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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第五章 『ワールドエンドプレイヤーズ』
145/237

『スキルの獲得に成功しました。』



───『技能賃貸(スキルレンタル)!!』


「わぁ」


コトハはリクの『スキル妨害』に因り、

上空で身体のバランスを失い、

驚いた声を上げて、

そのまま地表へと落下していった。


(もっと)も、彼女ならもう一度浮遊魔法を発動すれば地面に叩きつけられる事も無いのだが、

何故か彼女は落下するままに身を任せて、

力を抜いていた。


思えば驚いた声も、どことなく白々しかった。


「おい!? バカバカ!!」


リクは慌てふためき、

落下するコトハは何とか受け止めようと右往左往している。

何とか両手を伸ばし、コトハの身体に指が触れていたが、

どう考えてもリクの手は届かなかった。


しかし、コトハの身体は地面に落ちる事無く、

彼女の落下は既に停止していた為、

リクはコトハの身体を支える事が出来た。


丁度、お姫様抱っこの体勢で。


「おまッ!? バカなのか!?

すぐに魔法使えよ!? 危ないだろ!?」


「何だよ。間に合わなかった癖に偉そうに」


「しょうがないだろ!?」


「僕はナツメくんがきっと受け止めてくれると信じていたんだ」


「引きこもりの運動神経なめんな!」


「いいから早く降ろして」


コトハはそう言いながらも、

お姫様抱っこに満足そうにしていて、

リクの首に腕を回していた。

コトハの身体を簡単に抱きかかえていられるのは、

浮遊魔法のおかげでは無いのだろう。

コトハはかなり細く、

余分な肉が全く無いスリムな体型をしている。


「降ろすから離せ!」


リクはコトハがわざと、自分をからかって、

なかなか降りないのだと思って照れてしまい、

顔を真っ赤にして叫んだ。


ジャージ越しに、

コトハの華奢な腕が自分の首に絡み付いているのは、

リクにとって刺激が強すぎた。

煙草と香水の様な香りがした。


「よいしょ。

それで、どうだった?

浮遊魔法(レビテーション)は模写出来そう?」


「いや。駄目だった」


「ふむ。次は少し変えてイメージをしてみよう。

もっとざっくりと、抽象的なものに」


「俺が今どんなイメージしたのか解るのか?」 


「大体想像はつくかな。

鳥がどうして空を飛べるのか、

なんて事を考えながらやったんじゃないかな?」


「なんで解るんだよ」


「君が少し頭でっかちだから。

それにしても、

『妨害』の方のスキルは殆ど百発百中なんだね。

来るのが判っていたから、

魔力を操作していたつもりだったけれど、

魔法を簡単に封じられてしまった」


「マジ?俺がお前のを?」


「どうしてメインのスキルでは無いのかが謎だね。

しかも自動で発動するから、

イメージをする必要も無いし。

天恵者(チート)のスキル並みだと僕は思う」


「マジか」


「ただ、スキルを封じられる時間が短い事と、

おそらく妨害のスキルの能力を、

これ以上は向上させる事が出来ないのが弱点だね。

強力なスキルである事に違いは無いけれど」


「妨害できる時間を長くは出来ないんだな」


「副次的に発動する能力だからね。

例えば、

ロウウェンの様に身体を炎に変えてしまえる能力があったとしても、

その能力の発動には条件があった筈なんだよ。

攻撃を防ぐ為だとかね。

多分、彼も身体を四六時中、

炎に変えておく事は出来なかったんじゃないかな。

そして、おそらくその能力自体を鍛える事も」


「なるほど」


「これは僕の見解だけれどね。

君には適切な解答をくれる相手がいるから、

今度逢えたら聞いてごらん。

僕の考えは間違っているかも知れないし。

第二の声(インストラクター)だっけ?」


「あれ以来出てこないんだよな」


「彼が君から産まれたスキルである以上、

主導権を持ってるのは君だと思うよ。

今夜寝る前に出てきてと強く願ってみたらどうかな」


コトハはそう言うと、

再び浮遊魔法で地面から身体を離して空へ浮かび上がって行った。


「もう一度やってみよう。いいかい?

なるべくシンプルなイメージを、

頭の真ん中に置いてやってみてごらん」


「お……、おう」


◆◆


───『技能賃貸!!』


コトハの身体はピタッと止まる様に上昇を止めて、

吸い込まれて行く様に地面に落下していった。


「きゃー」


コトハがわざとらしく声を上げた。

まるで感情の込もって無い声だった。


「バカバカバカ!?」


そして、また寸前のところで身体を浮かせ、

リクがそれを抱きかかえる様にして受け止めた。


「何で一回落下すんだよ!?」


「僕だってお姫様抱っこに憧れが無いわけじゃない」


コトハは真面目な顔をして言っているが、

絶対に自分をからかっているのだとリクは思っていた。


「それで、今度はどうだったかな?」


リクの腕の中で満足そうにしながら、コトハが訊いた。


「あのな。それより、

こんなところ誰かに見られたらどうすんだよ?」


「どうもしないよ。こんな辺鄙な場所に誰も来ない」


「言い方……」


「くれぐれも言っておくが、僕は人妻だ」


「ならさっさと降りろよ!?」


コトハはスルッとリクの腕から離れて、

軽やかな動作で地面に足をつけた。


「ジョークだよ。君は真面目だなぁ」


「うるさい。それとな、

今度のは少し上手くいったのかも知れない」


「やってみせて」


コトハにそう促されて、

リクは自分の中に微かに発生した、

今までは無かった筈の違和感の様なモノに触れるイメージを想像した。


魔力の流れ、なんて云うものはまだよく掴めなかったが、

小難しい事は、

今は未だ必要無いのだと自分に言い聞かせながら。 


そして、

リクの身体に火が灯る様な、

意識の底から何かを呼び覚ますものを彼は感じていた。


「凄いじゃないか。

ナツメくん。君は立派な魔法使いだ。

僕が保証しよう」


コトハの台詞が、

浮遊を始めたリクの心を高揚して揺さぶる様に、

確かな賞賛を持って贈られた。


───『浮遊魔法のスキルの獲得に成功しました』


リクの頭の中で、

その声は不思議な響きを伴って聴こえていた。



◆◆◆

本日投稿分ですー!



書いてる最中の脳内BGMは、

ずっと真夜中でいいのに。の『機械油』て曲でしたー



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