表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
140/237

異世界篇 21 『黒。』

本日投稿分です!


長くなっちゃいましたけど明日で第4章終了しますー



「我が親愛なる光と雷の精霊よ。

汝ら、我と結びし契約という友愛の名のもとに、

静寂を切り裂き、

千里の先まで轟きし震える弦を鳴らしたまえ。

邪な者を打ち払い焼き尽くす慟哭の雷鳴を。

目の前の悪しき壁を汝らの蒼き牙で穿ち貫きたまえ!!」


スイの澄んだ声が響き、詠唱が終わると、

蒼白く光を纏った一閃の雷が放たれていった。


───『雷光の弩(エルライトニング)!!』


しかし、語りの書(トーキングヘッズ)は、

クジンへの攻撃の手を緩めないまま、

同時にスイの魔法も無効化して消し去ってしまった。


『攻撃を確認 属性の解析

ダウンロード中 対象を確認 ダウンロード完了』


「ロロ。

悪いんだけれど呪歌(バードソング)を頼めるかな」


了解(オッケー)ッス!!!」


『判定 魔導書及び所有者への悪意ある攻撃

審判 対象への反復攻撃を行う』


トーキングヘッズが宣告を行い、

攻撃対象に加えられたスイへ反撃(判決)が行われた。


スイもクジンと同様に、

躱す事が出来ずに雷撃魔法に因って身体を貫かれた。



「♪セイレーンの高らかな声に合わせ

バンシーは清き愛を叫ぶ

船乗りたちは皆笑い 

迷える船路に光差す 

竪琴よ鳴れ

歌声よ響け!!」


───『混沌に光差すカノン(ケアディスペル)!!!』 


失いそうになったスイの意識を、

ロロの呪歌が癒しと共に保たせ、

スイは身体が倒れるのを持ちこたえた。


「スイちゃん!! 大丈夫ッスか!?」


「ありがとう。わたしは平気だよ」


(なるほど。

確かに反射された攻撃を全く躱す事が出来ない。

()()()()()()()()()()

直撃を喰らっちゃった)


「イツカの話ちゃんと聞いてたかな!?

トーキングヘッズに攻撃しても無駄だな!!」


自信たっぷりにそう言ったイツカの方を向き直り、

スイはイツカの頭を叩こうとして手を振りかぶった。


しかし、

スイの振り下ろした手がイツカの頭に当たる事は無く、

反発して来る様な奇妙な感覚が手のひらに残るだけだった。


『判定 所有者への悪意ある攻撃

審判 対象への反復攻撃を行う』


───パンッッ!!


(いて)ッ」


当然、トーキングヘッズによる反復攻撃が発動し、

スイは後頭部を叩かれた。


「無駄だと言った筈だが!!

いきなり叩いてくるから、

ちょっとだけビックリしたけどな!!」


(イツカ)の言う通りだ。

少し憎たらしいけど」


スイは頭を(さす)りながら言った。


反射された攻撃魔法に因る炸裂音が響き渡り、

ロロが呪歌でクジンの傷を回復させている。


「24回か。今何回目だっけかな?

傷は回復出来ても、ロロが保たない」


「諦めるんだな!!

降参して、さっさとこの国から出てくんだな!!

イツカには女の子を虐める趣味は無いからな!」


「やれやれ。

どうしてこうも、天恵者(チート)と云う存在は、

誰も彼も完全無欠の様な能力を持っているんだろうね?」


「それはイツカが選ばれし者だからだな!」


「全然答えになってない。

もっと真面目に答えて」


「そんな事言われてもな。イツカも困るんだが」


「もういい。君じゃ話にならない」


「冷たいな!」


◆◆


(この娘(イツカ)から攻撃を仕掛けて来る事は無さそうだね。

というよりも、

()()()()()()()()()()()()()

魔導書(トーキングヘッズ)が手元に無いから。

有り得る。

あんなに無茶苦茶な能力(攻撃を無効化して反射)なんだ、

何か制限があってもおかしくない。

でも、

だから何だって話だけど)


イツカ自身は攻撃しない事と、

第三者が攻撃対象に回復等の補助を行っても、

トーキングヘッズはそれには関与して来ない事は解った。


それでも未だ、

単純かつ明快だが、トーキングヘッズの強力過ぎる能力を撃ち破る算段はまるでつかない。


違う攻撃パターンを試すか、

一斉攻撃を仕掛けてみるか、

色々な策が浮かびはするが、

回復役のロロの負担が増えてしまうかも知れない。


(こんな時にリクが居てくれたらな。

相手の能力を一瞬封じれるだなんて、

よく考えたら最強じゃないか)


一瞬そんな事を思ってしまった。


(リクのバカ。

急に居なくなるなんて。

君が居ない所為でパーティーが危機に直面してしまってるよ。

さっさと帰って来い、

バカバカバーカ)


「フッフッフ……!

