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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
165/237

『二対一という状況について。』

※不定期更新中です!


読んでくれてる人ほんとにありがとうございます!


めちゃめちゃに更新遅いですが、

自分のこと忘れないでくださいー!



イズナはチョコレートを口にしていなかった為、

呪縛魔法の影響を受けてはいなかったが、

イズナの操る兵隊達の動きを縛る事が出来たと云う事実はコトハとリクにとっては有益な情報だった。


(イズナ)の術式に上書きする形で、

操作魔法に介入出来た。

つまり、

君にもナツメくんの呪縛魔法は通じるって事だね」


()()()()()

だが、お前達は私の迅さについて来ることは出来まい」


「そうだね。根本的には解決していない」


「えらく余裕だな? 

リクの能力は確かに得体の知れない能力だが、

私に楽に当てれると思わない方がいいぞ」


「そんな事は思ってないさ。

僕は君の縮地魔法も、君の存在も、

何一つ見くびってはいないよ」


お前(コトハ)の様なタイプが一番危険だと私は思う。常に状況の把握と先の想定を繰り返し思考し続けている。

お前のペースを打ち崩す事は決して容易では無いだろう」


「それはどうも」


「だが、私とて容易く敗けはしない。

お前の様な思考の先行型を捩じ伏せる、

圧倒的な実力を私は持っている」


「凄い自信だね」


「お前の様な相手と戦うのに、腰が引けていては話にならないだろう」


「良い心掛けだ」


そう言った瞬間に、

コトハはイズナの視界から音も無く消えた。


(迅いッ!!!)


イズナは魔力感知を自分の周囲に集中して張り巡らせ、

コトハの位置を探ろうとした。


それは魔法使い同士の戦いに於いて、

半ば習性の様に行われる動作だった。


そして、コトハの魔力から弾き出された、

彼女の位置を特定するよりも先に、

既に攻撃の態勢に入る。


イズナはコトハが展開の迅い攻撃パターンを組み立てるタイプである事を悟っていた。

遅れを取らない為には、

コトハの攻撃よりも更に迅く動く必要がある。


狙いを定めるのは後回しでも良いとイズナは考えた。


多少威力が落ちても、

効果範囲の広い攻撃魔法を撃って、

コトハの戦闘力を削ぐのが先決だと思いながら。


イズナ程の実力者であれば、

頭で考えるよりも先に、身体が動く事もある。


そして経験が慣れを産み、

慣れが油断に代わり、

そこに隙が生じる事も。


イズナの魔力感知の精度は高く、

()()()()()()()()()()()()()と知っていた。

その為に、肉眼で見えるものよりも魔力感知を優先させる癖の様なものがあった。


本人でも、

それに気づく事の無い小さな誤差の様なものだ。


しかし、コトハはそれを見逃していなかった。


数多の魔法使いと魔族を葬ってきた。


彼らが、

無意識的に魔力感知を頼りに、

戦法を組み立てる事も、

半ば依存に近い形でその行為を行っている事も。


自分の姿を眼で追う事を止め、

イズナが魔力の操作に注力する瞬間を、

コトハは眼で捉えていた。


イズナは知らなかった。


コトハが、かつてこの世界(異世界)で人類最強と呼ばれる事になった由縁(ゆえん)を。


コトハの()()姿()()()()()()()()が、

如何に危険な行為かと云う事を。


イズナの魔力感知がコトハの位置をほんの僅かにだが、

特定した。


彼女は消えてなどいない。


イズナは特定された位置に向けて、

攻撃魔法を放つ構えを取った。


限界まで高められた詠唱速度上昇スキルに依り、

言葉が全く聞き取れない程に迅かった。


コトハは今、イズナの後方に回っている。


肉眼で確認するよりも先に、

魔力感知がそう知らせた事を、イズナは疑いもしなかった。


「僕は君を見くびっていない。

だから君も僕を甘くみない方が良かったんだ」


それだからこそ、

自分が攻撃魔法を撃とうと振り返った瞬間に、

思わぬ方向から、コトハの声が聞こえ、

全身を凍てつかせてしまう様な悪寒に襲われてしまった。


(幻覚魔法か!? 

しかし、魔法の発動なんて感知しなかったぞ!?)


イズナは無理矢理に態勢を変えようとしたが、

その刹那、

唇に何かが触れ、

その感触が人の指だと気づいた時には、

既に眼前にコトハが現れていた。


溶けかかったチョコレートが口の中に押し込まれ、

脳天に突き刺さりそうな甘い香りがした、

その瞬間。


イズナは迷わずに喉の奥に指を突っ込み、

危うく飲み下しそうになったチョコレートを胃液と共に激しく吐き出した。


「うぉぇえええッ!!!」


それを見たコトハとリクは眼を丸くして驚いた表情を浮かべていた。


「とても正しい判断だとは思うけど……。

女の子が人前でやるにちょっと大胆な行動だね」


「……(リク)もそう思う」


イズナは前屈みになり、苦しそうに茶色の液体を口から吐き出しながら、それでも不適な笑みを二人に見せた。


「ハァ……、ハァ……。

男だとか……、女だとかは関係ないだろう?

