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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
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『指される。』



イズナは、

迷わず城壁から飛び降りてアッサリと着地すると、

かなりの高さがあったにも関わらず、

何事も無かった様にコトハとリクに歩み寄って来た。


スラリとして背の高い、

長い黒髪を後ろで一つに纏めて、

健康的な肌の色をした女だった。


少し短めの前髪の下から、

太い眉毛が覗いている。


おそらく二十代くらいだろうが、

リクの感じたイズナへの印象は、

“何か弓道部っぽい”だった。


イズナのハキハキとした喋り方と、

背筋をきちっと伸ばした佇まいがとても清々しく、

キリッとした顔立ちの美人な事もあって、

リクは何となくイズナの存在に気圧されてしまっていた。


まるで長年付き合った友人の様に、

笑顔を絶やさず、

気さくに話掛けてくる態度には何の裏表も無く、

根が引っ込み思案なリクに対して、

この僅かな間にも関わらず少しだけ苦手意識を植え付けた。


「二人とも随分と若いのだな。君達は夫婦か恋人か?」


イズナはそう尋ねた。


「違うよ。君の方こそ、凄く若く見えるけれど、

聖域教会の司教様なんだね」


「無礼者めが! イズナ様! 

この者達は得体が知れませぬ故、

お近づきにならぬように!」


先刻よりも殺気だった兵隊達が、

今度はイズナを守る様にしてコトハとリクに武器を構えている。


「フッ……!

心配はいらない。お前達の方こそ離れていろ。

男の方は解らないが、この女は只者では無いぞ」


イズナは兵隊達に向けてそう言った。


「名は何という?」


「僕の名前はコトハ。こっちの子はリク」


「コトハ……。その名、憶えておこう。

すまないが、先程も言った通り、

この街を通り抜ける事は出来ない。

かといって、それを理由に暴れられても困る。

怪我人を出したくは無い。

今すぐに立ち去ってくれたまえ」


イズナは相変わらずキリッとした調子でそう告げた。


「警備態勢を引き上げていると言っていたね。

何か事情があるんだろう。わかった。

それじゃ」


コトハはそう言って、踵を返すと、

イズナ達に背中を向けてさっさと歩き出してしまった。


「ま……、待て待て待て!?」


イズナはコトハのアッサリした対応に、

面食らい、思わず前のめりに転げそうになっていた。


「え?なに?」


「いやいやいや、こういう時は普通、

喰い下がるものだろう!?

散々煽られて、昂るものを感じないのか!?」


(イズナ)が通るなと言ったんじゃないか」


「それはそうだけど!!

この場合はそういう意味では無くて、

戦いを盛り上げる為の言い回しだろう!?

私の登場が台無しだ!!」


「僕と戦いたかったの?悪いけど、先を急ぐんだ」


(コトハ)には闘志と云うものは無いのか!?」


「そんな事言われても」


何だか様子がおかしいぞ、とリクは思った。

イズナは聖域教会の者らしいが、

リクの抱いていた教会へのイメージとは随分違っていた。


「卑怯だぞ!」


「僕が?何でさ?」


「私は妄言で翻弄して、

油断と隙を付け狙う作戦だろう!?

私はそんなものには屈しない!!」


「どう捉えてもらっても構わないけどさ」


「認めた!? 認めたな!?

この卑怯者め!!

偉大なる女神の加護の下、

この南方司教イズナが成敗してくれる!!」


「君の情緒はどうなっているんだ」


「さあ! 何処からでもかかってこい!!」


「イズナ様、それも困ります……。

去ると言っているので、

このまま行かせた方がよろしいかと……」


兵隊達も困惑し、ざわつき出していた。


「フッ……!

案ずるな!! 

我ら聖域教会は、大いなる女神の意思の下、

悪しきを打ち砕きし光の刃と化す!!

お前達に訪れし常闇の深淵を、

今こそ、このイズナが見事切り裂いて見せようぞ!!」


「ナツメくん。どうしよう。

全然話が噛み合わない」


「俺に言われても……」


「フッ……!

コトハよ! 

いかにお前が凶暴かつ凶悪な魔法使いだったとしても、

私は決してお前に打ち勝って見せる!!」


「要するにさ、僕と戦いたいんだね?

例えばさ、

戦って君に勝ったら、この場を通してくれるかい?」


「クッ……!! 卑劣な提案を……!!」


「意味がわからない。君はなかなか面倒くさいヤツだな」


「だが良いだろう!! 

貴様のその提案を呑んでやる!!」


「良いんだ」


「イズナ様……。さすがにそれはマズイかと……」


「どうしてだ? まさか貴様、

このイズナが、こんな輩に負けるとでも?」


「いえ……、そうではありませんが……」


イズナに詰め寄られた兵隊は、

しどろもどろになりながら返答した。


「それならやってやろうじゃないか。

どっからでもかかってこい。この眉毛」


「なッ!!? 眉毛は関係ないだろう!?

自分だってボカロみたいな髪色してるくせに!!」


「やっぱり」


コトハにそう言われて、

イズナはハッと我にかえっていた。


(イズナ)さ、

こっちの世界の人間じゃないだろう?」


そう指摘されると、イズナはわなわなと震え出し、

何か反論をしようとしながら、

泳ぐ視線を必死に堪えている様に見えた。


「間違いないね。僕達と同じ転移者だ」


◆◆

本日投稿分です!


昨日評価してくれた人ありがとうございます!

マジうれしー

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