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第十六話『出発と初めてのスキル発動。』


「おお!ユンタ久しぶりじゃの!元気にしておったか?」

リンガレイが嬉しそうにユンタに声をかけた。


「リンちゃんお疲れー。元気だったよー。ウチもスイのパーティーに入るからよろしくね」


「ユンタがおるなら安心じゃのう。リクはどうじゃった?スキルは良いのがあったか?」


「あ…まぁ、はい……なんか期待させてしまってたらすみませんけど……」

気後れしながらリクが返事をした。


「国王様、とりあえず支度が整いましたから明日の朝から出発しようと思っています」


「うむ。急な行程を強いてすまんの」


「別に私は構いませんよ」


シャオが申し訳なさそうに手を挙げた。

「あの……。すみません……。ひとつ連絡を忘れていたんですが……。一旦イファルに戻ってきてもいいですか?イファル王と両親に正式にパーティーに参加することになったと伝えに行こうと思うのですが……」


「えーーそれならウチらも一緒にイファルに行けば良くない?」


「お気持ちは有難いのですが………。確か痕跡が見つかった場所ってイファルからは正反対の場所では無かったでしたっけ…?大きく回り道をさせてしまうので………」


「そっかーー、残念」


「うん。わかったよ。それなら私たちは目的地に着いたら一旦シャオを待とう」


「はい!待っててください!!」


「じゃあ、目的地で落ち合おう」


「それでの、その目的地付近に駐屯地を構えている部隊から連絡があったんじゃがの……なにやら魔物の動きが活発化しておるようじゃ。やはり痕跡の影響じゃの」


「気をつけて行きます。シャオも1人で来る時には気をつけてね?」


「スイ………。私はスイが心配です!!!

本当は帰りたくないんですからね!?……スイ、許してくださいね……?私は常にスイの傍らにいたいし、常にスイを見ていたい……本当は片時も離れたくはないんですよ……!?離れている間も私の愛は決して揺るぎませんから!!ハァハァ……!だからイファルから飛んで行きますから待っていてくださいね!?ユンタさん、リクさん、スイの事をよろしく頼みましたからね!?」


