『救援の声。』
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スイ、ユンタ、ロロ、イツカの四人は、
転移魔法に依って、イファルからウクルクへと送り届けられた。
場所はウクルクの西部に広がるシファの森を越えた辺り、
広大な平原がどこまでも続く様な、のどかな地域だった。
「ウチさーー、こっち側て、
初めて来たかもーーー」
ユンタは移動用の魔獣の背中に乗って、
景色を眺めながらそう言った。
「見渡す限り何も無いな! 街なんて何処にあるんだ?」
「確か、この先にクオナンと云う街が在るよ」
「全然戦いが起きてるって感じじゃないッスねー?」
「警備隊の皆が頑張って食い止めてるのかな?」
「フッ……! もう頑張る必要は無いんだな!
イツカが来たからにはもう安心なんだな!!」
「手練れの魔法使いが何人か居るっつってたよねーー?」
「うん。ゼンが苦戦してるって言ってたね」
「つっても、ゼンってそんな強かったっけ?」
「うーん、まあ普通くらいかな?
威勢はいつも凄くいいんだけど」
「じゃーー楽勝か♪」
「ユンタ! くどいんだな!
イツカが居る! 楽勝でしかないんだな!」
「いや、今回はイツカは戦わないでいてくれるかな?」
「フッ! 元より承知……!
………………へ?」
スイの言葉に思わずポーズを崩し、
眼を点にさせて絶句した。
「わたしとユンタとロロの三人で戦うから」
「なんで!?
なんでイツカは戦っちゃダメなんだ!?」
イツカは眼を潤ませながら、
プルプルと震えながらスイに訴えた。
「イツカが強いのをスイも知ってるのになのか!?」
「イツカが強いからだよ。
わたしはイツカと戦った時にちょっと思ったんだけどさ、
あの時にリクが居たら状況は違ってたかも知れない」
「なるほどねーー」
「どういう意味だ!? リクって誰だ!?」
「リクは、わたし達のパーティーのメンバーだよ。
今は居ないけど」
「イツカは居ないヤツに負けたのか!?」
「負けていたかも知れない。
スキルをコピーする能力を持っている相手だとしても、
イツカは勝てる自信がある?」
「やってみないとわかんないけどな!」
「しかも、その相手が、
能力の発動を一瞬だけ封じれる様な能力も持ってたとしたら?」
「余計わかんない!」
「イツカの語りの書は確かに凄く強い能力だけど、
初手で出すには強すぎるんだ。
わたしがコピーする能力を持ってるなら、
まずイツカのスキルを狙う」
「イツカならコピーされても勝てるもん!」
「だけど不測の事態が起きる事もある。
例えば、リクはコピーの能力は不完全だけど、
相手のスキルを封じ込める事にかけては何故だか百発百中だ。
そういう例外もある」
「スイは意地悪だな!!」
「まーー。実際、
ナードグリズリーが魔法喰っちゃうのには対処出来なかったろ?
スイが言いたいのは、完璧な能力は無いって事じゃね?」
「……」
「そういうことさ。
イツカに手も足も出なかった、わたしが偉そうに言える事じゃないけどね」
「敵の能力次第だよなーー。
コピー能力を持ってるヤツが居るかも知れないから、
それに備えて、イツカは秘密兵器っつーー事で」
「秘密兵器……?」
「イツカは選ばれし者なんだろ?
ピンチを助ける方がかっこいーーじゃん?」
「……フッ!
その通り!! 我こそは運命の回廊を彷徨いし者!!
迷える民草よ!!
救いを求めしその時には、我が名を呼ぶがいい!!
そう!
我こそは!! 東暁聿花!! 孤高にして至高の天恵を持ちし者!!」
「イツカちゃん機嫌良くなったッスねー」
「負ける気はしないけど、
曲がりなりにも相手は聖域教会だ。
警戒を怠らない方が良い」
「それにーー。ちゃちゃっと終わらせて、
コトハに逢いに行かないとだしねーー」
「うん。
コトハさんも、あの時、
わたし達の方へ向かって来てたんだ。
もう少しだ。
もう少しで逢える」
「それな。
コトハも気づいてたら、今頃探し回ってるぞーー」
「嬉しいな。ユンタはさ、コトハさんに逢えたら、
まず、どうする?」
「ウチはねーー、あ、金返してもらわなきゃだ!!
最後に金貸して、返してもらってない!!」
「あはは。でも、きっと持ってないよ」
「だろーーね笑 スイは?」
「わたしは……、
昔みたいに一緒に手を繋いで出かけたい。
チョコレートを買ってもらいたい」
「尊ッ!!! スイちゃん健気過ぎるッス……!!」
「コトハもきっと、
スイの事甘やかしたがってるぞーー。
あんにゃろめ、フラッと帰って来やがってーー♪」
ユンタは嬉しそうに笑いながら言った。
その時。
──『イファルからの救援か!? こちらはウクルクの警備部隊だ!! 至急、応援を頼む!!
怪我人が大勢いる!! 至急応援を求める!!』
連絡魔法の声が、四人の耳に届いた。
「ゼンの声だ。
思ったより、状況が良くないらしい」
スイは嬉しそうに緩んでいた表情を引き締め、
いつもの冷静な顔つきに戻っていた。
その頃には既に、クオナンの街は四人の視界に写り、
街のあちこちから煙が上がっている事が確認できた。
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本日投稿分です!
人物紹介ページ、未だ作成途中なので今しばしお待ちを!




