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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
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イセカイ篇 14 『君はいいヤツだ、と褒められて。』

本日投稿分の1話目です!



ことはの言葉を聞いて、

俺は少しだけ、

本当に少しだけだが、


“もう、歩くのやだ!!!”


と思ってしまった。


俺の思惑を知ってか知らずか、

ことはは、さっさと事務所を出て行ってしまった。

ドアも閉めないで。


なんで……、勝手に先に行くかな。


「待て待て待て!」


俺は慌てて後を追いかけた。


ことはは、立ち止まらず、

俺の方を振り返る事もしなかった。


「待って! 二月二日! ことはさん!?」


「聴こえてるよ」


「場所わかんないんじゃなかったかな!?」


「わかんないけどさ。

何もしないでいるよりはマシだろう?」


「えー!? ノープランだったんかい!?」


「何だよ。じゃあ、君が見つけてみなよ」


「逆ギレ!? 

でも、今夜中に一つ壊すんだって出てきたんだし、

何か目星くらいは……?」


「無いよ。

リロクが使い魔を放って来た辺りまでは、

良かったんだけどなぁ。

色んな事が巧く重なって、

尻尾が掴める筈だったんだ。

でも。

魔力を辿って、

出所を探知してやろうと思ったけど、

うまくいかなかったんだよ」


「えー……」


「何だよ」


この人(ことは)……、

直感で動いちゃうタイプ……。


「じゃ……、じゃあさ?一旦、アパートに戻って、

対策を建て直すってのはどうかな……?

それか、悠さんとこの、工房(ブティック)に先に行くってのは……?」


「……悪かったよ。不安にさせて」


ことはが、ようやく立ち止まった。


「歯痒いのさ。こうも制限をかけられていては、

何をするのにも(まま)ならない。

異世界では万能に近い力が有ったせいで、

余計に無力さを感じてしまうんだよ」


「万能だったんだ」


「それに、君の前で格好をつけたかったのかも知れない」


「へ?なんで?」


「だって、君は異世界から突然戻って来て、

不安だっただろう?

君は安心して良いんだって思って欲しかった」


「……なんだよ。母娘(ことは、スイ)揃って……、ええ子達や……」 


「同級生のよしみさ」


俺とことはは、暫くあてもなく歩いた。


ことはが煙草を吸い出し、

溜め息と一緒に煙を吐き出した。


「あー。思いっきり魔法使いたい」


危ない人の言葉にも聞こえる。


「そう云えば、

悠ちゃんを置いてきぼりにして来てしまったな」


「本当だよ」


「格好良く出て来てしまった手前、戻りづらいね。

今夜はもう()めにしようか」


とても残念そうに、ことはが言った。


「あのさ。二月二日(ことは)


「ん?なんだい?」


「あんま、無理しなくても大丈夫だからな?

俺は役に立たないし……。

向こうに戻りたいのは事実だけど、

焦り過ぎなくても、良いんだからな?」


「ふ。気を使ってくれているんだね」


「そんなでも無いけどな。

それにさ、工房の人達って、

転移する魔法が使えるんだよな?多分。

もう、それ使って帰っちゃダメなのかな?」


「僕も出来たらそれで帰りたいけど、

リロクをこの世界に、

のさばらせて置くわけにもいかないからね。

彼はこの世界にとって災いになる」


「そっか……」


「ナツメくん」


「何?」


「ありがとう。同級生と云うだけで、

僕は君の事をよく知らなかったけれど、

君はとてもいいヤツだ」


「急に」


「こういう事は、大体にして急に言うものだよ」


「わからん」


「それに。

魔法を思うように使えずに、

歯痒い思いをしてるのはリロクも一緒だから。

君の言う通り、焦り過ぎも良くないね」


「おう。お前が連絡くれるまではさ、

マジでどうしたら良いのか全然わかんなくて、

パニクッてたけど、今は何か、

希望も見えてきてる気もしてるぞ?」


「そういう考え方は僕は好きだ」


「急に」


「何を赤くなってるんだい?君はアレか?

ひょっとして、

女の子に褒められる事には慣れてないヤツか?」


「……見りゃわかるでしょうよ」


「君、

向こうでスイの事好きになってしまってないだろうね?」


「ぬぁ!? な……、なんで!?」


「君は女の子に免疫が無さそうだし、

一緒に居たら、きっとそうなってしまうだろうから」


「めっちゃ偏見!」


「……。変なこと本当にしてないだろうね?」


「してない!!」


「冗談だよ。

ところでさ。

大人になったスイはやっぱり美人だったかな?

あの娘は小さい時からすごく可愛かったから」


「それは……、まあ、そうだったよ……」


「やっぱり。

早く逢いたいな。

それから向こうに戻る前には、

髪の毛の色を元に戻しておかないといけない、

スイが見たら驚いてしまうかも知れない」


嬉しそうに、ことはがそう言っている。

大体、感情の起伏が無さそうに見えるので、

きっと本当に楽しみにしていて、

さぞかし嬉しいのだろう。


「お前とスイって、どうやって出逢ったんだ?」


「スイから聞いてない?」


「うん」


「彼女との出逢いは、

それはそれは運命的なものだと、

思えるものだったよ。

大体、僕が向こうに行ったのは十五の時だよ?

自分だって子供なのに、

スイが僕の前に現れて、

彼女を見た瞬間に、

あっという間に心を奪われて、

彼女と共に暮らして行きたいと思ったんだ」


「そんなに可愛かったんだ」 


「可愛かった。それに」


「それに?」


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」


「まだ疑ってんの!?」


「そういう意味じゃなくて。

幼い頃から彼女の事を見ていて、ずっと思ってたんだ。

彼女は、何か惹き付ける力のようなものが、

とても強い。

それもおそらく、

僕達(日本人)の事を。

親バカの僕の贔屓目を引いたとしても、

彼女には外見の魅力だけでは無い、

何か不思議なものが備わっていると僕は考えていた」


俺は、そう話すことはの、

言葉の意味はよく分からなかった。

でも、

スイと初めて出逢った時の事を思い返せば、

自分にも少しだけ思い当たる節が無い訳でもなかった。


◆◆


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