次から次へと休む暇も無く撃ち続けられた。
(参ったの。
並みの相手なら、
このまま放っておきゃ勝手に潰れるじゃろが、
この女、全く魔力切れを起こしゃせん。
これじゃ、先に此方がネタ切れじゃ。
一撃で決めちゃろう思うて、
先刻から、上位の攻撃魔法ばっかり撃ちよるのに。
一体どうなっとるんじゃ?
只の天恵者云う訳じゃ無さそうじゃの。
……なんぞ、カラクリが在るか?)
ヤエファは未だ冷静なままだった。
───圧倒的な火力不足。
常に仕掛け続けられるイズナの攻撃は、
ヤエファの思考を微かにだが、
確かに少しずつ乱していく。
イズナとしては謀らずともな必死の猛攻だったが、
その一撃は重たく、
命を脅かす攻撃をギリギリのところで躱し続ける重圧を感じ続ける事は、
乱されていく思考と意識の乖離を招いた。
「───ッ!!!」
本当に皮一枚だった。
着物を切り裂かれ、ヤエファの脇腹から血が噴き出た。
ダメージなど殆ど無いに等しいが、
幾重にも重ねた幻術を破られてしまった。
これに因って、
万が一にもイズナがヤエファの幻術に気づいてしまえば、この一撃は死の宣告と同義でしか無かった。
ヤエファは苦笑いを浮かべて、
誰にも聞こえない様に小さな声で呟いた。
「……こりゃ、まさか詰んだかの?」
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連休最高ですねー
今日のBGMはDECO*27でキメラでーす!
カッコよ




