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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
134/237

異世界篇 18 「クジンの魔法。」

本日2話目です!


ブックマークと評価ありがとうございます!


明日も投稿しますー



イツカはクジンの攻撃が予想外だった事について、

考えを張り巡らせ、すぐさま結論に至った。


「よく解んないな!」


確かにクジンは風魔法で攻撃をしてきて、

自分は相殺する為に風魔法で防御をした。


しかし、相殺は行われずに、

クジンの攻撃は危うく自分に届いてしまうところだった。


「お前卑怯だな!!」


イツカはクジンを指差してそう言った。


「卑怯なのはお前(イツカ)の方だ」


「はー!?」


天恵者(チート)の上に、

俺の攻撃に合わせて、

あらゆる対処の可能な魔導書(グリモワール)付きだ。

不利なのはどう考えても俺の方だ」


「ふざけんな!」


「その卑怯なお前に、

俺は自分の能力で対抗しているだけだ」


クジンはニヤリと笑って見せた。


挑発のつもりだろう。

イツカは口調の割には冷静に状況を分析している。


「転移者。俺の能力は、『性質変化』だ。

全く同じ詠唱、術式、発動の中で俺は魔法の属性を、

魔力操作に依って変化させる事が出来る」


クジンは先刻の攻撃を、

着弾の瞬間までの僅かな間で属性を変化させていた。

風に強い火の属性の攻撃魔法、

その為、イツカの防御魔法では防ぐ事が出来なかった。


「でも所詮豆鉄砲だな。当たんなきゃ意味ないし。

イツカの反応速度舐めんな」


イツカのその言葉は苦し紛れのもので無かった。


魔力の感知も、身体能力も、

そもそも魔法の抵抗力にも自信はあった。


チートである事に胡座を掻くつもりは無い。


例え相手が格上だろうが格下だろうが、

やれる事は全部やるというのが、

イツカの物事に対する基本的なスタンスだった。


「全知の書よ! 我が名に於いて命ずる!!」


魔導書がイツカの声に反応をする。


別にクジンの攻撃を受けてやる必要は無い、

性質を変化させようが何だろうが、

こちらから攻撃を仕掛けて先に潰してやればいい。


──『ヒドラの渦ハイドロヴォルテックス!!』


イツカの詠唱と共に魔法陣が発現し、

水撃の魔法が八つに別れて放たれた。


渦を巻きながら、竜の咆哮の如き激流の音を立てて、

八方から迫り来る攻撃を躱す事は、

出来ないと判断したクジンは詠唱を始めた。


「遅いな!!」


イツカが言った通り、

クジンの詠唱が終わる前に彼は水に飲まれていった。


飲まれていった、などと云った生易しいものでは無く、

津波を天から勢い良く叩きつけられた様な、

根源的な恐怖を煽る、

何もかもが破壊し尽くされていく音と光景だった。


無論、イツカは被害が街に及ばない様に、

攻撃魔法の範囲を最小限に抑えて、

そこを中心にして、周囲に防御魔法を張っていた。


密閉された空間で、

水に圧し潰されていったクジンは、

見るも無惨な姿になっている事だろう。


「少し可哀想な気がしないでもないな」


水が退いていくのを見届けてから、

イツカは周囲に張った防御魔法を解除した。


───『大樹の戟(ダーシュ)!!!』


街路の石畳を突き破って人間大の太い幹を持った、

大樹がイツカを捕らえようと、その枝先を伸ばした。


「魔力消して死んだフリしてやがったな!?

魔力の操作が上手いだけはあるな!!」


クジンの不意打ちのカウンターは迅かった。


枝先はイツカの四肢に絡み付くと、

あっという間に彼女を拘束をした。


腕を締め上げられる様にされ、

イツカは持っていた魔導書も日傘も、

手から離して落としてしまった。


「使用者から離されては、満足に機能せんだろうな」


そう言ったのは全身を水浸しにしたクジンだった。


「だっさ!カッコつけてんのに、びしゃびしゃだな!!」


「黙れ。直撃は喰らってない。

お前こそ、もう身動きが取れんだろう。

俺の勝ちだ」


「はー!? 

身動き取れなくしたら勝ちだって誰が決めたんだ?」


「虚勢は止した方が良い。

命を落としたくは無いだろう」


あっっま(甘い)! 

イツカが女の子だからって鼻の下伸ばしたな!」


「バカか。

殺す必要が無いからだ。

俺達はお前をイファルに連れて戻るのが目的だ」


◆◆


「チートを捕まえちゃったね。クジンは本当に強い」


クジンの能力にスイは驚いていた。


()()()()()


「魔力の操作だけでそんな事が出来るんだ。

詠唱や術式を無視して、

瞬間的に魔法を再構築させる方法なんて聞いたことが無い」


「アイツもチートなんじゃねーーの?」


「違うよ」


ニコッと笑ったシンヒがユンタに言った。


「元から、あの能力が使えた訳じゃないんだよねえ。

アイツの魔法に対する執着が産んだ、

人間離れしたチート並みのスキルさ」


「執着。確かに彼のソレはそんな感じがするね」


「餓鬼の頃から狂った様に魔法の事ばっかり考えてたらしいからねえ」


「変態じゃーーん」 「変態だね」


「クスクス。でもそのお陰で、

アイツはチートにも引けを取らない様な魔法使いになったからねえ」


「すごい自信だったしね」


「魔法に対する知識見物も異常だからねえ。

あの転移者の娘の能力も対処を考えてたんだろうね」


シンヒはスイにそう言った後、

興味深そうにしているスイを見て、少しだけ微笑んだ。


「しかも、クジンはああいう奴だからね。

ええカッコしいなのさ。

奥の手、みたいな形で出すのが堪らないんだろうね。

まだ餓鬼だねえ」


「黙れシンヒ。ペチャクチャと余計な事を」


クジンが迷惑そうに怒鳴った。


「転移者は捕獲した。俺の勝ちだ」


「イツカ様!!?」


外交官のハンは悲痛な声を上げていた。


「動くな」


クジンはハンを威圧する為に魔力を放とうとし、

その瞬間にイツカがそれを声で制した。


「ハンさん。

悪いんだけど、そこら辺に居る皆を連れて逃げてくれるかな?

あと、王様にも謝っといて?

イツカが街を壊しちゃってごめんなさいって。

そんで、ちょっと本気出してみるから、

早く逃げてくれよな」


◆◆◆



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