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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
138/237

異世界篇 20  『語りの書。』

本日も1話のみ投稿します!


時間帯変えてごめんなさい!




『総防御回数24 物理攻撃回数0 魔法に依る攻撃回数24

攻撃による損傷無し ダメージ比率0

情報から判定を行い 審判を下す』


魔導書(グリモワール)から声が聴こえ、

見開いた頁が光を放ち出した。


(攻撃を蓄積して反発させる魔法か?

しっぺ返しとはそういう意味か)


クジンは一旦防御の体勢を取り、

魔法の詠唱を始めた。


『判定 所有者の状態異常確認 

審判 蓄積した魔力を使用して状態異常の解除を行う』


クジンの読みは外れ、

攻撃を加えられる事は無かったが、

魔導書の宣告通り、

所有者(イツカ)を拘束していた魔法が解かれ、

彼女は身体の自由を取り戻してしまった。


クジンは直ぐ様(すぐさま)

攻撃魔法に切り替えたが、

魔導書に依って行われる“判定”の方が迅かった。


『記録に因り 一回目の攻撃魔法の属性を解析

ダウンロード中 解析完了

結果を算出 対象の確認 ダウンロード完了』


魔導書の声が物々しく響いた。


『判定 所有者及び魔導書への悪意ある攻撃

審判  対象への反復攻撃を行う』


声が止むと同時に、巨大な火柱が発生し、

クジンは火柱の中へ飲み込まれていった。


クジンが一発目に撃った炎柱魔法をそのままの威力で、

鏡に反射した様にして反撃となって撃ち返された。


「形勢逆転だな!!」


拘束の解けたイツカが場にそぐわない様に思える、

無邪気な笑顔で笑っていた。 


◆◆


「魔導書と云うのはあんな使い方も出来るんだね」


「イツカの魔導書は特製だからな!」


イツカの反撃に驚いていたスイのすぐ背後に、

先程まで前方に居た筈のイツカが立っていた。


「わ。びっくりした」


(スイ)は何だか感情の起伏が乏しいな!

もっと驚くと思ったのにな!」


「転移魔法でも使ったの? それにしても迅くない?」


「『局所転移』って云う古い魔法だな!

イツカは魔導書に書いてある魔法が大体使えるからな!」


「『局所転移』。全然知らない魔法だ。

どうやってやったの?わたしにも教えて欲しい」


「それは教えてあげられないな!

イツカのオリジナルだ!」


「おそらくコレでしょう」


イェンが割り込む様に口を挟み、

一番近くの建物の窓硝子(ガラス)を指差した。


硝子にはイツカとスイの姿がうっすらと映っている。


「この硝子に映った像に、

自分の姿を魔力操作で転写させて転移を行ったのでしょう。

詳しい理屈は知りませんが、

一部の魔族や魔物が得意とする転移術式ですね」


「そうなんだ!」


「そうなんだって。

貴女(あなた)が使ったんでしょう」


「それよりな」


「話流しちゃった」


「今からここら一帯危ないからな!

女の子達! イツカが逃がしてあげるからな!」


「危ない?」


「危ない!

イツカの魔導書が今まで受けた分の攻撃を全部アイツ(クジン)に返すからな!

ほぼ災害だな!」


「特製だと言っていたね。 アレは一体何なのだろう?」


「よくわからん!

イツカが異世界に来た時に自然に出てきたからな!

名前はな! 語りの書(トーキングヘッズ)だ!!」


「名前? イツカの魔導書の名前?」


「そうだ!

ちなみイツカが名付けたんじゃないからな!

勝手に名乗ってきたんだ!」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

君は一体何者なんだろう?」


「イツカだ!

東暁(ひがしあかつき)聿花(いつか)

イツカの名前だ!」


「ヒガシアカツキ。そうか、

異世界(日本)の人だから、

名前とは別に、もう一つ名乗るんだよね」


「そうだ!

でも悠長に自己紹介してる場合じゃないな!」


「確かに」


攻撃魔法の炸裂音が、そう遠く無い場所で、

()()()()()()唸りを上げている。


「逃げるぞ!」


イツカがスイの手を掴んだ。


「待って。クジンは確かに乱暴だけど、

仲間だから置いてく訳にもいかないんだよ」


「そうなのか!

でも、悪いけどアイツ助からないぞ?」


「困る」


「ごめんな! 

トーキングヘッズの反撃は普通の攻撃じゃないからな。

もう判ってるだろうけど、

受けた攻撃を蓄積した後に、

トーキングヘッズとイツカに、

悪意の有るものだったかどうかを判定して、

審判が下ると受けた攻撃をそのまま反射する。

判定と審判(カフカ)による判決は絶対だ。

対象に特定された奴は、

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

ざっくり言うと、

防御したり避けたりが出来ないからな!

アイツが助かるとしたら、

自分が撃った24回分の魔法を喰らっても、

生きてた場合だな!」


「すごい拘束力なんだね。不条理でさえある。

果たして魔法なのかな?」


「わかんない!

でも、それがイツカの能力だ!!」


「トーキングヘッズを止める方法は?」


所有者(イツカ)が死んだときだな!

あの状態(モード)に入ってる時には、

イツカにも止めらんないからな!」


「例えばさ、今わたしがイツカを攻撃したら?」


「止めといた方が良いな!

判定と審判(カフカ)に巻き込まれるからな!」


「ふむ。困ったな」


「全然困って無さそうに聞こえるな!」


「そんな事ないよ」


◆◆◆


『判定 対象による6度目の攻撃 悪意のある攻撃と特定

審判 対象への追撃を行う』


クジンの放った雷撃の魔法がクジンに襲いかかる。


反撃自体は単調だった。

しかし、

着弾よりも先に防御魔法を発動した筈だったが、

雷はクジンの身体を貫いていく。


「……ッ!?」


大型の魔物を一撃で絶命させた事の有る雷だ。

それをまさか、

自分の身に受ける事になるとは。


(一体どうなっている。

防御魔法が発動しても無効化され、

真っ直ぐに飛んで来るのに躱すことも出来ん。

かろうじて性質変化でダメージを逃がせるが、

2()4()()()()()()()

これでは俺が持たない)


クジンは懸命に状況を整理しようとしている。


自分の攻撃魔法の射程範囲は熟知しているが、

おそらくトーキングヘッズの攻撃はそれも無視して、

自分にダメージを与えるだろう。


こちらの攻撃は通用しないどころか、

判定と審判とやらで、

無効化されてまた反撃に加えられてしまう。


クジンは歯ぎしりをしながら、

それでも頭と身体を動かし続けた。


トーキングヘッズは次の攻撃の宣告を既に始めている。


◆◆◆◆



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