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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
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『盲信、或いは。』



ザカンが絶命した事で、

クオナンの街を覆っていた霧は消えた。


部下達はザカンが敗れた事を知ると、

戦意が無い事を示し、スイ達に命乞いをし始めた。


「イファルからの増援が(じき)に来るだろう。

君達の罪はそこで裁かれる」


スイはそうやって冷たく言い放った。


部下達から解放されたゼンは、

意識は戻らないものの、一命は取り留めている。

ロロの呪歌によって、傷と体力の回復が行われた。


「ところで」


部下の一人を捕まえて、

スイが鋭い視線と共に質問を始めた。


「君達が辺境の街を狙ったのは何故だろう。

何が目的だった?」


冷ややかな声で、

淡々とした表情をした、

スイの瞳の奥に潜む、

憎悪の様に感じられる敵意と蔑視に、

男は心の底から恐怖した。


男にはスイの事が、

少女の姿をした、

恐ろしい別の何かの様に感じられた。


「……我々(聖域教会)はシファの森の転移(ゲート)を奪うつもりだった。

この街はその侵略の為の基地にする予定だった」


洗いざらい喋ってしまわないと、

この少女は、きっと自分を躊躇無く殺すだろう。

男の声は完全に震えていた。


「シファの森のゲートを?そりゃまた何で?」


「ウクルクには転移者が多い……。

それもシファの森の周辺に特にだ。

だが、お前達は森の大部分に結界を張って、

その事実を公表していない。

痕跡と転移者の独占、

お前達の行為は世界と女神への冒涜だ」


それを聞いたスイは、呆れた顔をして溜め息をついた。


「あのさ、

シファの森に結界が張ってあるのは、

深い森の闇には魔物が湧きやすいからだよ。

転移魔法の仕組みを君達は知らないのかな?

あの森のゲートに、そんな特別な履歴(ログ)は無い」


「……仮にそうだとしても、

ウクルクが転移者の件について多くの事を発表していないのは確かだ。

それにお前達は聖域教会に逆らったのだ。

聖域教会の宣教師(ガコゼ)を更迭し、

あまつさえ、交渉に向かった使者を撃退した、

加護と(みことのり)を授かり給うた、

我ら聖域教会への、

大いなる女神の意思への反逆以外の何物でもないのだ!」


「だから、()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「その通りだ!!!

全ては貴様ら、邪教の信徒が世界に巣食い、

民草を惑わし、女神の降臨を妨げている所為だ!!

愚かな国の愚かなクズどもを、

我々は浄化してやったのだ!!」


───ガッッッ!!!


突然、堰が切れた様に捲し立てていた男の脳天を、

ユンタの十手が真正面から叩き割り、

男は額から血を流して失神した。


「テンプレ乙。耳が腐るわ」


ユンタは猫耳をうっとうしそうに搔きながら言った。


「大方、大義名分掲げて、

シファの森にてめーーらの転移門を作って、

ウクルクに攻め込むつもりだったんだろー?」


ユンタは残りの男達に十手を突き出して、

順番に同じ目に遭わせてやろうか、

と脅している様な目付きで睨み付けた。


男達は震え上がり、誰一人として口を開かなかった。


「フッ……! 女神の意思……か……」


「何でイツカが格好つけてんのさ」


「だって完全勝利だったんだな!」


わたし(スイ)の話ちゃんと聞いてた?

能力をコピーされたら危険だって言ってたんだけど」


「実質コピーされなかったんだな!

イツカは悪くないんだな!」


「やれやれ」


スイは溜め息を吐いて、男達の方へ向き直った。


「ついでだから訊いておくか」


スイの金色の瞳が魔力を帯びる。


───『問う(ウェンチィ)


気がつくと男達は、何かが入り込んでくる様にして、

思考の全てを奪われていた。


「君達の中に、模写の能力を持つ者は居る?

もしくは聖域教会内に、

そういう能力を持っている人間は?」


「……俺達の中には居ない。

聖域教会には居る。一人だけ知っている……」


「それは誰?名前は?」


「司教の一人……。シージ様……」


「どういう能力なんだろう?」


「詳しくは知らない……。

だが、シージ様はこの世に存在する、

殆どのスキルをコピーして所持している……」


「嘘くせーー」


「事実だ……」


「そんな事にわかには信じがたいんだが!」


「この言葉の精霊の魔法はさ、

嘘をつけなくする魔法なんだ。

だから、この男が言っている事は本当」


「そんな人と戦う事になったら、

どうやったら勝てるんスかね……」


「うーん。今はちょっと思いつかないけど、

何か弱点があると良いよね。

それに、コトハさんも戻って来てくれたから。

もし、本当に戦う事になっても何とかなるんじゃないかな?」


「スゲーーポジティブ笑」


「中央の魔女……」


男がそう言ったのを聞いて、スイは少し顔をしかめた。


「その呼び名は好きじゃないな」


「世界の均衡を揺るがしかねない魔性の化身……。

魔女も……、貴様達も……、

必ずや裁きの鉄槌に滅ぼされる事だろう……」


「嘘偽りの無い本当の言葉がコレだって云うんだからね。

どうかしてるよ」


スイはうんざりした様な表情でそう言った。


そして、シャオの率いるイファルからの増援隊が、

転移魔法によりクオナンに辿り着き、

生存している聖域教会の斥候部隊の人間は全て捕らえられた。


ウィソからの連絡魔法に依り、

スイ達が王宮に集められたのは、

その少し後の事であった。


◆◆

遅くなりました!!


突然の脳内BGMは

ピノキオピーの 神っぽいな でしたー



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