表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
131/237

イセカイ篇 17 『ほぼ無敵だった。』

本日投稿分の1話目です!



悠さんの方から、

ことはのスマホにメッセージが入って来た。


「ナツメくん。悠ちゃんが工房(ブティック)に、

僕達を案内してくれるみたいだ」


ことはがそう言って、俺にスマホの画面を見せてきた。


「ほんとだ。

悠さんの仕事が終わってからって書いてあるな」


「とりあえず進展が有るね。

リロクの尻尾を掴む事が出来たら良いんだけど」


「リロクをやっつけて、

あっち(異世界)に戻れたら万々歳だな」


「うん。

次は敗けない。必ずリロクを倒す」


「リロクってどんな魔法使うんだ?

仮にもお前を負かすとか、滅茶苦茶強いんじゃねーの?」


「魔族だからね。攻撃魔法も防御魔法も、

その扱いに関してはピカイチだ。

でも。

リロクの奥の手は天恵者(チート)特有の、

規格外の能力にある」


「またチートかよ……」


「そして残念だけど、

その能力が一体何なのかは僕にはよく分からない。

でも、彼の能力に因って、

僕はこっちの世界に戻されてしまった。

間違いなく君も」


「転移魔法とかじゃなくて?」


「転移魔法の様な作用をしているんだけどね、

わざわざこっちの世界に戻す理由がよく分からない。

僕を本当に殺すつもりだったら、

もっと訳の分からないところに飛ばせば良いんじゃないかとも思う。

転移魔法は術者が行った事の有る場所を、

具体的にイメージ出来ないと発動出来ないんだよ。

人を殺せる様な危険な場所に、

わざわざその記録を付ける為だけに行かないだろうし、

そもそもが攻撃として使うのは変なんだよ」


「じゃあ、対策とか立てれなくないか?

どうやって勝つつもりだったんだよ?」


「リロクに、

僕の能力の欠陥に気づかれたと教えたかな?」


「言ってたな」


「僕の主な能力は“眼”だ。

眼の視界範囲に映るもの全てを対象に能力を発動する。

いろいろと使い方は有るけど、

僕がよく使う手法は、

“視界に映る相手の行動全ての見切り”だ。

魔力の流れや、身体の僅かな所作から、

その後の動きを全て予測して把握出来る。

具体的に言うと、何の制限も課せられずに、

僕は敵の攻撃を一切受けない。

物理攻撃も、魔法も、全て見切ってしまうから、

僕には一切干渉が出来ない」


「無敵じゃん!?」


「ユンタが僕の事を最強だと言うのは、

その能力のお陰だよ」


「やっぱりチートって凄いんだな……」


「授かった力だからね。僕は何も凄くない」


「羨まし過ぎる……、俺もそれ言いたい……」


「だけど、無敵な訳では無いんだよ。

対象を必ず視界に映す必要が有るから、

視界外からの攻撃や、

僕が認識出来なかった事には対処が遅れる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()

僕は一瞬、彼の姿を認識出来なくなって敗けたんだよ」


「なるほど……」


「僕の自惚れと油断が招いた結果だ。

だけど、次は無い。

リロクもそれが分かってるから、

直接仕掛けて来ないんだ」


「攻撃当たんないんじゃ、勝ち目無いもんな」


「それに、リロクが攻撃魔法とかを撃ったのだったら、

僕は敗けていなかったかも知れない。

“自動で回復”するスキルもあるから、

僕は万が一傷を受けたとしても、

すぐに回復してしまうから」


「ボスキャラかよ……」


頼もしい奴だ。


◆◆


「そういえばさ、

自分のスキルと会話した事ってあるか?」


「ん?質問の意味がよく分からないな」


「夢の中でさ、俺のスキルと会話したんだよ」


「ただの夢では無くて?

意志を持ったスキルが在るかどうかって事かな?」


「ああ」


「僕は無いかな。それに聞いた事が無い」


「夢だったのかな……」


「何て言っていたんだい?」


「能力の使い方の幅を広げてやるって言ってた」


「ふうん。スキルは段々と派生していくものだけど、

そういう知らせ方も有るのかも知れないね」


「俺の自己憐憫から産まれたって言ってた」


「自己憐憫。

きっと自分で自分を救おうとしているんだね。

ある種の、魔法の在るべき姿だと僕は思う」


「そうなのか?」


「こうしたいと感じた事を、願って発動させたんだ。

それはもう魔法だ。

君に与えられた力は、

君が思ってるよりもずっと凄いのかも知れないよ?」


「えー……」


「何だよ。

試しに、次に戦闘になったら、

スキルが教えてくれたやり方を試してみたら良い。

習熟すれば、また新しい能力が派生するかも知れない」


ことはは、そう言って笑った。

珍しく、俺に優しく微笑みかける感じで。


「さて、

悠ちゃんの仕事が終わるまでに支度を整えておこう。

君もすぐ出かけれる様にしときなよ」


ことはが洗面所に向かい、

俺はことはの後ろ姿を見送った。


何か少しだけ、心がざわつくような。

不安では無くて、高揚だ。


『把握しろ。

出来る事と、出来ない事の、その全てをだ』


第二の声(インストラクター)の言葉が、

頭の裏側で鳴る様にして思い返されていた。


(ことはの、足を引っ張らないようにしないとだ。

異世界に戻っても、同じだ。

スイ達の役に立ちたい)


◆◆◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