「お、おう」 「おっけーー」 「シャオ。ハァハァしないで」


◆◆


翌朝、シャオは名残惜しそうに何度も振り返りながら手を振ってイファルに戻っていき、三人は女神の痕跡が見つかったという場所の近くにある村に向けて出発した。


「やっと冒険の旅に出たって感じだな!興奮を禁じ得ないんだが!!」


「君は朝から本当に元気だよね。少し歩くからあまりはしゃいでると疲れるよ?」


「ニホンの人ってやっぱウチらの世界珍しいんだろね」


「みんな楽しそうにするよね」


「俺はさ、元いた世界でオタクってほどでも無いんだけどゲームは好きだったから。ゲームの世界そのものって感じで感動だよ、めっちゃ感動してる!」


「見たまんまガキだねーーー」


「うるさい!あ、それよりさ、ユンタって歳いくつなんだ?」


「うわ、こいつデリカシー無いな。リクっち絶対女の子にモテないだろ」


「ユンタ、気にしているかもだからやめてあげて?」


「本当だわ!!」


「亜人はさー基本長生きで外見の歳取るの特別遅いのがいるからねー。ま、ウチなんだけど。多分リクっちが思ってるより全然年上だよ」


「やっぱり?王様にもめっちゃ気安く喋るからそんな気がしてたんだよ」


「リンちゃんてさ、王様。て感じじゃなくない?笑」


「ユンタは私が子どもの頃からずっと外見が変わっていないね。いつ見てもすごく可愛い」


「えーーーやだーースイちゃんありがとうーーー好きーーー」


「それとね、リクはエルフとか猫耳とかが大好きなんだ。だからユンタの事を見てハァハァしていても許してあげてくれる?」


「うわ」


「うわってゆーな!!」


「ニホンの男はスケベだねー。ウチに惚れんなよ?」


「惚れんわ!!」


「それとリクは大きな胸の女の子が好きだからね」


「それ腹立つなー。ウチ見てペチャパイとか思ったろーーー」


ユンタは自分の胸を触りながら毒づいた。上着が大きなシルエットな為かユンタには胸がほとんど無いように見えた。


「つーことはシャオちんとか超タイプじゃん?クォーターだけどエルフだし?」


「べ、別に!それにパーティー内で恋愛とか御法度だろ?」


「関係なくない?なに?マジでシャオちん狙ってる感じ?」


「違うわ!!」


「一応シャオにも注意喚起しておいたんだけどね。リクがシャオの胸ばっかり見ていたから」


「マジーーー?キモ笑」


「あの……もう、やめてもらっていいですか……?」


「アハハ。ついついリクをからかってしまうね。それより魔物が出た話が気になるな。集落の人たちは大丈夫だったかのな?」


「久しぶりだよねー?人間襲うようなのが出るのって」


「ちょっと気をつけた方がいいかも知れないね」


「俺、そういえば武器とかなんにも買ってもらってないんだけど…?」


「あ」


「忘れてただろお前……」


「うん。ゴメン。でもリクのステータスを見るに武器とかを下手に扱うのはおすすめしないかな」


「腕力も器用さも無いからか……」


「人それぞれ適正はあるさ。なるべく無いようにしたいけど、戦闘はユンタと私に任せて、リクはスキルの発動に集中して能力の確認をしていたら良いよ。それにヤンマの呪符(スペルカード)も昨夜貼っていたよね?多少噛まれたり引っ掻かれても大怪我はしないだろうから大丈夫」


「試しにウチらのを見せてみたらどーかなーー?」


「まだリクのスキルのレベルが低いからね。ユンタの召喚術は複合された上級スキルだし無理かも知れないね」


「足引っ張ったらゴメンな」


「いいよ。全然気にしていないから心配しなくていい」


「そそそ。ウチらに任せときなーーー」


そうしてウィソを出発してどれほど歩いただろうか、昼を過ぎたあたりで、目的地の村を発見した。


「あれか?」


「そうだね。さっきから偵察用の子を飛ばしていたけど、近くに魔物の気配は無いから安心して大丈夫だよ」


「お、おう」


村はシンとして静まりかえっていた。魔物どころか人の気配も無いように思えた。村の中央にある教会の他に畑といくつかの建物があるだけで本当に小さな村だった。


「誰もいなくねーー?どっかに避難してるとか?」


「そうかも知れないね」


「何処か店か酒場なんか無いのか?入ってみようぜ」


「うーん、とても小さなところだからね。普通のお家ばかりだね。拠点にしようかと思っていたけど宿屋みたいなものも無さそうだね」


「最後に教会行ってみるー?」


「そうしようか」


三人は教会に着くと入り口のドアをノックした。


「すみません。どなたかいらっしゃいますか?」


返事は無かった。


「やっぱり誰もおらんのかねーー?」


「なにか変だね」


「み、みんな魔物に喰われちまったとか?!」


「どうだろうねぇ」


三人は教会の周りを一周してみたが、中に人の居る気配もなく、

どこも鍵が閉まっているのを確認した。


「これは一度ウィソに戻って国王様に報告しなくてはいけないかな?」


「まずいんだよな?」


「村の人間が全員失踪なんてね。流石に変だね。連絡をくれた警備隊の営舎に行ってみようか」


「そこももぬけの殻だと流石にやばいよねーーー」


「うーん。なきにしもあらずだね」


リクは不安と緊張が一気に襲ってきた。誰もいない静かな村で起きた異変によって。心なしか誰かが自分を物陰から見張っていて、今にも襲撃のチャンスをうかがっているように思えたからだ。


三人は村を出て、最寄りの警備部隊の営舎に向かった。

村の入り口でスイが精霊文字を使ってシャオに書き置きをしながら言った。

「シャオが来たら反応して文字が浮かび上がるようになっているんだ。えーと…“シャオへ、村に誰もいなかったので警備隊の営舎に向かいます”…と」

村の近くには深い森があり、その森を抜けたところへ営舎があるようだった。


「盛大にスタート切った幸先にしては不穏すぎるよねーー?」 


「あの……。俺不安しかないんだが……」


「危なかったらすぐに逃げるさ」


三人がそう話していたその時、少し離れた木陰で何か動くものがあった。驚いたリクが叫び声をあげたが、そこのにいたのは小さなウサギだった。見た目はリクの知るウサギだったが、唯一違っていたのは額に角が一体生えていたことだった。


