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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
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『クオナンの街、ゼンという魔法使い。』



「ハァ……、ハァ……」


救援部隊のものであろう魔力を感知し、

連絡魔法を送ったゼンは即座に建物の陰に隠れ、

自分の足に突き刺さった氷塊を、

魔力で溶かしている最中だった。


クオナンに突如として出現した、

聖域教会の斥候部隊。


襲撃を直ぐさま感知し、

迎撃に向かったゼンと部下達は全員で八人。


人数は三倍以上も敵が多かったが、

ゼン達も警備隊の精鋭揃いだった。


難なく、敵を蹴散らせる筈だったが、

その算段は甘かった。


部下の四人が大怪我を負い、

一人は意識が戻らない。


まだ敵は半分以上残っている。


(揃いも揃って、強力な魔法を使ってきやがる。

連携も巧い。クソッ!!

おまけに指揮しているヤツが桁外れに強い。

まさか天恵者(チート)じゃないだろうな)


氷塊を溶かし終わると、そこそこの量の冷たい水が、

ゼンの衣類を濡らしてゆき、

出血した身体の体温を奪っていった。


部下達を逃がす為に囮になったが、

随分と間抜けな結果になったものだ、

と、ゼンは思わず笑い出してしまいたかった。


(クソッ。

スイの留守中に、とんだ失態を晒してしまったな。

アイツ(スイ)はきっと、俺を鼻で嗤うだろうな)



(ゼン)の魔法はさ、

見た目ほどの威力が無いんだよ。

広範囲向けの魔法が得意なんだろうけど、

そっちに意識が行っちゃって、

魔力が分散しがちなんだ」


「黙れ!! すぐに魔力切れを起こす癖に!!」


「それはまあ、特性だから。

でも、君はわたしと違って魔力の操作も巧いでしょ?

もっと上手に撃てる筈だよ」


「知ったような口を聞くな!!

お前に言われなくてもわかっている!!」


「ふ。

その割には、君はわたしに一度も勝てないね?

子供の時から」 


「うるさい黙れ!!」


「それから君は頭に血が昇りやすいし、

自棄になりやすい。

そんな事だから簡単に隙が出来ちゃう。

ギリギリの状況でこそ、

頭から冷たい水を被った様な気持ちで冷静にならなきゃ。

わたし達は魔法使いなんだから」


「何様のつもりだ!?」


「ふ。

まだ君にはわかるまい」


◆◆


いつぞやの記憶を、

ゼンを思い返していた。


負ける度に、

がむしゃらに自分を痛め付けて鍛えたつもりだったが、

口惜しくも、

一度たりともスイに勝つことは出来なかった。


──情けない。


(何が情けないかと云えば、

アイツ(スイ)の言う事が正しかったと云う事だ。

結局、俺はスイの忠告を聞かずに、今やこのザマだ)


自分に近寄って来る幾つかの魔力を感知し、

ゼンはよろめきながら立ち上がった。


──スイの事を、もう考えるのは止めよう。


そう考えて、ゼンは敵襲に備えた。


──自分は職務を果たさなければならない。


救援部隊は、おそらく此処には間に合わないだろう。


魔力を隠しもせずに、

敵はゼンとの距離を遠慮無しに詰めてきている。

完全に舐められているのだ。


腹立たしいが、

今の自分では時間稼ぎにもならないかも知れない。


だがしかし、

だからと云って、逃げるわけにもいかないのだ。


治癒魔法などは使えないが、

魔力で傷口を軽く塞ぐ事くらいは出来た。

 

白々しい響きの、ゆっくりとした足音が聞こえ、

ゼンが睨み付ける前方に、

下卑た笑い方のする男が一人現れた。


「ひぇひぇひぇ。

鼠が一匹。ひぇひぇ。

わざとらしく魔力を放出しやがってぇ。

囮のつもりだろうが、心配しなくたって、

おめぇも部下どもも皆殺しだから心配すんなってぇ。

この街の連中もだぁ。ひぇひぇひぇ」


仮にも、

法衣を着た聖職者とは思えない発言をする下品な男だった。


男の声を聴いた瞬間から、

ゼンの怒りは瞬時に最高潮に達していた。


その男はゼンの部下に致命傷を負わせ、

意識不明にさせた張本人だった。


──この男だけでも確実に殺す。


既に煮えくり返った自分の(はらわた)を、

鎮める事など到底出来そうもなかった。


「ひぇひぇひぇ。

こんな()()()所へ行く事になった時には退屈で死んじまうかと思ったけどなぁ。

楽に殺しが楽しめて、今は最高の気分だぜぇ?

ひぇひぇひぇ」


「クソが。

下衆な本性を現しやがって。

俺は昔から、お前ら聖域教会が気に食わなかったんだ」 


「ひぇひぇひぇ。

気に食わなかったら何だってんだぁ?

てめぇら(ウクルク)に聖域教会と戦う程の戦力なんて無ぇだろうがぁ?

てめぇらだけじゃねぇ。

この世界に聖域教会に逆らって良いヤツなんていねぇんだよ。ひぇひぇひぇ」


「ふん。

その割には、

スイやユンタの居ない隙を狙った様に俺には思えるがな?

口先だけの木っ端が、いつまでも喚くな。

御託はいいから、かかってこい」


「ひぇひぇひぇ。

威勢が良い餓鬼だなぁ?

楽には殺さねぇ。お前も部下も。嬲り殺してやる。

ひぇひぇひぇ」 


(スイ。お前の言う事がきっと正しい。

だが俺は、お前にはなれない。

少しでもお前に近づこうと足掻いていたが、

俺には俺のやり方しか出来ない)


ゼンの魔力が込められた風が吹いた。

その風は熱波と錯覚する程に高い熱を持っていて、

皮膚をじりじりと焼く様な感覚があった。

風は、聖域教会の男と、

その周辺一帯の範囲を指定するようにして、

激しく巻き起こり始めていた。


◆◆

本日は2話投稿します!


突然の脳内BGMは、

ヤングスキニーのゴミ人間、俺

でした!

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