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リンカーネイトリンカーネイトリンカーネイト  作者: にがつのふつか
第四章 『二月二日と少年』
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イセカイ篇 13 『サンプリング。』



悠さん曰く、


悠さんは俺達(リク、ことは)の様な()()()()とは違い、

元々、異世界の住人だったらしい。


「つっても……、

子供の時に来たから、

こっちで過ごしてる時間の方が長いんだけど」


「言語の変換はしてるんですか?魔法で」


「変換魔法?使えないよ。日本語は自分で覚えた」


「ナツメくん。変換魔法なんて知っているんだね」


「ああ。あっちでスイにやってもらった」


「スイに?あの娘の魔法も上達してるんだね」


ことはは嬉しそうだ。


「言語の変換魔法って難しいのか?」


「日常で使う魔法と云うのは、

案外、攻撃魔法なんかよりも技術が要るものも多い」


「へえ」


「つーかちょっと待って。

君、リク君だよね?

ナツメくんって何?」


「あ。しまった」


「親戚っての、やっぱ嘘?」


「ううん。本当だよ」

 

「しまったって言ったじゃん……」


「僕と(リク)に血縁関係は無いれど、

それほど重要な問題でも無いんだ」


「変だと思ったんだよ。さらっと嘘つかれた」


「それより、悠ちゃん。

子供の時に転移して来たと言ったね?

一人で、では無いよね?

子供が、それも異世界の。

言葉も通じないのに、一人では生きて行けないだろう」


「……そうだよ。()()()()は、

まとめて、一緒にこの世界に送り込まれたんだ」


「偶然に転移した訳でも無いんだね」


「それは、ことは達も一緒だろ?」


「僕達は、

意思を持ってあちら側(異世界)に行った訳では無いからなぁ。

召喚されたのか、或いは、こちらから転送されたのか。

初めの転移に関しては、残念だけれど、僕は知らない」


「こっちに戻って来れたのは?」


「僕が異世界で最後に戦った、

リロクと云う魔法使いの魔法を受けてだね。

気づいたら僕は、こちらの世界に居た」


「リロク……」


「悠ちゃんは知ってる?」


「聞いた事はあるかも。

すっごい昔に居た、魔族の名前と一緒じゃない?」


「魔族か。

彼の存在の不可思議さからして、

それなら納得がいく。

多分、同一人物だね」


あんた(ことは)、そんなのと戦ってたの?」


「好きで戦ってた訳では無いんだけれどね。

それと悠ちゃん。

あたし達、と君は言ったけれど、

一緒に転移してきた他の人達はどうしてるんだい?」


「……わかんない。

施設を出てから、誰にも会ってないから」 


「施設?」


「……コレ、絶対教えちゃマズいんだけど、

嘘吐いても、どうせいずれ判るから……」


◆◆


異世界への転移。

ことはと、俺が今まさに探しているもの。


悠さんが言うには、

あっちの世界(異世界)では、

既に確立されている技術らしい。

とても秘密裏に、一部の人間だけがそれを知っている。


俺達が、あちらの世界で過ごした様に、

向こう側からも、

こちらの世界で暮らしている、

転移してきた人々が一定数存在している。


悠さんが子供の時に転移させられ、

こっちで過ごした施設と云うのは、

転移者達が設営したもので、

そこで悠さんは、

日本に関する知識を身につけたのだという。


「つっても、日本を侵略しに来た訳じゃないよ」


悠さんは否定する。


「あたし達がやってるのは、

移民の為のサンプリングなんだ」


「移民?」


「そう。向こうの世界から、こっち側に」


「そんな事を考える人達がいたんだね」


「……あたしはラロカって云う、

貧しくて小さい国で産まれたんだけど、

そういう恵まれない国の子供を対象に、

サンプリングを行う人材を募ってたんだ。

報酬も凄く多く貰えるし、誰もが皆、

我先に飛びついて行ったよ」


「募集をしていた連中と云うのは?」


「『工房(ブティック)』って名前」


「全然わからないな」


「そりゃそうだと思うよ。

とにかく、あたし達は工房に送り込まれて、

工房の施設で育って、日本で生活をしてる」


「そして、

サンプリングの業務をしながら、

何かと敵対もしている」


「……。理央と茉央の事でしょ?

わかんないんだよ。

ここ最近、工房の動きを探ってる奴がいる。

連絡が有ったんだ。

だから、あたしが工房の人間だってバレたら、

何か仕掛けて来るかも知れないって思って。

店の子達に、なんかあったらダメだって思って……」


魔障(魔法による被害)を防ごうと思ったんだね」


「ことはが、魔法使いなのはもう知ってたけど……。

もしかして、

その連中と戦ってたんじゃないかと思ってて……。

ことはには、

全部教えた方が良いんじゃないかと思って、

さっきの電話はそれで……」


「なるほどね。掛け直しても出なかったのは?」


「まだ悩んでたんだよ……。

今も、教えて本当に良かったのかどうか……」


「少なくとも、僕は悠ちゃんの敵では無いよ」


「ことはが戦ってた連中は、

工房(あたしたち)を狙ってる奴らなのかな?」


「リロクからすれば。

世界間を行き来する術が、

自分だけのものでは無かったとしたら、

面白くは無いのかも知れないね」


ことはそう言った。


「リロクもそろそろ、

このイタチごっこを終わらせるつもりらしい。

悠ちゃん。工房に僕達を紹介して貰えないかな?」


「……わかった。連絡してみるよ」


「ありがとう。ナツメくん。

それじゃ僕達は行こう」


「え?何処に?」


「さては君は僕の話をあまり聞いてないな?

装置を今夜中に一つ壊すと言っただろう?

僕達が今やるべき事は、

リロクの最も嫌がる事をしてやる事さ」


◆◆

本日投稿分の1話目です!

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