……残念だったな。

媒体(チョコレート)無しでは呪縛はかけれまい」


「こ……、怖いんだけど……」


「転移者のよしみで手荒な真似はしたくないんだけど」


怯えるリクの肩に手を載せて、

コトハがゆっくりとそう言った。


「抜かせ。手加減などしていないだろう。

貴様(コトハ)は初めから私を殺すつもりだった」


「手加減して勝てる相手かどうかくらい、

僕にだって分かる」


「私も同じだ」


先程まで苦しそうにしていたイズナの呼吸が段々と整えられて、

彼女は姿勢を正して深く息を吸ってゆっくりと吐いた。


「しかし、私は貴様達の事が段々と気に入ってきた。

教会への入信は望めないとしても、

私の魔法で手駒にする事は不可能では無いだろう」


「それは止めておいた方が良いと思うな。

ナツメくんは君の術式に上書き出来た。

もしかしたら、もう君の操作魔法は通用しないかも知れない」


コトハがそう言うと、

イズナは憎々しげな視線をリクに向けた。


「或いはそうかも知れない。厄介だ。

そこで、私から提案がある」


「提案?」


「そうだ。ここはひとつ、私と貴様(コトハ)の、

一対一(サシ)で決着をつけないか?」


「僕たちがその提案を呑むメリットは何だろう?」


「考えてもみろ。二対一だ。

私にはどう考えても不利だ」


「呆れたな。

始めに大勢で襲いかかってきたのは君の方じゃなかったかな?」


「それにコトハ。

貴様、私の魔力感知をどうやって躱した?

祝福者(ギフト)では無いと云うのは本当か?」


「さあね。スキルの鑑定なんて何年もしてない。

それに、自分から種明かしをすると思うかい?」


「あの速度で動かれて、

魔力も感知出来ないとなると、

いよいよ私にとって不利だ」


「勝負なんだから、そういうものなんじゃないかな?」


「お……、おい。こんなにゆっくりしてないで、

さっさと倒した方が良くないか……?

どう考えても時間稼ぎだろ……」


「フッ……! 私がそんな策を構ずると思うか?

……と、言いたいところだが、

何よりも貴様(リク)の能力が未知で厄介だ。

対策を立てる為にも、確かに時間は欲しい」


「そんな時間与えるかよ……!」


リクはイズナの能力を封じ込めようと、

スキルの発動の構えをとった。


「それならさ」


コトハが割って入る様にして言葉を発した。


「君とナツメくんが一対一で戦うかい?

だいぶ時間を喰ってしまった。

もう僕たちとしても、是が非でも遠回りは避けたい。

君が降参する気が無いのなら、要求を呑もう」


「は!?」


リクが驚いてコトハの方を見る。


「よし」


満足そうにイズナが頷いた。


「いやいやいや!? 待て待て待て!?

そんな正々堂々とやる必要ある!?

二人で戦った方が良いだろ!?

もしくはお前(コトハ)が戦うか!」


リクの言葉を聞いて、コトハが少し顔をしかめるような表情をわざと作ってみせた。


「ナツメくん。

君は女の子に戦わせて、

自分は見学しておくつもりだったのかい?」


「いや、お前を通常の女の子枠に入れていいのか、

俺には疑問だ」


「えー? ひどいよ」


「お前の方がどう考えても強いだろ!」


「決めた。

僕は君がやられそうになっても手助けしてやらない」


「ちょ……! 待て!」


「イズナ。それで良いかな?」


「無論だ。しかし、

リクが私に負けたら、貴様はどうする?」


「その時には、諦めてナツメくんを置いてきぼりにして、遠回りをするよ」


「よし」


「よし、じゃねえ!!」


「フッ……!

往生際が悪いぞ? 

貴様なら私と対等に渡り合えると思ったからこその、

コトハの判断だろう。

私にとっては不愉快だが、誇っても良い事だ」


イズナはリクの方を向いてそう言った。

その次の瞬間には、

リクの眼前にイズナの顔が現れ、

リクの顔面に拳が叩き込まれた。


「……ッ!!?」


頭蓋骨の中から揺れる様な衝撃に、

リクはあっけなく膝をついた。 


「何だ?戦闘慣れはして無さそうだったが、

まさか本当に素人か?」


殴られた顔面の半分が猛烈な勢いで腫れていく様な熱さを感じた。


「魔力を込めた打撃の防ぎ方も知らんとはな。

コトハ。勝負は思ったよりも早くつくかも知れんな?」


イズナの言葉が、奇妙な響き方に聞こえ、

リクは殴られた箇所が自分の鼓動に合わせて痛むのを感じていた。


◆◆

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