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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
151/237

『魔法使いの戦い方。』



「ひぇひぇひぇ。

攻撃魔法でも撃ってみるかぁ?

このギヨン様に通用すると良いけどなぁ。

ひぇひぇひぇ」


先程の戦闘では、ギヨンと名乗る男の言う通り、

ゼンの攻撃魔法は悉く防がれてしまっていた。


それは属性や相性の類いでは無く、


(単に、(ゼン)の火力不足だ)


しかも相手は、魔法戦に慣れている手練れだ。


攻撃も防御もバランスの良い、技術の高い魔法使い。


魔力の操作も卓越していて、

物質に魔力を通すのが巧い。


つまり、そこらに在るもので攻撃を仕掛けてくるのだ。

瓦礫や割れた硝子。

少量の魔力でそれを弾き飛ばしてくるだけでも、

危険な威力をもっている。


普通の人間相手ならば。


ゼンは、ギヨンの言葉通り嬲られているのだ。


ギヨンの攻撃は一般的な魔法使いにとって初歩的な技巧で、

技術が熟練するにつれて、

それを発展させていくものにも関わらず、

ギヨンはゼンに単調な攻撃ばかりを仕掛けてる。


防御魔法が使えるなら防ぐ事は出来る。


だが、

ギヨンとゼンの間には歴然としたレベルの差があった。


瓦礫や硝子を防ぐだけでも精一杯で、

ゼンの防御魔法のシールドでは時折防ぎ切れず、

身体に打ち付けられ、切り裂いていき、

僅かにだが、確かにダメージを蓄積させられている。


この憎たらしい不愉快な男に、

ゼンは自分が手も足も出ないという事実が、

とにかく腹立たしかった。


ジリジリと追い詰められていく。


ゼンが攻撃を放っても、

ギヨンは直ぐに攻撃の範囲を感知し、

防御魔法を張る事も無く、躱してしまう。


(舐めやがって)


ゼンの思考はどんどんと(せば)まっていく。


焦りと苛立ちが、見事にギヨンの挑発に煽られて、

それに易々と乗っかってしまっていた。 


闇雲に攻撃魔法を連発し、

魔力が一瞬途切れた隙に、

ギヨンが操る瓦礫の山が散弾の様に撃ち込まれた。


ゼンの防御魔法は間に合わず、

重たい瓦礫がゼンの身体のあちこちに打ち付けられ、

声にならない絶叫が喉の奥から、

痛みを増幅させる振動の様に溢れ出た。


「がぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!?」


(ひたい)を切った硝子により、

吹き出た血で、視界を塞がれる。


追い討ちをかけて、再び散弾の様に瓦礫が撃ち込まれ、

ゼンの身体の上に山積みに重ねられていき、

そこで痛みに因って、

半ばゼンの意識は失われかけていた。


「ひぇひぇひぇ。

威勢だけのクソ餓鬼が。

聖域教会に逆らうんじゃねぇ。ひぇひぇひぇ」


ギヨンは更に瓦礫を操って、

何度も繰り返してゼンの身体に叩きつけた。

その内のいくつかは、ひどく鈍い音がして、

瓦礫に埋もれたゼンの身体の周りには血だまりが出来上がっていた。


「死んだか。

さてと、残りの鼠共もブチ殺しに行くか。

思ったよりも楽しみ過ぎたな。

他の連中に先越されちまう。ひぇひぇひぇ」



◆◆


「やれやれ。

わたし(スイ)の言う事を素直に聞きたくないのは分かるけどさ。

それだと(ゼン)は、わたしには勝てないよ?

それに、これがもし実戦だとしたら致命的だよ」


スイがその辺りに落ちてた木の枝を、

ゼンの喉元に突きつけてそう言った。


「お前だって実戦向きでは無いだろう!?

戦ってる最中に腹が減って泣き出すなよ!!」


「まあ、それはそうだけどさ。

だから魔法使い(わたしたち)はパーティーに組み込まれるんじゃない?

