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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
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異世界篇 15 『ラロカ、クゼナイ。』

本日投稿分の2話目になります!



南方諸国の一つ、ラロカ。

 

海に面した国土の大きさは、

イファルの半分にも満たさない。


主な産業は漁業で、

南方で捕れる珍しい魚介類や塩で、

中央諸国との交易を行っている。

一年中温暖な気候に恵まれ、

人口は多くないが、活気の溢れる街も幾つかは存在する。


ラオ(イファル王)曰く、

貧しい国だが、暖かくて良い所。


ラロカ国内で最大の港を擁する、

首都クゼナイに転送されたスイ達は、

風が運ぶ潮の香りと、

見渡す限りに展開された大きな市場、

一直線に美しく引かれた水平線、

中央には無い暖かい地方特有の文化圏に訪れた期待値に、

少しばかり心を踊らせていた。


「超海じゃーーーん♪ヤバいーー♪」


「すごく大きな市場が有るんだね。

見たことの無い様な魚も並んでる。美味しそう」


「陛下はいつも強引過ぎます……。結局来ちゃった……」


「暖かくてリゾートぽいッスー!!」


女子四人。

はしゃいでいるパーティーを諭す様に、

クジンが釘を刺した。


「お前ら、遊びに来たんではないぞ。

それに、何故わざわざ港へ転送するんだ。

城へ直接送れば良いものを」


「うっせーーなーー。おめー引率かよーー。海だぞ?

普通浮かれるだろ?」


「わからん。くだらん」


「大体おめー(クジン)

そんな暑苦しい上着着て、海に失礼だぞ?脱げ脱げ」


「何故俺が海に礼儀を払う必要がある」


「確かにちょっと暑いね。南の方へ初めて来たけど、

こんなに暖かい土地なんだね」


「あとでさーー、水着買って皆で泳ごーぜーー♪」


「それめっちゃ良いッスね!」


「……(ハツ)泳げないんだけど」


「教えてあげるからーー♪」


「ユンタ、そんなに海が好きだったんだね。

知らなかった」


「水着を買いに行く事に私は賛成です。

……スイのものは私が選びますね。ハァハァ……」


「シャオ。なんだか眼が怖い」


「大体、迎えの者は何処だ?段取りの概念が無いのか?」


「暑いからって苛立つんじゃないよ。

文句ばっかりでうるさいね。

それに。あんた(イェン)も、

その暑苦しいマスクを外したらどうかね?」 


さっさと上着を脱いで、

涼しげな軽装になっていたシンヒが、

白い上着のフードまで被りっぱなしのイェンに尋ねた。


「……お構い無く」 


◆◆


しばらくすると、一向の元へ、

一人の男が駆け寄って来た。


「お待たせ致しまして大変申し訳ございませんッッ!!」


その男は痩せた中年の男で、

ずっと走ってこちらに向かって来たのだろうか、

顔の無精髭から汗が滴り落ちている。


「イファルから御出(おいで)になられた、

特使の皆様でしょうか!?

(わたくし)、皆様のご案内を仰せ司りました、

外交官のハンと申します!!!」


「遅い」


「大変申し訳ございません!!!」


「クジン。いきなり失礼だよ。

ハンさん。暑い中出迎えてくれてありがとう。

わたしはスイ。

イファルから、

どういう説明があったかはわからないけど、

わたし達は特使なんて偉そうなものでは無いから、

そんに気を使わないで大丈夫」


「ははーーッッ!! 勿体ないお言葉を!!」


「めっちゃ畏まるやん笑

ねーーこの辺に水着売ってる店ってあるーー?」


「勿論でございます! ご案内致します!」


「ユンタ。水着は後。先に仕事を終わらさないと(転移者の事を調べる)


「左様でございました!! 

では、さっそく城へとご案内します!!」


ハンは(うやうや)しくそう言って、

港から城に続く通りを先導して歩き出した。


「なーなーー。どー思う?」


ハンについて歩きながら、

ユンタが小声でスイに尋ねた。


「すごく友好的。

わたし達は(あら)を探しに来たようなものなのにね」


このおっさん(ハン)締め上げたら吐くかな?」


「どうだろうね。なるべくなら穏便に済ましたいけど」


「痕跡の隠蔽を国ぐるみでやってんだよ?

絶対やべーーって。体よく帰そうとしてんだよ」


「まだわかんないよ。()()()()()()()()()


そうやってスイとユンタが小声で話していると、

突然、クジンが口を開いた。


「おい。外交官。俺達の要件は判っているんだろう?

転移者と痕跡の有無だ。

時間稼ぎのつもりで、

わざわざ城まで歩かせるつもりなら、

止めておいた方が良い。

命が未だ惜しかったらな」


一瞬にして場が凍りついた。


「クジン。

あんた、それじゃまるでならず者じゃないか。

もうちょっと気の利いた事は言えないもんかね」


シンヒが可笑しそうに言った。


「どう考えても時間の無駄だ。

俺は結論だけが知りたい。外交官、答えろ」


「バカーーーん。せっかくこっちが気を使ってんのに」


「でも、こうなった以上仕方ないね。

ハンさん。事前に伝えてあったと思うけど、

わたし達の用向きはクジンの言う通りなんだ。

出来たら、答えを聞かせて欲しい」


「申し訳ございません!!! 

私めは、

皆様を城へと案内するように仰せ司っているだけの、

木っ端役人でして……。

皆様のご期待に沿える様な解答は、

持ち合わせては……」


ハンは更に大量の汗を流しながら、懸命にそう答えた。


南方特有の強い日差しが照りつける。


「時間稼ぎなら、

()せと言ったつもりだったんだが。

ならば何故お前は先刻(さっき)から、()()()()()()()()()()()()()を張っている?」


ハンはクジンの言葉を聞いて、

一瞬だけ顔つきを変え、汗を拭った。


「私めとしては……、皆様を誠心誠意、

(もてな)し出来ればと考えておりまして……」


もはや、

眼も開けていられない程の汗を顔中に浮かべている。


「コイツらは鬼火を倒したパーティーのメンバーだ。

くだらん小細工は身を滅ぼすぞ」


クジンはそう言うと、額から溢れた汗を拭った。


「刺客を潜めているなら、さっさと出せ。

それでお前達が何かを隠している事が確定する」


クジンが周囲から吹く風に魔力を込め、

自らを中心とした渦の周りを、

吹き(すさ)ぶ様にして、

旋風(つむじかぜ)が舞い始めていた。


◆◆◆

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