「角ウサギじゃんー。かわいーー」


「しかも子どもだね。リク、見てごらん」


「角生えてる……。ちょ、ちょっと待て、あれってひょっとして魔物か?」


「そうだよ」


「なにーー?リクっちビビってんの?角ウサギは魔物の中でも特に弱っちいから安心しなってーー。しかも可愛いじゃん?」


「でも!痕跡の影響で凶暴化してるかもなんだろ…?」


「リク。試しにスキルレンタルを使ってみたらどうかな?」


「へ?あ、あいつに?」


リクたちの様子を伺いながら、角ウサギは鼻をひくつかせ身構えていた。


「あの子がどんなスキルを持ってるかわからないけれど、練習がてらに良いんじゃないかな?」


「おもしろそーーー。やってみ」


「ちょ、ちょっと待て!!ユンタ押すな!!」


「うぇいうぇーーい」


「やめろ!なぁ、魔物もスキル持ってるんだよな?こいつらは鑑定無しで発動出来るのか?」


「そうだよ。野生の魔物たちもスキルを持っていて、どういうわけだか鑑定無しでスキルを発動することが出来るんだ。私たちとは少し違うんだろうね」


「そ、そうか、でもあんまり強く無い魔物なんだよな?よーし!やってみるからな!!」


とは言ったものの、どうしたら良いのかリクはよくわからなかった。鑑定師やスイから説明を受けたものの、抽象的な表現が多くてしっくりは来ていなかった。

それでも自分の中にあるであろう力に意識を集中させてみた。


その時、リクの頭に直接語りかけるような声が聞こえた。

まるで自動音声のような抑揚の無い、その声はリクに問いかけた。


『所有スキル、技能賃貸(スキルレンタル)を発動しますか?』


“なんか声聞こえたッッッ!!!?す、すげーーー!!よ、よし!!頼んだ!発動してくれッッッ!!”  


『了解しました』


その声がしたと同時にリクの左手が薄く発光をし始め、『対象に向けて発光した手をかざしてください』と、また声が聞こえた。



────『技能賃貸(スキルレンタル)!!』


リクがそう叫ぶと一瞬、爆ぜるように発光した左手が光った。


光に驚いた角ウサギは逃げていき、リクの左手の光も消えてしまった。そして頭の中で声がした。


『モンスタースキル 角ウサギを入手しました』


「おぉーーー、やったじゃんリクっちーーー」


「やったね」


「お、おう!!でも、あれ…?なんか足に力が……?うまく立てない……」


「魔力を使い切ってもまだ足りなくて体力も持って行かれたんたんだろうね」


「ワロタ。どシロート笑」


「初めてだからしょうがないよ。これから段々と力加減を覚えていくさ」


「わ、悪い、ちょっと誰か肩かしてくれ……」


「はいはい」


スイに肩を借りてリクはようやく歩けるほどに消耗してしまっていた。


「よいしょ。しまったな。まさかこんなに疲れさせてしまうなんて思わなかったな」


「今なんか出てきたらヤバイかもねーーー」


「う…うう……すまん………」


「ポーションでも飲むかい?それにちょっと重たい。出来たら自分で歩いて欲しい」


「鬼……悪魔……」


「やれやれ。ユンタ、悪いけど私の鞄からポーションを取ってリクに飲ませてやってくれるかい?」


「あいよー。マジ手がかかるやん笑」


ユンタがカバンからポーションを取り出して、リクに飲ませてやろうとした時だった。


「あれ?誰か近づいてくるね」


「ま、魔物か!?」


「いや……多分違うだろうね」


そう言いながらスイは三人に近づいてくる人物がいるである方向を真っ直ぐに見据えていた。精霊がスイに位置を教えているのだろう。


「あ、あのーーー」


森の中の街道を外れた、整備されていない森の奥から現れた人影が三人に声をかけた。


「あのー…。あ、あなたたち…さっきからなにをやってんスかね……?」


人影はおそるおそる三人にそう聞いた。


◆◆

まだまだ続きます。


明日の夜にまた更新したいと思います。

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