『リンガレイの威厳の所在について。』
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「スイ! よくぞ戻った!!」
ウクルクの都、ウィソの王宮。
国王のリンガレイの前にスイ達は通された。
「ただいま帰りました」
「うむうむ。
ラオから報せは入っておっての、
甦った鬼火のロウウェンを倒したそうじゃの!」
「皆でです」
「これでまたウクルクの精霊術師の名が広まるのう!」
「国王様。それで用件は一体何でしょうか?」
「つれんのう……。久しぶりに会ったと云うのに……。
まあよい。
此度の聖域教会に因るウクルクへの侵略行為、
それに対し、ウクルクと友好関係にある各国で、
対聖域教会を念頭に置いた同盟を結ぶ運びとなった。
中央諸国を中心にじゃが、
我々は聖域教会への信仰や、各国への布教を禁止し、
聖域教徒の入国や移住を全て廃絶する事にした。
それにより、
奴らの転移魔法のネットワークも全て此方で制圧し、
破壊する」
「それはまた、随分過激ですね」
「友好関係の証でもある筈の転移門を、
奴らが軍事利用した云う事実が発覚したからのう。
まあ尤も、今回捕らえた連中は、
隣国のトリカスタンのゲートを利用した様だが」
「聖域教会の施設は、
色んなところにあちこち在るじゃないですか?
もしも教会にゲートを作っているんだとしたら、
その全てを制圧することなんて出来るんですか?」
「時間はかかるがのう」
「具体的な策は無いんですね」
「さっき決まった話じゃから……」
「それで?わたし達にそのゲートを潰して回れとか言うんじゃないでしょうね?」
「そうじゃよ」
「はぁ……。そんな事出来る訳ないじゃないですか?
どう考えても人手が足りない」
「まあ最後まで聞け。
勿論お前達だけでなく各国の実力者達が、
各々の国のゲートを攻撃する予定じゃ」
「各国の実力者」
「うむ。選択者、
咎の旅団、絡繰……、中央諸国出身で大陸にその名を轟かせておる連中じゃ」
「聞いたことないですね」
「いや、多分知らんのはお前だけじゃ。
やれやれ、
昔から他の者に興味を持たんのは知っとったが」
「そんな事ないですけど」
「……まあよい。仲良くやるんじゃぞ?」
「子供じゃないんですけど。そんな事より国王様」
「そんな事って……」
「とりあえず、一旦わたし達はラロカに向かっても良いですか?」
「ラロカ?南方の国か?」
「そうです。
イファル王に言われてラロカに行っていたんです。
そしたら、
コトハさんがラロカに居たんです」
「なんと!? 今なんと言った!?」
「え?だから、コトハさんがラロカに居たんですけど」
「コトハに逢ったのか!?」
「逢えてはいません。だから、
わたしはコトハさんに逢いに行かないといけない」
「……戻っておったのか」
「此処からラロカに向かうゲートってありますか?」
「ラロカとウクルクとは国交が無いからのう」
「じゃあ、イファルに送ってください。
イファル王にもう一度送ってもらいますから」
「う……、うん」
有無を言わさない、
スイの無言の圧にリンガレイはたじろいでいた。
「なんですか?何か文句でも?」
「い……、いや……」
「コトハさんですよ?
国王様はコトハさんに逢いたくないんですか?
あんなにコトハさんコトハさんと言っていたくせに」
「そんな事はない……。儂だって、
お前と同じくらいにコトハの事を大切に思っておる。
じゃが、あまりに突然の事で、儂にも心の準備が……」
「何を乙女みたいな事を。
わたしはコトハさんに逢い行きます。
それからコトハさんを連れて帰る。
聖域教会だのなんだのは、一旦後回しです」
スイはキッパリとそう言い切った。
「そんな……。大事な事なんじゃよ?」
「そもそも、コトハさんが戻って来たなら、
ネイジンに行く理由も無くなってしまったような」
「そんな……」
リンガレイは何か言いたげな、
しょげた表情で言葉を喉の奥に仕舞い込んでいた。
スイ達を再びイファルへと送る為に、
転移魔法の準備は進められた。
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イツカの紹介ページ作ってみました!
まだ追記で記載するかもなので仮ですが、
参考までにどうぞー
https://ncode.syosetu.com/n0280ir/2/