打つ手無しだな!! 万事休すだな!!」


イツカがポーズを決めて、

スイの目の前に立ち塞がった。


「うるさいな」


「フッフッフ……!

負け惜しみは止めておくんだな」


「……」


スイは何も言わず、

唐突にイツカのスカートを(めく)った。


「ひゃアッッッ!?!?

な……、なななななな何をするんだ!?」


「黒か。それに意外と大人っぽいのを着けてるんだね」


スイはスカートを掴んだ手を離さず、

まじまじとイツカの露になった下着を眺めている。


「にゃ!?!? 

こ……、こんな事しても無駄だからな!?」


「わかってるよ。ただの苦し紛れの嫌がらせだ。

でも、このくらいじゃトーキングヘッズは反応しないみたいだね」


「わ……、わかったら手を離すんだな!!」


「トーキングヘッズの言う“悪意”とは何だろうね?

わたしのこの行動には悪意を読み取って無いって事なのかな?

嫌がらせだし、悪質だし。

悪意そのものじゃないか。

それに君のパンツは黒だ」


下着に装飾された、銀色のチャームが揺れる。


「わかった!! わかったから離すんだな!!」


「こうやって君の意識を反らしても、

トーキングヘッズの判定と審判(カフカ)は自動で発動するんだね」


「だから、そうだと言っているんだけどな!!」


下着を丸出しにされてしまう程に、

スカートを捲り上げられたイツカの事が不憫になった、

シャオとユンタが止めに入った。


「スイ。なんだか破廉恥ですから……。

止めてあげてください」


「そーーだよーー。もーパンツ丸見えじゃん笑」


「助けて! 恥ずかしいんだが!」


イツカが顔を真っ赤にして必死に抗って、

スカートを戻そうとしている。


(スイ)!! 君の名前は何と言ったかな!?

イツカは絶対に君の事を許さないからな!?

顔も憶えたからな!!」


「わたしの名前はスイだよ。

許さないか。

やれるものならやってみろ、このパンツ娘」


「き……、君が捲ってるんだろうが!?」


「スイ。イライラしているのは分かりますが、

小さな男の子じゃないんですから、その辺で……。

一応男性もいますし……」


「でも、そろそろどーーにかしないと、マズいよね。

あのまんまじゃクジンが死んじまうし、

ロロ子も喉がやばいよな」


二人(ユンタとシャオ)はどう思う?

ロロの呪歌にはトーキングヘッズは反応しない。

“悪意”の定義がよく分からないけど、

攻撃を直接仕掛けなければ、

あの能力は発動しないんだと思う?」


「そーーいやそうだね」


「でも攻撃しなければ勝てませんよ?」


「今思いついたんだけど、ひょっとして、

トーキングヘッズに直接影響が無ければ、

反射の攻撃を妨害する事が出来るんじゃないかな?」


「どーーやって?横から魔法に魔法をブチ込むとか?」


「ユンタには()が居るじゃないか。

幸い、クジンは魔法の攻撃だけしてくれた。

うってつけだと思わない?」


「なるほどねーー♪ 

スイちゃん、あったま()良いーー♪」


そして、ユンタは詠唱を始めた。


詠唱に因ってユンタの身体中に張り巡らされた魔力が、

可視化出来る程の実体を持って体外に放出されていき、

一瞬、揺れる様な風が吹いて、

辺りの空気を一変させていく。


かつて獣巫女(クラウドナイン)と呼ばれた召喚術師が、

神代(かみよ)の世界を生きた(いにしえ)の獣を呼ぶ為の魔法の術式を発動させる。



「金色の王よ。

誇り高き古の獣よ。

世界を蹂躙せし暴虐の化身よ。

汝、我と結びたもうた契約により、

我が命によりその身をここに顕したまえ!!」


───『ナードグリズリー(フーちゃん)!!』


雷鳴の様な凄まじい音と、

強烈な光の渦に、辺りは真っ白になる程に包まれていく。


ひッッさびさ(久々)だからなーー!?

全部喰らい尽くして、おかわり無しだこのヤローー!!」


◆◆◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