そもそもが単体で戦うには向いてないんだよ」


「だとしたら、俺のやり方は間違っては無い筈だ!

後方から広範囲に渡って、

大勢の敵に攻撃する事の何がおかしい!?」


「これがパーティーでの戦闘だったらね。

でも今は、わたしと君は一対一でしょ?

魔法使いの定義に拘り過ぎると、こうなる」


「……単純に実力の差だろう」


「まあ、それもあるかもだけどさ。

戦い方って云うのは色々あるものなんだよ、きっと。

魔法使いが単体で戦う事には向いてないとしても、

とにかく柔軟に物事を捉える事が大事だと思う。

わたし達が操るのは魔法なんだよ?」


「……」


「君は君のやれる事を全部やるんだよ。

それに、やれる事を模索し続けるべきだ」


◆◆◆


血だまりの中で、ゼンの唇が微かにだが動いた。


僅かに魔力を込めて、

喉の奥から絞り出した声で詠唱をしながら。


「……命ずる……、帰すべき処、在るべき者、

その事の全てを……、

我の名に於いて……、虚空に還し給え……、」


詠唱が終わり、ゼンの声が途切れる瞬間に、

ようやく、ギヨンは微妙な魔力の流れを感知する事が出来た。


「ひぇひぇひぇ!!

くたばってなかったみてぇだな!?

そんなちっぽけな魔力じゃ、どうにもならねぇだろうがなぁ!? ひぇひぇひぇ!!」


ギヨンは魔力感知でゼンの魔法の到達範囲を検索すると、

先程よりも明らかに範囲は狭くなっていて、

もはやゼンが、

虫の息で最後の足掻きをしているだけだと確信した。


攻撃が届く訳が無い。


ギヨンはそれでも確実に魔法の届かない位置に移動し、

身の安全を確保した。


そして、再び瓦礫の山を操り、

上空に持ち上げると、

倒れたままのゼンに叩きつける様にそれらを放った。


ギヨンは狂気じみた表情で、

気味の悪い高笑いを上げたが、

瓦礫の山は欠片ひとつ、ゼンに当たる事は無かった。


「ひぇ!?」


瓦礫は巨大な手に握り潰されてしまうように、

ゴリゴリと音を立てながら粉々になり、

砂の様に細かくなって、

ゼンの身体に降り注いだ。


「……俺の魔法の届く範囲ばかり警戒し過ぎだ。

貴様が見ている面からは感知出来ないくらいに、

()()()()してやった……」


「嘘つけこの野郎!!?

そんな事出来るなら、何故最初からやらねぇ!?」


「お前は魔法使いの癖に頭が悪いな……?

そんな事、俺だって知るか……。

頭で考えれる事が全てだとしたら……、

魔法が魔法で在る意味など無いだろう……。

ようやく、意味がわかったぜ……」


「クソクソクソクソクソクソッ!!!?」


「……円で囲ってたものを、線で囲ってやった。

間抜けなお前にも今なら感知出来るだろう、

だが、逃げれると思うな」


魔力の導線は、

非常にゆるやかな、気体の様な動きをしながら、

ギヨンの頭から爪先までを捕らえる、

繭の様にして既に張り巡らされていた。


「……命ずる!!!」


───『喚の裂(コールブラスト)!!』


「ッッッィギャァァァアアアアッッッ!!!」


発動した魔法に因って、

数え切れないくらいに切り裂いて刻まれたギヨンが、

肉片に変わる前に上げた断末魔の声が届く前に、

ゼンの意識は既に失われてしまっていた。


◆◆◆◆


今日も読んでくれた人ありがとうございます!


設定集作ってみましたー

メインキャラクター編↓


https://ncode.syosetu.com/n0280ir/1/



今日の突然の脳内BGMは、

DECO*27 の ボルテッカーでしたー


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