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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
167/237

『マスカレード。』

※不定期更新中です!



イズナは、自分のステータスであれば、

リクの呪縛魔法に捕えられたとしても、

抵抗するだけの値を持ち合わせている筈だと考えた。


イズナの推測通り、

確かに呪縛魔法は身体を拘束していったが、

すぐさま魔法抵抗の判定が行われていき、

呪縛の解除が始まった。


(ほんの数秒の間の事だ)


解除が始まると、イズナは呪縛が解かれるまでの時間を体感で把握する事が出来た。


(しかし)


イズナはリクの次の攻撃にどうやって対処しようかと、

思案をしていた。


(この男(リク)

先刻の私の攻撃を確実に見切っていた。

攻撃の予測を行う能力か?

使えたとしても、縮地魔法の速度よりも迅く、

あの一瞬の間にか?

だとすれば……、同じ攻撃は通用しないのかも知れない)


そして、

更にイズナがリクを警戒せざるを得ない要因として、

リクの使う呪縛魔法を受けて初めて判った事だったが、

闇属性の性質を含んでいたのだ。


それも、

魔族が操る術式の様だった。

能力差があると云えど、

イズナの得意とする光属性の魔法との相性の悪さは無視する事は出来ない。


イズナの攻撃は大きなダメージを与えられるだろうが、

リクからの攻撃があれば、

属性の相性から云って、

イズナ側にも同様の事がいえる。


呪縛が解けた後に、

迂闊に勝負を急ぐ事は避けた方が良いだろう。

イズナはそう考えた。


(複数の系統がバラバラの能力。

模写系の魔法か?

だとすれば、

既に私の能力を模写されているかも知れない。

模写によって、実力差を埋められてしまうとマズいな)


呪縛が解ける瞬間に、イズナは素早く詠唱を始めた。


呪縛がかかっている間に、

リクが攻撃を仕掛けて来ないことを不審には思ったが、

その真意を確かめる事は、

些かリスキーであると結論づけた。


(戦闘に関しては素人なのは間違い無い。

カウンターの攻撃が得意なのか、

或いは、

攻撃の手段を持っていないか)


詠唱を終えたイズナの手から、

光の矢が放たれようとした時、

リクは妨害のスキルに依って、

魔法の発動を再び封じ込めた。


(……私の詠唱よりも迅い!!

無詠唱の魔法だと?

そんな規格外の相手が二人も揃ってたまるか)


イズナはリクによる魔法の阻害が、

長時間に及ばない事には気づいていた。


直ぐ様、次弾を撃ち込んでやるつもりで、

再び詠唱を始めた。

イズナの推測の通り、魔法の発動阻害は一瞬の事で、

阻害された間に途切れた魔力は直ぐに元通りに戻っていく。


しかし、

リクのスキル発動の速度は尋常では無かった。


詠唱無しで発動出来ると云う長所(メリット)を、

彼は感覚的に掌握し、

意識的、或いは無意識的に、

イズナの魔法の発動に合わせて妨害のスキルを発動させる事が可能になっていた。


そして、

何度目かの妨害が行われ、

イズナは焦り出していた。


(遠距離の魔法を撃てば阻害されて消される。

近距離に持ち込もうとすれば、

浮遊魔法で間合いを取られて躱される……。

馬鹿な!?

しかも、こちらの読みを見透かした様に、

必ず範囲外に間合いを取られる……。

一体何者なんだこの男は!?)


イズナは始めた詠唱を一旦取り止め、

縮地魔法でその場を離れ、リクから距離を取った。


(落ち着け……!

こちらの攻撃は当たらないが、

見たところ、リクの手数は明らかに少ない。

魔力の操作が異様に巧いが、

総量は大した事は無い。

手数の少なさがブラフだとしても、

このままいけば必ず魔力が底をつく筈だ)


そこまで考えたところで、

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リクを倒した後に、

コトハと戦闘になると考えていた為、

出来るだけ魔力を温存するつもりだったが、

この状況ではそうも云っていられないのだ。


(最悪、リクを倒した後に撤退すれば良い。

この男はただのオマケの存在などではない……!

間違い無く脅威……、聖域教会を……、

いや、この世界……、

神秘、奇跡の力、魔法と云うものの存在する世界を、

根底から覆しかねない存在だ……!!)


