表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
147/237

『行き違う。』



「……二人。……こっち(クゼナイ)に向かって来てる。

かなり離れてるけど……。

凄く強い魔力が一人と……」


感知魔法に依り、

接近してくる存在にハツが気づいていた。


「もう一人は……、リク……?かな……?」


「え?」


「……強い方は誰だかわからないけど。

もう一つの方はリクだと思う……」


「え?リクが?戻って来たのかな?」


スイが嬉しそうにハツに尋ねる。


「わかんない……。けど、彼の魔力だと思う……」


「何だ。

こっちが探すよりも先に帰って来てくれたんだね」


「でもさーー、もう一人って誰よ?

しかも強いって。何かに巻き込まれてんじゃねーーの?」


「ええ、ええ。その心配はいらないでしょうな。

ええ、ええ」


「フーちゃん。なしてさ?」


「ユンタさん、気づきませんか?

この清々しい程に圧倒的な魔力、

暴力的ですらある、こんな存在感、

あたしゃ、この世界にゃあの人以外存じ上げませんね」


「はーー?遠すぎてウチにゃわかんねーんだけど」


「ユンタさん感知はからっきしですなぁ」


「あれ!? ちょっと待って!?

リクと一緒に居るのってもしかして……!?」


スイが突然取り乱し、大きな声を上げた。

信じられない、と云った表情で、

誰の眼に見ても明らかな程に激しく動揺をしている。


精霊の魔力感知で、映像こそ届いていないが、

スイにはすぐに気づけた。

彼女にとって、

あまりにも馴染みのある魔力の波長だったのだから。


「ええ、ええ。

間違い無いでしょうな。

中央の魔女(コトハさん)のお帰りですな」


「……!!」


スイは息を呑み、呼吸を止めて、大きく眼を開いた。

金色の美しい瞳が、微かに滲み出した。


「はーー!? コトハ!? マジ!? なんで!?」


動揺をしているのは、ユンタもだった。

喜びを隠せない、と云った様子で、

あっという間に落ち着きを失くしている。


「コトハさん……!!」


「スイ! 良かったですね!?

コトハさんに逢えますよ!?」


「え!? え!? 何で!? 

何でコトハさんがリクと一緒に居るの!?

シャ……、シャオ!! わたし、おかしくないかな!?

コトハさんに逢ってもおかしくないかな!?」


スイが髪の毛を手櫛で梳かしながら、

あたふたとシャオに訊いた。


「か……、可愛すぎるでしょうが!!! 

天使か!?」


「ねえシャオ、君、鏡とか持ってないかな!?」


「持ってないです!!

その代わり、 

もっと近づいて、

私の瞳を鏡代わりにしてみてください!

さあ! さあ!」


「う……、うん!

わ、ちょっと……、動かないで……。よく見えない」


スイがシャオの顔を両手で掴み、

鼻先が触れそうになるほどの距離で、

彼女の瞳を覗き込んでいる。


「スイちゃん、動転し過ぎてシャオちゃんのセクハラに無防備になってるッスね……」


「シャオ、見えない。もっと近づいてよ」


「すみません……。スイ……、

私ちょっと興奮し過ぎて鼻血が……」


◆◆


「中央の魔女……」


「どうしたシンヒ?」


「いやねえ。

えらく、立て続けに事が起きるもんだと思ってねえ」


「どういう意味だ?」


「転移者が居ると聞いて、この国に来て、

落ち着いたと思ったら、今度は中央の魔女だよ?

しかも両方が天恵者(チート)ときたもんだ。

偶然にしちゃ、あんた(クジン)も出来すぎてると思わないかねえ?」


「さあな。俺にはわからん」


「転移者が転移者を呼ぶ」


「?」


「あたしらには聴こえない、

虫の()みたいなもんでも出してんじゃないのかねえ」


シンヒは口の端を曲げて笑い、

それはとても感情の込もっていない冷めた表情だったが、

クジンにとってシンヒのそういう笑い方は、

あまりにもいつもの事であった為、

気にも留めなかった。


「俺にはお前が何を言っているのかが解らない」


「……解りやすく言ったつもりだったけどねえ」


「聖域教会と戦う戦力を集める為に、

こんな南の田舎に来たんだ。

中央の魔女がそれに加われば何も言うことは無いだろう」


「そうだねえ」


シンヒはどこか上の空の様子で返事をした。


「俺は中央の魔女に会ってみたい。

魔書使い(イツカ)と戦って判った。俺は未だ弱い」


「ははは。まだ気にしてんのかい。

クジン。あたしらは弱くなんかないと思うがねえ。

天恵者が揃いも揃ってバケモノなのさ」


「そのバケモノにならねばならない。俺も、お前もだ」


「あたしは、そんなものになりたくはないけどねえ」


シンヒが呟く様に言った言葉は、

クジンの耳には届いていなかった。


「あっ!? シャオちゃんホントに鼻血出てるッス!!」


「ちょっとシャオ! 

動かないでってば、

今日そういえば寝癖がついてたんだよ……、

せっかくコトハさんが帰って来るのに、

だらしないと思われちゃう」


「だーーいじょぶだから!! あー!

ほらシャオちん、紙紙!! マジ鼻血じゃん!!」


「ユンタさん、私大丈夫ですから! 

さあ! スイ! 存分に私を使ってください!!」


そうやって一向の賑やかな声が、

クゼナイに響き渡っていたのも束の間。


突如として、

広範囲に指定された、

遠隔操作で発動する魔法陣が一向の足元に浮かび上がった。


対処する暇も、驚く暇も無い程、

あっという間に、

魔法陣は描かれた術式の魔法を発動させた。


光が辺りを包み込み、

その場に残っていたのは、呆気にとられた顔をした、

外交官のハンだけであった。


「イ……、イツカ様!?

今のは……、転移魔法……!?」


ハンは周囲に居た配下の者達に声を掛け、

辺りを捜索する様に指示を出したが、

突如発動された転移魔法に因って、

イツカを含むそこに居た面々は既に、

ラロカ国内には残っていなかった。


◆◆◆


転移された先は、

イファル王都(ルーファン)の王宮。


神妙な面持ちのラオとクアイが、

スイ達を待ち受けていた。


「いきなり呼び戻して悪い。

だけど、

いささかマズい事になってしまった」 


ラオが口を開いて放った言葉の、

裏に見え隠れしている不穏な空気を、

その場に居る誰もが感じ取る事が出来た。


「聖域教会が仕掛けて来やがった。

ウクルクが襲撃を受けているようだ」


ラオはいつもの軽妙な口調では無く、

言葉の一つ一つを重々しく吐き出す様にそう言った。


「ウクルクが……?」


「ウィソのリンガレイから直接連絡があった。

すまないが、至急ウクルクに向かって欲しい」


あっという間に変わってしまった景色に、

コトハとまた離れてしまったと感じてしまったスイは、

今にも泣き出してしまいそうだった。


そこに更にウクルク襲撃のニュース、

スイの心はざわつき、少しずつ混乱を始めていた。



◆◆◆◆

今日も読んでくれた人ありがとうございます!


登場人物が増えてきたので、

近々人物紹介ページを作ろうと思ってます!

自分も忘れそうなので!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