異世界篇 14 『南の小さな国へ。』
本日投稿分の2話目です!
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「ラロカって国に行ってきて欲しいんだよね」
ラオが、スイ達にそう告げた。
「ラロカ?」
「南方に在る小国だよ。
イファルとは交易を少し行っている」
「どうして?その国に何かあるんですか?」
「公式には発表されてないんだけど、
ラロカには数年前に異世界からの転移があったと、
言われててね、
公式に発表されていないもんだから、
その時の痕跡が見つかったのかどうかが判ってない」
「ちょい待ち。まさか、
ソレちょーだいって言いに行くんじゃないだろなーー?」
「ま。聞いてよ。
痕跡が有れば確かに戦力の増強にもなるし、
貸してもらえるものなら貸して欲しい。
だけど、僕としては、
転移者の存在が気になってる」
「発表されてないってさーー。
何なん?
何かマズい事があって発表してないんじゃないの?
その転移者もヤバいヤツかもじゃん」
「それを確かめたいんだよね。
転移者達は何故だか軒並み、
優れた能力を持って転移をしてくる。
もしも、その転移者が人格者で、有能な人物だった場合、
協力を仰ぎたい」
「痕跡はダメでも、
人なら貸してくれるかもってワケーー?」
「そんなに上手く事は運ばないかも知れないけどね。
どんなヤツなのか、知れるだけでも良い。
それに長い旅路にはならない。
転移魔法でラロカまで送ってあげるから」
「役人でも無い、
わたし達が行って良いんですか?」
「勿論さ。
寧ろ、君達が行ってくれた方が有難いよ」
「どうして?」
「今、君達は有名だから。
君達は鬼火を倒したんだぜ?」
「噂が広まるにしては早すぎる気がしますけど」
「僕が言い触らしてるから」
「やっぱり」
「それに。リクって云ったかな?
あの餓鬼の行方の手がかりになるかもだよ?」
「それは、そうかも知れないけど」
「イファル王。
まさか、その使い走りに俺達も同行しろと言うのか?」
「無論だよ。君達が居れば更に箔がつく」
「くだらん」
「クジンさん。僕は賛成です。
仮にも痕跡が見つかった場所だとしたら、
何かしら収穫があるかも知れませんよ」
「あたしはどっちだって構わないよ。
クジンが決めなよ」
「イファル王。
もしも、
ラロカの周辺で痕跡の破片でも見つかった場合には、
俺達が貰っても良いか?」
「ま、構わないよ。
あまり期待はしない方が良いと思うけど」
「それなら行く」
「……あの。私も行かないとダメ……?」
ヤエファ達が去った後、
ハツはイファルに残った。
ヤエファ曰く、
義妹だと思っているし一緒に連れて行きたいが、
元々所属していた組織への義理も果たしておくように、
との事だった。
「お前はソーサリースフィアのメンバーだろう?
指切り姫にも言われていただろう」
「……それはそうなんだけど」
「ちょっとクジン。そんなにグイグイ言ったら、
この娘引いちゃうでしょうが?
もっとソフトに人付き合い出来ないもんかね?」
「グイグイ言ってない。事実を言っている」
「ま。そういうワケで満場一致で良いかな。
転移魔法の準備をクアイにさせてるから、
ちょっと待っててくれ。
人数も多いし。
……って、シャオ? どうした?」
シャオが一人だけ、
とても納得のいかない表情でラオの事を見つめている。
「……陛下。私は小さい頃から、
陛下の事を見てきて、
陛下の事をよく知っているつもりです」
「うん。そうだね。僕もだ」
「それを踏まえて。
この度の急な遠征の話、
私はとても怪しいと思っています」
「怪しい?何がさ?」
「陛下が、
こうやって有無を言わさずに話を進める時には、
大体裏があると存じ上げてます」
「おいおい。すごい言い種だね?
それじゃ、まるで僕が君達を騙してるみたいじゃないか」
「何か危険が伴う事があるのではと、私は思ってます」
「まあ、そりゃ遠征だからね。多少は」
「多少が問題なんです。
もしも、スイが危険な目に遭うようなら、
私は行きません。
スイも行かせません」
「参ったな。スイ。どうする?」
「わたしとしては。
リクの行方の手がかりがあるなら、
行った方が良いと思うかな。
それに、もし転移者が居るなら、
会ってみたい」
「スイ!目を覚ましてください!」
「僕が騙してる前提なんだ」
「大丈夫だよシャオ。
皆強いし。
そもそも話し合いに行くだけだし。
それに、
わたしには君が居てくれるじゃないか。
それじゃダメかな?」
スイが首を傾げて尋ねた。
「くッ……!」
「ダメなの……?」
「か……、可愛いけどダメです!!」
「なんだ。お前達のパーティーに居た転移者は、
大した戦力にならないと聞いていたが?」
「クジン。そう云う事ではないんだよ。
彼は仲間だ。
探してあげなきゃ」
「理解できん」
「シャオ。リクは君にとっても仲間でしょ?
早く見つけてあげないと可哀想だよ」
「仲間だとは思ってますけど……。
だ……、大体ですね……、
スイは少し、リクさんに甘いと思うんですが……」
「そんな事ないよ」
「じゃー私が居なくなっても、探してくれますか!?」
「当たり前じゃないか」
「なんか、ちょっと修羅場ッスね……」
「論点がズレてきてるねえ。
イファル王。
もしも、その転移者が居たとして、
こっちに敵意を示す様な時にゃ、どうするんですかね?」
「まあ。
その時にはラロカ側に隠蔽の問題を問うかな。
友好条約の結んでいる国同士では、
痕跡の独占を良しとしないからね。
我が物顔で独占しようとしてるのは、
ネイジンくらいのもんだ」
「と云うことは、
戦闘になる可能性も有るって事ですねえ」
「ほら! やっぱり危ないじゃないですか!?」
「可能性の話ではあるけど。
ラロカに、イファルと戦う程の兵力は無いよ。
かといって、上から抑えつける様なやり方はしたくない」
「ワガママだなーーー」
「とにかく。
向こうの外務役には話を通しとくから。
是非行ってみてほしいな」
ラオはそう言って、何とか場を取り繕おうとしたが、
シャオは未だ膨れた顔をしたままだった。
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