そして、

イズナは片手で顔を覆う様な仕草をした。

スラリとした長い指には、

紋様の彫られた指輪が幾つも嵌められていて、

イズナの小さな顔を手が覆ってしまうと、

まるで仮面を着けている様にも見えた。


「ナツメくん。何かするつもりだよ」


「わかってるよ!!」


リクはコトハの忠告に反射的にそう応えると、

イズナの魔力が膨れ上がろうとするのと同時に、

妨害のスキルを発動した。


イズナはそうやって再び、

能力を封じ込められる筈だった。


しかし、

リクの妨害がイズナに届く事は無く、

イズナはリクの視界から消え失せていた。


「速ッッ!?」


微かに地を蹴る様な音がした瞬間、

イズナは二人の前に姿を現した。


その顔には、

余裕を取り戻した様に見える微笑みを浮かべている。


お前(イズナ)……! どんだけ迅いんだよ!?」


「それだけでは無いぞ?」


イズナが笑いながら言った後に、

呪縛魔法で縛られた筈の兵隊達が、

ヨロヨロと立ち上がり始めた。


「魂に干渉する呪縛魔法とは厄介な術式だな?

どうやら貴様(リク)は模写系の能力に長けている様だが、魔族の魔法の術式を写し取るとは恐れ入ったぞ」


「……恐れ入った割には、

余裕で解除してくれるじゃねえか」


「フッ……!残念だが、

私がこの者達に施した魔法も魂に干渉する性質を持っている。

貴様の能力も、

私のそれに上書き出来るだけの強力なものだったが、

根本的な実力差がものを言ったな?」


イズナがそう言うと、

彼女の顔に紋様なものが浮かび上がり始めた。


「それに言っただろう?

私には祝音(コード)の恩恵があるのだ。

冥土の土産に貴様に教えてやるが、

私の祝音は、

巫覡粧(マスカレード)』。

女神の力を自らに降ろし、力を付与し、一体化する。

その行為は魔力の莫大な増量と、能力の強化だ。

スキルを多用した戦闘で、

今の私に勝てるとは思わない方が良い」


「……冥土の土産なんて台詞、

本当に使うやつがいるんだな」


「苦し紛れの悪態なら幾らでも吐くが良い。

縮地魔法も攻撃魔法も、先刻の比では無いぞ?

喜べ。楽に殺してやる」


イズナがそう言った次の瞬間、

リクは弾き飛ばされる様にして、

見えない拳で殴り付けられた。


防ぎようの無い速度の、その攻撃は重く、

鉄塊が直撃した様な衝撃によって、

苦しみの喘ぎ声を上げる間もなく、

リクの身体は遥か後方へと吹き飛んでいった。


「ナツメくん!」


コトハは吹き飛んでいくリクの身体を、

受け止める様に、魔力を込めて大地を蹴りあげ、

瞬時に後方へと移動すると、

その華奢な身体全体に魔力を巡らせ、

彼女はしっかりとリクの身体を抱き止めた。


しかし、

凄まじい土煙を上げてリクを抱き抱えたまま、

コトハはその場に倒れ込んでしまった。


「フッ……!

無駄だ。防御魔法の基礎すら知らんのだ、

既に死んでいるだろう」


リクとコトハが、もつれあって倒れ込んだ今を機に、

イズナは二人とも葬るつもりで、

眩い光と共に射程範囲の広い魔法を放った。


倒れ込んだものの、

しっかりとイズナの動向から目を離しておらず、

迎撃するつもりで詠唱を始めた。


その瞬間だった。


熱も光も無い、

奇妙な炎が両者の間に巨大な火柱を立てた。


「なんだ!?」


イズナは驚き、詠唱は途中で中断された。


突然起きた火柱の中に、

人影が見えた。


「こりゃたまげた(驚いた)の。

野次馬のつもりで来たが、こげ(こんな)偶然もあるもんじゃの」


火柱の中で楽しそうに身体を揺らし、

人影は笑いながら言った。


「久しぶりじゃの。コトハ」


煌めく様な美しい黄金色の髪を掻き上げ、

狐の耳と尾を持った亜人の女は鋭い犬歯を覗かせた。


「久しぶりだね。ヤエファ」


「相変わらず別嬪じゃの」


ヤエファは嬉しそうに言って、

コトハに小さく手を振った後、

イズナの方を向き、彼女を睨み付けた。


「おい。そこの女。

どんな事情があるか知らんがの、

この娘は、わっち()の嫁じゃ。

いなげな(おかしな)事しよるんなら、

生かしちゃおけんのじゃがの?」


甘いバニラの香りが、

辺りに艶やかに漂った。


◆◆







脳内BGMは、

“じゃあ君の思想が死ねばいい”でした!!


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